ジャンル: お題:凛とした成熟 必須要素: 制限時間:30分 読者:300 人 文字数:2486字 お気に入り:0人

1時間使える雨七ずるいと思う


「来るなっ……!」
「それは出来ない相談っすよォ……だって、約束したっすもん……」

ひたひたと、嫌な足音が響く。
だらんと垂れた黒髪が、恐怖心を掻き立てた。

「どこに行こうと、私が先輩を見つけるって!」

モモが首を僅かに動かす。
はらりと動いた髪の隙間に覗いた瞳は、狂気に染まりきっていた。
全身凍えそうな感覚。
逃げねばいけないというのに、体が凍りついたように、指先ひとつ動いてはくれなかった。

「モモ……どうして……こんなことに……」

嗚呼。嗚呼。
こんなことで、終わりを迎えてしまうのか。
まだ、やってないことも、たくさんあったのに。
してあげたいことも、行きたいところも、いっぱい、いっぱい、残っているのに。

「ずっと、一緒っす……もう、離れないっすよォ!」

モモが包丁を振り上げた。
その表情は、狂気に満ちて、そして、そして――――

「私っ……は! 先輩が! 先輩とォ!!」

――――悲しみに、包まれていた。

(何を……やっているんだ私はっ……!)

モモを狂わせたのは、怪しい宗教かもしれない。
でも、その宗教に追い込んだのは、私なんじゃあないのか!?
いや、そうじゃないとしても、こんなことになってしまうまで、気付いてやることが出来なかった。

(私は……モモを、愛し抜くんじゃなかったのか……!?)

SOSのメッセージを、僅かなシグナルを、ずっと見逃し続けてきた。
不安を、解消してあげることができなかった。
それは全部、私のせい。

(逃げられない、だって……?)

モモじゃない。悪いのは――全部、私だ。

(私は、阿呆か……逃げて、逃げて、逃げ続けて、この結果を招いたのだろうッ)

本当は、ずっと気が付いていた。
自分の気持ちと、モモの気持ちに。
けれども、それはモモも同じで。

だから、ソレに甘え続けた。
愛の言葉も、形に残るような証も、何一つ与えずに。
モモが与えてくれるものに、ただただ甘え続けていた。

(私はッ……いつまで卑怯者でいるつもりだッ……!)

卑怯者だから、自分からは動けなかった。
卑怯者だから、モモの気持ちに甘え続けた。
モモはきっと、こんな卑怯者からの愛を、ずっと待っていたと言うのに。

(モモは、変わった。変わったんだッ)

悲しみと狂気で顔面を歪め、震える手で包丁を振り上げ、それでもまだ振り下ろせない。
そんなモモは――誰の目から見ても変わった。
『おしゃれになった』というような、外面だけの話じゃない。
『おしゃれをするようになった』という、中身の話だ。

もう、モモは、何も諦めていない。
感情をぶつけ、例え気付かれなくっても、例え振り向かれなくても、真正面からぶつかる優希を身につけた。
そして――――

(現にモモは、こんなに混乱しているのに、私を見つけ出したじゃないか――――っ!)

今度は、自分から探し出すと、言えるほどになったというのに。

(なのにそんな少女を置いて、一人だけ無様に背を向け逃げるつもりか……!?)

否。否。否ッ!
確かに私は卑怯者だ。ずっとそうして全てから目を背けてきた。
だが、今は!

(私がモモを、止めなくてどうするッ!)

足を負傷し、逃げられない。
卑怯者に、なりようがないのだ。
今なら、きっと。
染み付いた卑怯者の心を振り切って、一歩を踏み出せるはずだ。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

吼える。己を鼓舞するため。
吼える。相手の動きを止めるため。
吼える。愛する者を、狂気の世界から救い出すため。

「モモ、私は、ずっと一緒だ!」

タックル。そして、激しい転倒。
まず包丁を遠くて薙ぎ払う。
滑りゆく包丁を追って、モモが駆け出した。
この足では、追いつけない。立ち上がるのにも激痛を伴う。

「こんなことをしなくても、ずうっと、ずうっと、私は一緒に居てやる!」

それでも立ち上がる。激痛を抑えて。きっとモモの心は、これよりもっと痛いはずだから。
だから真っ直ぐ手を伸ばす。あの日、あの教室で、モモが私にしてくれたように、その手を取るべく。

「そんなのっ……助かりたくて言ってるだけかもしれないじゃないっすか……!
 私はっ……私はもう、先輩しか居ないんっすよ……二度と、離れるわけにはっ!」

掴まれた手を振りほどき、更に走ろうとして、モモの体が大きくぐらつく。
入り口付近に仕掛けてあった、ワイヤートラップだ。
それでも諦めずモモが包丁へ手を伸ばす。
痛みをこらえ、包丁を道路の向こうへ追いやった。

「諦めたくないんっす! 例え今怖がられてもいい! ずっと、ずっと一緒にいられるなら!」

それでも、這ってでも包丁を拾いにいこうとするモモに、必至で組み付いた。

「もう離すもんか。モモ、お前は変わった。変わってくれた。
 だから今度は私の番だ。私が、お前に言う番なんだ!」

諦めずに、組み付かれたままモモが這って道路に出る。
暴れられる度傷が痛むが、絶対に離さない。

「私は、君が欲しいッ! あの日、見つけることが出来なかったけど!
 でも、今度は! 今度こそは! 何があっても、私がお前を見つけてみせる!」

その言葉に、モモの力が、少しだけ緩んだような気がした。

「うう……ずるいっすよお……もう、手遅れなのに……」
「手遅れなもんか」

そう言って、優しく頭を撫でた。

「言っただろ。どうなっても見つけるって。
 だから、ちょっとモモが見失ってた自分ってものを、今、見つけてあげただけだ」

少し、伝わりにくいかな、なんて思って。
嫌な振動を、地面に感じた。

「あ――――――」

モモも、オカルトが強くなっている。そして想いも強くなっている。
『加治木ゆみは自分のモノ』と思える程度に。
そして、モモの認識されない能力は、自分の持っているモノにも波及する。

「モモ……」

即ち、運転手から、二人の姿は――

「それでも――お前を離すもんか」

突き飛ばそうとするその体を、ぎゅっt

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