ジャンル:咲-Saki- お題:ゆるふわ愛されおっさん 必須要素:干支 制限時間:2時間 読者:317 人 文字数:2355字 お気に入り:0人

出たなクソお題!

「純くんさぁ」

 その言葉を発した国広一自身も驚くほどに、「あきれた」感が強い声色だった。
「何だよ」と振り向く井上純を、まじまじと彼女は観察する。

 まず、体勢。
使用人待合室のソファにごろりと身を横たえ、手すりに頭を預けて全身でリラックスを体現しているような姿。
国広はこんな体勢を頻繁にしてみせる動物を知っていた。トドだ。
 次に、服装。
メイド服である。龍門渕家に仕える身である彼女らは、自ずと私服よりこの給仕服を着ることが多くなる。
黒が基調のシンプルなものに、ところどころ誂えた白いフリルが映える上等な服。
しかしながら、いま井上が着ているものときたら、である。
どれだけの間ごろごろと転がっていたのか、上等なフリルはそこかしこに折り目が付いてしまっていた。
黒の布地も、よく見てみれば染みがぽつぽつと存在していて。ソファの傍のゴミ箱に乱雑に放り込まれていたハンバーガーの包み紙が、染みの正体が自身であることを声高に主張していた。
 そして、こんな彼女が何をしているのか。
テレビだ。昼下がり、窓の外からさんさんと太陽が健康的な光を注ぐ中で、ごろりと寝転がってテレビを見ていた。

 ――うん。純くん、君さぁ。

「おっさんじゃん!」
「はぁ!?」


   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「おっさんだよ! もう完全におっさんだよ!」
「わかった、わかったって国広くん……いや分かってねぇけどさ」
「スカートで胡坐かかない!」
「お、おうっ」

 ぷんすこと怒る国広を前に、井上は辟易していた。
「誰がおっさんだ、こちとら花咲く女子高生だぞ」という渾身の反論は、

「女子高生はおやすみの日にN×Kの将棋番組なんて見ないよ!」

 と、ばっさり切り捨てられた。
将棋好きな女子高生はどうなるんだよ――そんなもやもやを胸の内に抱えながらも、井上は国広の熱弁を話半分に聴く。

「純くんが男っぽいのはまぁいいよ」
「だからオレは女だって」
「行動が! 一挙手一投足が男っぽいの!! ……いや、それはいいんだよ。純くんの良いとこだもんね、男っぽいの」
「国広くん、それ褒めてる? 馬鹿にしてる?」
「褒めてるよ。すっごく頼れるってことだし、素敵だと思うもん」
「そ、そうか…?」

 照れる。怒っているのかと思えば、いつの間にか褒められていた。
面と向かって自分の長所を挙げられるというのは何ともこそばゆいものだった。
が、

「だけどさ!」

 思わずびくり、と井上の身体が揺れる。
さらに、揺れ続ける。――揺れ続ける?

「純くんさぁ!」

 国広の手がガッと井上の肩を掴んで――もっとも、身長差36センチ。国広が背伸びして、腕もめいっぱい伸ばして、ようやく肩を掴んだという不格好な体勢だ――がくがくと揺らしていた。

「今まではまだ良かったよ! 言ってもまだお父さんレベルだったもん! でも今の純くんの男っぽさは完全に「おっさん」だよ!」
「おっさんって……そこまで言うか」
「言うよ! ソファでごろんって寝っ転がるまではまだ許せるけどさ!」

 すぅ、と息継ぎ。そして、

「おしり掻くのは完全にアウトだよ!!」
「俺そんなことしてた!?」

 愕然。自分が女だという自覚はあるし、さすがに行動にも分別はつけているつもりだった。
そんな自分が、そんな、おしりを、え? 掻いてたの? マジで?

「いや、いやいや。……いやいやいや! しねーよそんなこと、流石に!」
「無意識だよ」
「えっ」
「無意識にやってるんだよ……おっさんってそういうものだよ」
「だからおっさんじゃねーって!」
「純くんが認めようと認めまいと、ここ最近の純くんが人前でおしりぽりぽりしたり漫画のページをめくる時に指ぺろってしたり歯磨きして歯磨き粉をぺってするときに『カァーッ!』ってすごい声出したりしてたのは全部事実なんだよ!」
「オレほんとにそんなことしてたのか!?」

 おっさんじゃん。そんなことばっかりしてたらそりゃおっさん認定もされんじゃん。

「お……オレ、ほんとにおっさんになりつつあるのか…?」
「悲しいけれどその通りだよ。このままじゃ同い年の子とお話してても「えーっ、私と干支同じなんですか? それじゃ12歳差ですね!」なんて無邪気に笑って言われるようになるんだよ」
「やべーよ……どうしよう、国広くん……」

 ぐるぐる目状態だった。青ざめた顔で混乱しきった様子の井上に、国広は優しく微笑んだ。

「大丈夫だよ、純くん」
「国広くん…?」
「大丈夫、まだ「おっさんになりたくない」って気持ちがあるなら間に合うよ」
「間に合う、って……一体どうすんだよ」

 ふふん、と国広が笑った。そして自信満々に、

「女子力を上げるんだよ!」

 言い放った。

「じょ……女子力ぅ?」
「そうだよ! おっさん度が高くなってるのなら、女子力を上げて相殺すればいいんだよ!」
「な……なるほど、確かに理には適ってる……のか?」
「さ、そうと決まれば早速っ! まずは透華の部屋の本棚の奥の方にこっそり隠してあるラブ♡コメ読破からスタートだよ!」
「よくそんなモンの存在知ってるな、っていうか国広くん待った待った手ぇ引っ張んなって!!」



「……」
「衣もともきもいたのに全くもって反応すらせずに行ってしまったな」
「……純、別におしりなんて掻いてなかった」
「うん、衣も見てたけどそんなことしてなかったぞ。だのに何故はじめはそんなこと言ったのだろうな」
「……思うに」
「思うに?」
「遊ぶ口実が欲しかっただけなんじゃ」
「成程、合点がいく推理。……ふふ」
「?」
「純は愛されてるな」
「うん。みんな大好き」

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