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マスカレイドには程遠い ※未完


「大和くんはいいよね」
「……、はあ……?」
 何故、自分は今、この男の不機嫌を正面から食らわねばならないのだろう。二階堂大和は向かい合って座る十龍之介の仏頂面を細い目で見ながら曖昧な返事をした。ほんのりと龍之介の頬が赤いのは、彼が手にしているジョッキのせいだろうと考えながら、大和も自身が持つグラスに視線を落とした。
「俺だって、MATSURIやりたかった」
 ずず、と鼻をすする音がする。それを聞いた瞬間、彼と目を合わせてはいけないと本能で察した大和はグラスの中身をくいと飲んだ。黄金色の液体が喉を伝わり、炭酸が食道を刺激する感覚――などと、無駄に自分の内に意識を向けてみるものの、正面に座る相手の視線からは逃れられないと、痛感した。何でこうなる、と大和が視線を上げれば、目の端にわずかな雫を浮かべたTRIGGERの十龍之介がいた。

 こうなるに至ったのは、龍之介の軽い誘いから、だった。
「ねえ大和くん、飲みに行こうよ」
「ああ、いいっすよ」
 龍之介と何度か飲んだことはあったが、お互いそれなりに自制してほどほどに酒を楽しんで解散する、というのが普段の二人の飲みだった。何なら、二人きりで飲むということはあまりなくて、間に八乙女楽や和泉三月あたりが入ってわいわいと話をして、というのがほとんどだった。というより、二人で飲んだことなどあっただろうか、というのが大和の印象だった。
 いざ二人で顔を合わせて飲むと、大した会話はできなかった。一応お互いユニットの最年長という共通項はあったので、年下のメンバーについてや互いのユニットのメンバー同士の話――主は、七瀬陸と九条天の話だったが――をしていたような気がする。それから少しずつ大和も龍之介も飲むペースが早くなっていって、そうしたら話も自然と弾むようになっていた。つい先ほどまでしていたバラエティ番組の話で、司会者のあの振りは厳しかっただとか、同じゲストのあのタレントの私服が豪華だっただとか、あの企画はもうやりたくないだとか、そんな、至って他愛のない話ばかりをしていた。
 そこからどうしてか、以前IDOLiSH7とTRIGGERがコラボして組んだユニットの話になり、そして最初の龍之介の台詞へと繋がるのだった。

「まあ……確かに十さんって祭りっぽいっすよね」
 視線に耐え切れなかった大和が、諦めたように龍之介に言う。祭りっぽいって何だよ、と自分の言葉にささやかなツッコミを心の中でいれたタイミングで、龍之介が「そうだよね?!」と謎の同意をしてきた。意味がわからない、と大和が思っている間にも龍之介は顔を覆って大きなため息を吐き出した。
「俺さ……エロだとかセクシーだとかワイルドだとか言われてるけどさ、そんなことなくてさ……正直、壮五君と環君と一緒に立つの場違いだなって思ってた……」
「そうなんすか? 似合ってましたけど、あの仮面」
 悪気のない言葉だった。しかし、その大和の発言が、龍之介にとっては地雷だったらしく、「それだよっ!!」と裏返った悲鳴のような声を上げさせてしまったのだ。そこまで関わったことがないとはいえ、龍之介がそんな声を上げるのは大和の想定外で、思わず身を仰け反るようにして引いてしまった。
「どう考えても俺、ああいうの似合わないじゃん?! ジャケット写真、確かに格好よく撮ってもらったけど本当につらかった! ああいうのは楽がやった方が似合うと思うんだよ!!」
「ぶっ」
 本人としては至って必死なのだろうけれど、龍之介の叫びに大和は思わず吹き出してしまった。思わぬ風評被害を食らった楽がどこかでくしゃみをしているんじゃないか、なんて考えると余計に笑えてしまったのだが、それがさらに龍之介の感情を昂らせた。
「ほら! 大和くんだってバカにする!」
「いやいや……バカにしてないっすよ。ただ、八乙女がやったらって考えたら面白くて」
 

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