ジャンル:銀魂 お題:去年のサイト 制限時間:15分 読者:320 人 文字数:1818字 お気に入り:0人

どれだけの苦い涙を

十夜目あたりまでは気づかないフリをしていた。
大体夜中の2時を過ぎる頃だ、寝室の襖がガタガタと音を立てて開いて、布団ごとずって歩く足音がだんだんと自分に近づいてくる。それは眠っている銀時のすぐそばまで寄ると、その体をぐいぐいと布団の端に押し寄せて、同じ布団に寝転がった。そしてそのまま、何事もなかったように朝まで眠っている。
最初にそれを見つけたのは毎朝同じように万事屋へ出勤して二人を起こす新八で、だけど驚いた彼がどんなに言葉を並べても、それが起きた最初の朝から、彼女の言い分は変わらなかった。
「夢見悪くて寝ぼけてたアル」
「寝ぼけてたって…あのね、神楽ちゃん、僕これでも心配してるんだよ。ただでさえ…」
「お前も寝ぼけてるアルか。私と銀ちゃんでそんなふしだらなことあるわけないアル」
言い捨ててスタスタと部屋を出て行く神楽の背中を見つめながら、新八はあぐらをかいて座ったままの銀時を振り返った。
「銀さん……」
「…まあ、何もねェのは確かだな。お前の怒鳴り声聞くまで、俺なんも知らなかったし」
ボリボリと頭をかきながら、銀時は、まぁもうねーだろ、とのんびりした声で言う。それにため息を吐きながら、新八は仕方なさそうに神楽の後を追いかけた。

だが銀時の適当な予想を大幅に外して、神楽の奇行はそのあと一週間毎夜続いた。
五日目あたりから、新八は押し入れを覗かなくなり、布団に忍び込まれる銀時も十夜目あたりまでは気づかないフリをしていた。
それを過ぎても続いたら、さすがにいつまでも寝たフリをしているわけにいかない。
永遠に続くわけではない日々の中では、穏やかに守られた日常のように見えているそれも、実のところはいつか必ず何かの形で終止符を打たなければならないものだった。
これからもずっと、銀時がここで夜を越える日々が続くとは限らない。これからもずっと、神楽が押し入れで眠る日々が続くとは限らない。
限らないから、それでも今は同じ明日に生きられるように、見えているものは見えているように扱わなければならないのだ。
それが二度と見えなくなってしまう前に。
起こさないようにと言う配慮がないのか、もしかして気づかれるのを待っているのか、相変わらずガタガタと音を立てて襖が開くのを、銀時はそちらに背を向けて目をつむって静かに聞いていた。
布団をずって進む足音、押しのけられあいたスペースに体を滑り込ませて、闖入者がふ、と息を吐く。
その音を聞いた瞬間、銀時はくるりと寝返りを打った。
「!!」
閉じかけたまぶたが一気にめくれ上がってその顔を見上げる。銀時は気だるげに半開きになった瞳のまま、見上げてくる神楽のさーっと血の気の引いていく顔を見つめた。
「ぎっ…銀ちゃん」
「……おう」
それきり何も言わない銀時に、口元まで布団を引っ張って隠れた神楽が訝しげに問いかける。
「…なんで何も聞かないアルか」
「なんか聞いてほしいのか」
一瞬詰まって、俯いた頭がふるふると横に揺れる。小刻みに震える髪の先にため息を吐いて、銀時はその頭に手を伸ばした。
ぐしゃぐしゃにかき撫でながら極めてどうでもいいことのように言葉を並べる。
「じゃー別に聞かねーよ」
「な、なんで!」
言って、寝返りを打つ背中に飛びかかるように言葉を投げる。銀時は背を向けたまま、静かな声で告げた。
「…分かるからな。悪い夢見るときのことは」
その声に何も言えないでいると、にゅっと伸びた手のひらが、また自分の頭を乱雑にかき撫ぜる。それを心地よく受けとめながら、神楽はぽつりと呟いた。
「…ありがと、銀ちゃん」
撫でていた手が一瞬止まって、半分だけ振り返った顔が、おう、と頷いて笑う。わしゃわしゃと撫で続ける手のひらにまどろみながら、神楽は小さな声で、くっついてもいい?と聞いた。一拍置いて、欠伸のついでに漏れた声が、後で新八にちゃんと言い訳しろよ、とだらしなく言う。分かったアル、と約束して、神楽はその広い背中に飛びついた。
「…、寝れそーか?」
「…うん。大丈夫ネ」
「そーか」
ふわああ、とこぼれる欠伸の声が遠くの方で響いて消えていく。背中にひっついた体温がすやすやと規則正しい寝息を立て始めたのを確認して、銀時は、子どもってやっぱあったけーんだな、としょうもないことを考えながらまぶたを閉じる。
夢の向こうで、この光景を見た新八が、しょうがなさそうに笑うのが見えた。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:銀魂 お題:許せない粉雪 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:297字 お気に入り:0人
(ねつ造あり)空から雪が降ってくる。それも、大粒ではなく粉雪だ。俺は粉雪が許せない。「なんで俺は...1人なの?」昔ちびの頃、家族がいない俺は一人だった。1人さ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:銀魂 お題:商業的な年賀状 制限時間:15分 読者:69 人 文字数:252字 お気に入り:0人
(学パロ)「今年もよろしくお願いアル!」神楽が挨拶してきた。そうだ、もう今年が終わってしまうのかとふと思う。 神楽と恋仲になり、キスをしてこれ以上のこともしたい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:銀魂 お題:どうあがいても雲 制限時間:15分 読者:609 人 文字数:335字 お気に入り:0人
「あーあ、またやっちまいやした。」雨の中、一人の真選組隊士が血のついた刀を手にそう呟いた。仕事とはいえ、人を斬るのは好きではない。が、そうしている間は彼のドS心 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:坂@小説垢 ジャンル:銀魂 お題:3月の青春 制限時間:15分 読者:2436 人 文字数:648字 お気に入り:0人
【沖神】「好きです、付き合ってください」 うるんだ瞳で自分を見上げる瞳に、まったく心が動かないわけじゃない。 かわいらしいとは、少しだけ、思うし。とか言うとまた 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:銀魂 お題:最弱の経歴 制限時間:15分 読者:1568 人 文字数:506字 お気に入り:0人
神楽様は最強アル! ムカつく女はそう言って不敵に笑った。どうでもいいけどその馬鹿面どうにかならねえのと言ったら、容赦なく鉛玉が飛んできた。こういう、喧嘩すると 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:銀魂 お題:わたしの好きな幻想 制限時間:15分 読者:699 人 文字数:527字 お気に入り:0人
今日も、嫌という程に斬った。自分が振るった剣で、沢山の命が散って逝く。只の肉片と化した其れ等を一瞥し、頬に飛び散った返り血を拭う。詰まらぬものを斬ってしまった、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:みんおれ(アニフェスで死亡) ジャンル:銀魂 お題:犯人は宇宙 制限時間:15分 読者:595 人 文字数:264字 お気に入り:0人
犯人は宇宙だ。こんな生命たちが産まれてしまったのも、こんな惑星が出来てしまったのも、全ての原因は宇宙にあるのだ。デイダラボッチが創ったなんて大嘘で。そう気づいた 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藤田 心@金銀金(無限ループ) ジャンル:銀魂 お題:天才の昼下がり 制限時間:15分 読者:647 人 文字数:430字 お気に入り:0人
例えば、靴の脱ぎ方、茶の温度の好み、何気なく置かれた読みさしの雑誌の角度だって、その気にならなくてもなっても、全部全部、記憶出来る。記憶、とは違うのかも知れない 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藤田 心@金銀金(無限ループ) ジャンル:銀魂 お題:永遠の消費者金融 制限時間:15分 読者:591 人 文字数:381字 お気に入り:0人
返しても返しても、返しきれないもの、なーんだ?こめかみにぐいっと冷たい金属が押し付けられる。ご想像通り。鈍く銀色に光るそいつは、紛れもなく純正の拳銃だ。これまた 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藤田 心@金銀金(無限ループ) ジャンル:銀魂 お題:地獄の性格 制限時間:15分 読者:1157 人 文字数:612字 お気に入り:0人
善人悪人の定義をお前ェは何に求める?俺ァ、真ん中のどっち付かずが一番罪深いと思うぜ?救われない。全くもって救われない。ほろ酔い上機嫌の帰り道。ふっと一瞬不吉な気 〈続きを読む〉

