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透明人間の見える人



びぃ、と試合終了の合図が聞こえてはっと目が覚めた。それで、夢を見ていたのだという事に気がついてのろのろと黒子は顔をあげた。
「起きたのか」
ふわりと珈琲の香りを携えた花宮が目の前の椅子を引いて座る。にんまりとした彼の笑みに目が合わせづらくなって目を伏せた。
「また、高校の時の夢を見ました」
淡々とそう告げると、彼は面白そうに眉を上げて「そうか」と相槌をうった。ことりと黒子の目の前に甘い珈琲が置かれ、驚いて彼の方を見ると、彼はマグカップに口をつけている。
かつてはその笑みで人を傷つけてきた花宮だと言うのに、今、黒子に向ける笑みは優しさを内包しているように見えた。
それが少しだけ惨めだった。
バスケットボール。黒子の生き甲斐を捨ててから、黒子の特技はただの厄介な性質に成り下がってしまったのだ。
人に気づかれない、というのはそこに居ないに等しい。気づいてくれる人なんていない、かつての友は忙しくしているようで連絡もろくに取れない。まるで自分自身を否定されたようだった。そんな時に声を掛けられ、野良猫のように花宮に拾われた。黒子が、唯一彼を見つけてくれた花宮に縋るのは当然だった。
「花宮さんは、どうして僕をこうも気にかけるんですか」
いけない、ぐるぐると落ち込んだ思考が厄介な言葉を吐く。女々しい人だ、面倒臭い、脳内で黒子自身が黒子を否定する。
「ふは、イイコちゃんが転落していく様は見ていて楽しいんだよ」
だから拾っただけだ。そう吐き出された彼の悪意は、それでも甘いものに見えて黒子は顔を顰めた。調子が狂う。彼は悪人なのに、こんなにも善人なのだ。鬱々とした黒子の弱い所につけこんで、何かをするのかもしれない。けれど、もうそれで良い気がした。
悪人を、好きになってしまった。
向かい合うだけで心が跳ねる。彼の一言で感情を荒波が攫ってしまうのだ。
いけない、黒子は小さく首を振った。わかっているのだ、これが依存じみた感情だという事は。
それでも、……それでも。

「……何か言ったか?」
「いいえ、何も」
飽きるまでは目をかけて。聞き逃されてしまった願いが部屋の天井を漂っていた。

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