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またとない機会 ※未完

夏の太陽を照り返す、旧館へ続く道。
手元の書類に気をとられていた男が、はっと辺りを見回す。
やけに、周りから声が飛んでくる声が荒々しいことに"やっと"気がついたのだ。
「おぉい!そこにいると危ないぞ!!」
「何やってんだ、早くどけ!」
鼓膜を震わせる程の大声が耳を突き抜ける。と、ほぼ同時だった。
頭の上に、生ぬるい液体が盛大に降ってくる。
「な…………………………なん…だ?」
一体何が起きたのか事態がよく飲み込めず、彼は、書類を掲げた格好のままその場に立ち尽くしてしまう。
手元の書類なんて、あっという間に流されてしまったというのに。

「なにやってんだバカ!」
「これは…なんだ?」
「昨日の雨水だよ。昨日から旧館の排水工事してんだよ。ってか、さっきから何度もあいつらが注意してたろ?」
屋根上のスタッフ達を指しながら、やれやれとやってきたのは、この旧館をベースにするマリアだった。
近くに落ちていた、濡れて解読不明になった紙屑を指でつまんで持ち上げてはみて……ダメだこりゃと、地面に捨てる。
「書類、ちゃんと再発行してもらえよな」
「あ、ああ…」

黒髪の先から、滴がしたたる様をを見て、マリアが吹き出した。
「ああもう仕方ねぇ奴だな、とりあえずこいつを使えよ」
彼女が差し出してきたハンカチで、顔をぬぐう。
それは、絢爛と咲き誇る紅色のサザンカと、その力強い枝から伸びた碧色の瑞々しい葉が染め抜かれていた。
エキゾチックだと、なんとはなしに彼は感想をいだいていた。
「かわいいハンカチだな」
「こ、これは、トモエが日本のお土産だって、お揃いで使おうってくれたモンだよ……
どうせアタシにこんな可愛いの似合わないって言いたいんだろー!」
「いや……そんなことはない」
「どうせお世辞だろ?」
「そうじゃない。俺は、花の名前は全く知らないが、お前によく似合っていると思う」

15分

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