ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:君の奈落 制限時間:30分 読者:336 人 文字数:1968字 お気に入り:0人

グレーの夏色【ジョルブ】

 空は夏の水色で、雲なんてしらないという顔で広がっている。ぼくはカフェの目立たない席に座って、机の上にあるパラソルの影に涼んでいる。オレンジジュースとピザなんていう、子供っぽいと言われたら首を縦にふるしかないような注文をして、一人でランチを取っていた。さっさと食事を摂らないと、シエスタの時間になってしまうだろうか。でもあつあつのピザは舌を火傷しないように食べなきゃいけないし、でもチーズは早く食べないとうまい具合に伸びてくれないし、そこは難しいところだった。暑い日差しのなかであろうと食べたいものを口に入れたいし、最近フルーツを取っていないな、という単純な理由でソーダじゃなくてオレンジジュースを飲む。ぼくの最近の食事はそんなものだった。最低限の食事を気にして、健康と睡眠を気にしてみる。これは任意であって義務じゃない。義務で取り組まなきゃいけないことは、これよりほかにたくさんある。
 ピザの三枚目を取ろうとすると、いつのまにブチャラティが座っていた。隣に白いスーツの彼が見えて、「あなたも何か頼みますか」と尋ねるけれど、もう食べてきたのだろうか、いい、とだけそっけない返事が返ってくる。彼はぼくがピザを食べ、オレンジジュースのストローを齧りながら飲む姿を淡々と見つめていた。その視線が気になったけれど、べつに気にとめるほどのことではなかった。

「お昼、何食べたんですか」
「あそこの、昨日行ったとこのタコサラダ」
「もっとちゃんと食べてくださいよ、ぼくだって食べてるのに」

 口を尖らせると、ブチャラティはおかしそうに笑った。真面目なことを言ったつもりなのに、子供だなあみたいな顔をされるのは気に食わなくて、なんなんですか、と彼のほっぺたをつねる。ブチャラティは笑ったままだ。お皿にはまだ一枚ピザが残っている。皿から目を離してもう一度彼をみて、ふとブチャラティのスーツにピザのトマトソースが付いてしまったことに気づく。
「すみません、タオル……あるかな」
 ぼくはポケットからハンカチを取り出して、ブチャラティの肩口に付いてしまったトマトソースを拭く。スーツの汚れは上手くとれて、そこにソースなんてかかったことはないような白に戻っていた。

 ぼくは残りのピザを食べようとする。ブチャラティがあまり食べていないことを思い出して、口元に持って行くけれど、黙って首を振られてしまう。ぼくは本当に心配なのに。背筋だってびくりと震えている。ただ、日差しが暑いから日陰にいるにしても、自分の周りだけ余計涼しい気がしてきた。オレンジジュースで身体が冷えたのかな。ピザを食べながら、空いた手で首やおでこに触れる。そういうわけでもない。今何度ですか、と聞こうとして、ぼくはブチャラティの胸辺り一面に広がる赤に気付いた。
赤?


「……あ、れ、ブチャラティ?」
「どうしたんだ。そんな、怖い顔して」
「ブチャラティ、その傷、なんですか」

 周りの音が何も聞こえなくなる。人がいることがわかるのに、会話も街の雑音も死んでしまっている。ブチャラティの胸に触ると、トマトソースよりも暗くてどろどろとした赤いそれが指を濡らしていく。音は聞こえないのに、匂いが鼻に刺しこんでいくのがわかる。血液がぼくの嗅覚を埋め尽くしていた。指がブチャラティの肉と骨を通り抜けて、やぶれた心臓の布に触れていた。生の感覚が指を通して身体全体に電気みたいにぼくを襲って、叫び出しそうになる。喉が潰れてしまったように何も発せない。
 ブチャラティはナイフのような鋭いひとみをぼくに向けている。でもそのナイフは丸みを帯びていて、きっとぼくを刺すことなんかできない。ぼくを責めようとしているのか、ちがう、ぼくが。彼に。

