ジャンル:HOSPITAL.6人の医師 お題:僕の墓 制限時間:30分 読者:288 人 文字数:1097字 お気に入り:0人

Life and Wish




術式が終わった後の休憩時間の合間、そういう暇な時、エルハルトはたまに窓からぼんやりと空を眺めてることがある。
眼の筋肉の疲れを解す為だ、とか何とか前に言ってたのを聞いてたけど、それだけじゃないんだってことはアタシにもすぐにわかった。
何かを探してるみたいな深紅の瞳に、胸がざわついたあの日から。

アタシ達の上に広がる蒼穹、天国はそれよりも遥か先にあるんだって、よくそう言われる。アタシはそんなもん信じちゃいないけど、エルハルトはその場所に夢を見てるみたいにいつも空を見てる。
……正しくは、天国にいるローズと、アルベールに。
会いたいんだろうな、と思う。
このままにしといたらそのうち、コイツ空に吸い込まれて消えちまうんじゃないか、とか。そんなあり得ないことを考えちまうアタシ自身が恐ろしかった。
アイツの意識をどうにかこっちに引き戻したくて、アタシはよく空を見てるエルハルトにちょっかいをかけた。背後から背中を叩いたり、肩つかんだり、大声で名前を呼んだりして。周りにいる人間からしたら、業務妨害してるようにしか見えないんだろう。
……けど、仕方ないだろ?
アタシは、アイツにそんなこと考えてて欲しくなんか、ないんだ。

『……俺が死んだら、サルトル教授とロザリアの側に埋葬して欲しい』
いつだったかそんなことを真面目な顔で言われて、その時はどんな反応すりゃいいのかわからなくなった。
笑い飛ばせばいいのか、泣けばいいのか、怒鳴ればいいのか、泣けばいいのか。
『何でアタシにそんなこと言うんだよ』
『お前にしか、頼めないんだ』
『死んだらってな、…お前が死ぬ時、アタシだって生きてるかわかんねえだろ』
エルハルトは何も言わなかった。真っ白くなっていく頭で、どうにか言葉を返した。
『……まあ、覚えとくぐらいならいいぜ、別に』
『…ありがとう、マリア』
その、感謝の一言と一緒に向けられたアイツの微笑みが信じられないくらい嬉しそうで、アタシはそれ以上何も言えなかった。

家族と一緒の墓に入りたいなんて、珍しくも、大して大きくもない願いだ。アタシにだってそれはわかってる。
ただアタシは、耐えられないくらいに悲しくて、…悔しかったんだ。あいつがもう、ずっとずっと先にある死ぬ未来のことまで考えてるんだっていう、その事実が。
今、アイツの胸に空いてる穴はどうやったって埋めてやれないんだって、そう突きつけらたような気がして。
アイツに、生きてるの楽しいって思うか、って聞けたらいいんだろうけど、…アタシには無理だ。
だって、それを否定されたら、……それこそ、どうすればいいのかわかんねぇよ。

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