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あんこは・・・うまい。

「うーん、」

歌仙兼定は、先ほどほつれを直したばかりの真っ白だったはずの鶴丸の衣装を見て、どうしたものかと困り果てていた。

少しお茶を飲もうかと、その部屋を離れている間に、汚れやほつれ、きれいにしたはずだった真っ白なそれが、なぜだか、
茶色の何かで汚れていた。

が、誰もいないし、


「・・・あぁ、僕の計算が台無しだ・・・」

せっかくいろいろと気をまわして、普段やんちゃばかりをする彼だが、彼なりに努力をしているとねぎらうつもりだったのに、
これでは僕がやらかしたも同然じゃないか。

誰なんだこんなことをしたやつは。

とにかく固まっていても仕方ないと、慎重に持っていた湯呑を少し離れたところにおいてそこへと座り、机の上に置いてあったその衣装の
汚れたところを見る。

「・・・・あんこか?」

甘い匂いがし、近づいてみるとどうやらあんこがついているらしいことがわかった。
茶色だと見えていたそれは、どうやらつぶあんだったらしい。

それにしても誰がこんなこと、と普段お菓子をよく燭台切光忠に作ってもらってはいろんなところで食べているのを見かける短刀を
思い出す。

が、さすがにそれだけで彼らのせいだとするのは早すぎるだろう。
それに、そういう子たちは基本黙っていられなくなって誰かしらから謝ったほうがいいといわれて、素直に出てきてくれるのだ。
間違ってもこんな黙っていなくなる、ということはないだろう。
粟田口は、品がいいから一期一振に言われ、きちんと座って食べろと言われているし、ほかの短刀も多少やんちゃなところはあるが、
にしてもこんな僕がお茶を汲みにいった少しの間にここにきて、すぐいなくなるなんてことは逆にないだろう。

頭を悩ませため息をつきながらも、早急にそのあんこをこすらないように丁寧に手拭いでぬぐうが、やはり少ししみになってしまい
そうなそれに、頭を抱えながら立ち上がりそれをもって早急に水洗いしよう、と
心に決め障子をあけて外に出ると

何やら顔をしかめ、いつにもましてぶつぶつと何かをつぶやきながら思いふけった様子の俱利伽羅に出くわした。


「・・・っ・・・!!?」

廊下を行ったり来たりしていた倶利伽羅は僕に気づかなかったようで、ぶつかりそうになって慌てて顔を上げたと思ったら僕の手元と
僕の顔を見てさらにびくっと驚いた顔をした。

と思ったら急にうつむいて、うろたえた様子を見せ始め、倶利伽羅らしくもない態度に頭をひねる。

この様子は・・・・。

どうしても今の出来事に絡めて考えてしまう自分に、まずは倶利伽羅に確認だ、と思い

「もしかして、この衣装について何か心当たりがあるのか?」

と尋ねる。

するとまたびくっと反応した倶利伽羅が珍しくたどたどしく顔を上げ、こちらを申し訳なさそうにしながら見た。
とはいっても、この衣装を気にしているというよりは、いつもの僕の怒号が落ちないかどうか、気にしている様子だ。
まぁ、今回のことは、僕がみんなが来るかもしれない部屋で縫物をして、それを放ったらかしにして少しでも離れてしまったことにも
原因があるからそこまで怒るつもりはないんだけどね。
実際こうやって話そうかどうかちゃんと迷ってくれていたみたいだし、実際うちの連中が何をしでかすかわからない連中だとわかってい
ながらもこんなものを放置しておいた僕も僕だ、相手が相手なら、いつも鶴丸に驚かされているからとまたとんでもない仕返しもして
いたことだろう。

「今回のことは僕も悪い。

鶴丸には、ちゃんときれいにして返しておくよ」


まぁ不注意は誰にでもあることだ、と詳しく聞かずとも状況を把握した僕がそういうと倶利伽羅は一言だけ、
悪い、
と言って僕から背を向けた。

「・・それにしても、君があんこだなんて珍しいね?

この様子だとおはぎ・・・かな?」

光忠くんが作ってくれそうなあんこのものと言ったら・・・落ちるぐらいだから、おはぎだろうけど、それにしても不注意は不注意でも
倶利伽羅がそんな不注意をするほど夢中になってそれを食べていたというのも不思議な話だ、と少しだけ気になって聞くと

「・・・・・ずんだだけじゃない、・・・おはぎも好きになった」

そうつぶやいた倶利伽羅のうっすらとした笑みに、


僕もつい汚れた衣装のことも忘れそうになりながら笑ってしまったのだった。

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