「俺はな」
「ぁ……っ……」
「お前を殺すことは出来ないんだ」
「……」

 鋭かったひとみが白い球になり、ブチャラティは目を閉じた。そのひとみに光が宿っているのか、恨みや憎しみや悲しみが宿っているのか、ぼくにはもうわからない。

「死んじまったからなあ」
「……ぁ、お、ぼくは、なにも……してない」
「ああ、ジョルノは、なにもしてないよ、お前は悪くないよ」


 嘘だ。ぼくはブチャラティの身体の中から手を抜く。ぼくが投げかけて欲しいと一度でも思ってしまったことを吐き出す、ブチャラティの形をした肉の塊を、この夢から抜け出すために。空の色は灰色になって死んでいた。周りの人も、街も、森も、草も花も死んでいる。走って走って夢から覚める崖へつく。そうして飛び込んだ。黒い黒い墨の奥に放り出される身体を想像しながら目を瞑り、あと現実でもう少し眠って、すべて忘れて起きてしまえればいいのに、そうしてくれと思いながら意識を飛ばして行った。







同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:種 一@はじめ_TRPG ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:優秀な人 制限時間:30分 読者:54 人 文字数:928字 お気に入り:0人
スマホから腐向けになった。DIOテレあの男は優秀という言葉が似合う。スタンド能力として人の心が読めるせいか行動の先読みが得意だ。こと、日常の積み重ねであればなん 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:深海文音@二日目東X11a ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:憧れのにわか雨 制限時間:30分 読者:346 人 文字数:835字 お気に入り:0人
僕には憧れのシチュエーションがある。突然の雨に、慌てて鞄で頭を押さえて店屋の軒先に逃げこむと、そこには同じように雨に濡れた制服姿の女の子がいる。彼女は不安げに空 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:深海文音@二日目東X11a ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:ラストは戦争 制限時間:30分 読者:454 人 文字数:954字 お気に入り:0人
「頼む、匿ってくれ!」ドアスコープから覗いた彼は、焦っているようでピンポンピンポンピンポン……と何度もチャイムを鳴らす。さすがに鬱陶しくなって玄関の扉を開けると 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:シロ ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:たった一つの海風 制限時間:30分 読者:341 人 文字数:888字 お気に入り:1人
懐かしさを追うには、少々失ったものが多すぎた。それでも繰り返しこの場に来てしまう所以は何だろうか。きっと、忘れたくないのだ。逃げるように去ったくせに、あんなこと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チャナ ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:名前も知らない孤独 制限時間:30分 読者:561 人 文字数:1818字 お気に入り:0人
【仗露】街中ですれ違うひとたちは、ぼくのことを知っているひともいれば、知らないひともいる。目をきらきらさせて、ぼくにサインを求めてくる子どもやぼくの世間的に変わ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リラ ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:大好きな吐息 制限時間:30分 読者:455 人 文字数:977字 お気に入り:0人
ずっとずっと待っていた。眠っているきみのそばに座り込んで、一ヶ月。今まで生きてきた年月に比べたら、一ヶ月なんて短い時間かもしれない。けれど、きみの何事にも動じな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リラ ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:あいつの小説 制限時間:30分 読者:443 人 文字数:991字 お気に入り:1人
夏の日差しは攻撃的。珍しく海に行こうなんて言い出したジョルノが、熱い砂浜で裸足になることもできずに、傘の下で本を開いている。まるで吸血鬼。なんて、本人には言わな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:せつない海風 制限時間:30分 読者:633 人 文字数:1063字 お気に入り:0人
海からの風が、髪をかき混ぜる。ぼくは、岬の、とある場所に来ていた。ぼくの他には誰もいない。ここは、彼が安らぐ場所だ。冷たい石の下で。ぼくはチームの中で一番彼と長 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:愛、それは階段 制限時間:30分 読者:395 人 文字数:843字 お気に入り:0人
夢の淵に手を掛けたあの日。めくるめくアクション映画のような一週間。それから共にあった10年間。ぼくたちは、ゆっくりと二人分の愛を作り続けたね。今も覚えている。初 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:当たり前の暴走 制限時間:30分 読者:440 人 文字数:769字 お気に入り:0人
どうしようもないほどの夏だった。どうしようもないほどキラキラと輝いて。シニョリーナは露出も激しく街を歩き回り、男共はひと夏の恋をと、耳触りの良い言葉を所構わず吐 〈続きを読む〉

