ジャンル:黒子のバスケ お題:思い出の孤独 制限時間:30分 読者:517 人 文字数:883字 お気に入り:0人

かくれんぼは始まらない/花黒


「貴方はいつも僕を見つけますね」
見失ったりしないんですか、そう黒子が目の前の男に尋ねた。
行き慣れた静かな喫茶店、店員に驚かれながら案内された窓際のボックス席。待ち合わせていた男は黒子のいるテーブルに迷いなく座ってすぐの事だ。
「いつも同じ席に案内するだろ、あの店員」
「それは、そうなんですけどね。街中なんかでも、鷲の目や鷹の目を持っていないのに僕を見つけられるのが不思議で」
男……花宮真が愉しそうに笑った。提供されたばかりの珈琲を一口啜って、「アンタはわかりやすいんだよ、慣れれば」と言う。理解出来ずに首を傾げた黒子にわざとらしい溜息をついて花宮は言葉を続けた。
「どんだけ近くにいると思ってんだ、アンタがどこにいるかなんて癖や好みが分かればすぐに見つかる」
「でも、火神くんや他の部活の皆だって」
「同じだって言うのか?」
……恋人だから、と黒子に言い聞かせている事はすぐに理解出来た。そして、癖も好みもとっくに筒抜けだということも。
それは、そうだろうなと黒子も思い直す。本の趣味、不機嫌な時の仕草や照れた時の薄らとした耳の火照り。苦味しかないチョコレートが好きな癖に甘いものだって好きなこと。黒子だって花宮と共にいて分かったことが山のようにあるのだ。確かに見つけられても仕方が無い、と黒子は思い直す。
だから、少し不服げに文句を言った。
「一人の時間が無くなってしまいました」
ふは、と特徴的に彼は笑った。にんまりと上がる口角は楽しいよりも面白いものを見つけた時の仕草だ。
「不都合でもあるのか?」
無いだろう、とわかったように彼は尋ねた。しかし、不都合は当然ある。あるに決まってる。羞恥やらなんやらで視線をそらした。拗ねたように見えるのだろう、ますます面白そうな物をみるように花宮の視線が黒子を貫いた。
「一人で居れなくなってしまうじゃないですか、責任を取りやがりください」
彼が目を丸くした。本当に驚いたようで暫くきょとりとした表情を隠せないでいる。あぁ、こうしてみると可愛い人だ。
何泊か置いて、彼は「安上がりな奴だ」と呆れ顔でゆるりと笑った。

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