ジャンル:銀魂 お題:フォロワーの始まり 制限時間:15分 読者:244 人 文字数:1678字 お気に入り:0人

深海に光る月明かり

付き合ってすぐの頃、ずいぶんと長いこと重ね合わせた唇を離した後の熱い吐息で、不思議そうに問われたことがあった。
「…お前って、なんでキスする時目ぇ閉じねーの」
なんかむず痒さ倍増なんだけど、と言って、そいつは淡く染めた頬を隠して顔を背けた。
「お前だって閉じてねーだろ」
「俺はお前が閉じねーでくるからなんか閉じるタイミングっつーか、そういうの見失うんだろうが。しかもお前視線逸らさねーしずっとこっち見てるし」
ぶつぶつと文句を垂らし続けながら、染める色を深めていく頬に笑みがこぼれる。やわらかい髪に指を絡ませて、え、ちょっと、と漏れる声を聞こえぬふりで唇を寄せる。
「………なんなのお前、ほんと…」
「好きなんだよ、お前の目」
後ろ頭に回した手をそのままにして額を合わせる。明らかに戸惑いながらうろうろと宙をさまよう瞳をまっすぐに見つめて笑う。
「…好きってお前…写ってんの自分の顔だろ……」
視線の強さに観念したのか、おずおずと目線を合わせてきて、理解できないような声でぼそぼそと呟く。
「自分の好きな目に、自分が写ってんだから、いいに決まってんだろ?」
笑う土方に、なんだかなぁと唇を歪ませながら、銀時は寄せてくる唇も逸らさない瞳も、そのまま受け入れて身を任せていた。

それから、キスをするとき土方が目を閉じることはなかったし、そのせいで、銀時も目を閉じられなかった。
それ自体は別にどうということはなかったが、銀時は、そうまでして土方が自分の瞳を見つめたがる理由も、好きだと言う意味も分からなかった。
色んなものを、見て捨ててきた目だ。
あんなに愛おしそうに、大事そうに好きだと言われていいような綺麗なものではない。

部屋の電気をすべて消してもまぶしいくらいの月明かりが差す夜、銀時は、あまりに明るい月光に、ひっぺがしたシーツをぐるぐると巻くと引き寄せられるように窓際へ寄って、何もない夜空にぽっかりと浮かぶ月を見上げた。
「……なァ、土方くんさぁ」
視線は空へ向けたまま、音も立てず隣に立って煙草をくわえる男の名を呼ぶ。
「あ?」
「お前、キスする時目ぇ閉じねーじゃん」
吐き出した煙が月に重なって揺れるのを見つめながら、静かに口にする。土方は何も言わずに、まぶしい月光を放つ夜空の穴を見上げた。
「俺の目が好きとか何とか言ってたけど、具体的にどこがどう好きなの」
「…唐突だな。つーか今さらかよ」
「なんか聞きたくなったんだよ。特にねーなら別にいいけど」
二人でぼんやり月を見上げて、窓の両枠にもたれて言葉を交わす。ふうっと煙を吐き出して、土方は真面目な声で言った。
「あるよ。理由」
「え」
ぱっと向いた顔が月光に照らされて白く光る。残り少ない煙草を指にはさんで、土方は銀時の顔を見つめた。
「綺麗だったから」
「ーーーは?」
ぽつんと落とした言葉に、被ったスーツがずり落ちる。何やってんだと笑いながら、土方は続けた。
「俺も人のことは言えねーが、お前は俺以上に見てきた闇が深くて遠いんじゃねーかと、俺は思ってる」
静かな声が、しんしんと深まる闇夜に響く。
「でも、後悔のない人間なんてこの世じゃ人としてやっていけねーし、たとえ過去に何を見ていても、お前の目にはずっと、灯された希望が、消えない灯りみてーのが光りになってそこにある」
その揺れ動きが、綺麗だと思ったんだよ。
それを見た時、なんつーか、こいつもただの人なんだなって思ったんだよな。そしたらなんか、すげー好きだと思っちまってた。
おだやかに愛でるようにほほえんで、土方が月の光を含んだ瞳で銀時を見つめる。
「どーいう顔だよ、それ」
笑いながら頬に触れた手のひらに耐えきれなくなって俯いて、銀時は震える声で、うるせーバカ、と呟いた。
その後ろ頭に手を回して抱き寄せる。
「満足したかよ?」
可笑しそうに笑う声にムカついて、横っ腹に拳をぶつける。やんわりと支えられていた手のひらが離れるのを合図に顔を上げると、銀時は、すぐ目の前に迫ってきている深い色の瞳をまっすぐに見つめた。

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