の即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者: ジャンル:イナズマイレブンGO お題:僕が愛したぐりぐり 制限時間:30分 読者:68 人 文字数:1545字 お気に入り:0人
剣城は真面目だ。俺が宿題やるの忘れてきたから見せて!って言っても見せないし、自分の責任だろって怒るし、ねーお願い!ってしつこく言ったら折れてくれるかな、って思 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: ジャンル:イナズマイレブンGO お題:危ない血液 制限時間:30分 読者:84 人 文字数:1540字 お気に入り:0人
この世は地獄の形をしている。それはどうやったってきっと変えられないことで、こんな自分が考えていることだから、変化することがないという話なのだけど。 寝不足で虚 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: ジャンル:イナズマイレブンGO お題:とびだせ嫉妬 制限時間:30分 読者:120 人 文字数:1597字 お気に入り:0人
「剣城!」 名前を呼んで、そうしたら彼が力強く頷いて、力を纏ったボールがそらを舞う。せかいでいちばんかっこいいシュートを決めてくれる。それが雷門中サッカー部エー 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:夜とぐりぐり 制限時間:15分 読者:279 人 文字数:832字 お気に入り:0人
ブチャラティはあまりカーテンを閉めない。寝るときもそうだし、そういうことをする時も、雨の日も。窓は閉めていてもそれだけはいつも一緒だった。ぼくはひとりで寝っ転 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:君の奈落 制限時間:30分 読者:336 人 文字数:1968字 お気に入り:0人
空は夏の水色で、雲なんてしらないという顔で広がっている。ぼくはカフェの目立たない席に座って、机の上にあるパラソルの影に涼んでいる。オレンジジュースとピザなん 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:理想的な男 制限時間:30分 読者:330 人 文字数:1729字 お気に入り:0人
綺麗な言葉で彼のことを例えるのは、ありきたりだと思うし、さらに言えばずるいと思う。ぼくの前でパンと野菜の入った紙袋を危うい動作で持ち運ぶ彼を「きっちりとした人 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:部屋とYシャツと信仰 制限時間:30分 読者:389 人 文字数:1858字 お気に入り:0人
「セ○クスの後にこういうの着せるの、変態みたいじゃないですか?」「変態でもなんでもいいさ。それしかなかったんだから」 ぼくがからかうように言うと、ブチャラティは 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:左の絶望 制限時間:30分 読者:423 人 文字数:1589字 お気に入り:0人
身体がへんだと気付いた時、どんな気持ちでしたか。おれの隣で寝そべりながら、藍色の瞳がこちらを伺いながら聞いてきた。へんだと気付いた時。身体が死んだまま動いてい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:10の脱毛 制限時間:30分 読者:494 人 文字数:1646字 お気に入り:0人
「最近、なんだかよく髪の毛が抜けるんだ……」「……年ですか?」「馬鹿言え、オレはまだ20だぜ」 昼食後のコーヒーを飲みながらブチャラティがそんなことを言った。昼 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: ジャンル:デュラララ!! お題:可愛い川 制限時間:30分 読者:310 人 文字数:2403字 お気に入り:0人
目の前にあるのは三途の川なのかなあ。俺は湿った草むらにしゃがみ込む。 すこしばかり記憶がない。どうしてここにいるんだろう、いったい俺は直前まで何をしていたんだ 〈続きを読む〉