菜琉の即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:菜琉 ジャンル:銀魂 お題:俺は絶望 制限時間:15分 読者:268 人 文字数:1550字 お気に入り:0人
付き合いもそこそこの年数になったから、例えば路地の隙間に血まみれで座り込んでいたって驚いたりはしないけれど、その日はさすがに少し焦った。特に忍び寄るでもなくザッ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:菜琉 ジャンル:銀魂 お題:複雑な薔薇 制限時間:15分 読者:230 人 文字数:1552字 お気に入り:0人
大丈夫だと、よく言う男だった。どこからそんな自信が湧くのか、どんな時も、何があっても、馬鹿みたいにからりと笑いながら、大丈夫だと言う男だった。「心配せんでも、大 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:菜琉 ジャンル:銀魂 お題:名付けるならばそれは宇宙 制限時間:15分 読者:254 人 文字数:1989字 お気に入り:0人
銀時が食事当番の日、万事屋の夕食は少しだけ華やかになる。あまりにも収入のないときは別だが、大抵、銀時が食べ盛り育ち盛りの二人のためにと、少し気合を入れて料理を作 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:菜琉 ジャンル:銀魂 お題:去年のサイト 制限時間:15分 読者:320 人 文字数:1818字 お気に入り:0人
十夜目あたりまでは気づかないフリをしていた。大体夜中の2時を過ぎる頃だ、寝室の襖がガタガタと音を立てて開いて、布団ごとずって歩く足音がだんだんと自分に近づいてく 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:菜琉 ジャンル:銀魂 お題:軽い町 制限時間:15分 読者:225 人 文字数:1797字 お気に入り:0人
雪の降る夜だった。陽が完全に沈み切った頃降り出した雪は、夜が深まるのに比例してしんしんと降り積もっていき、夜が完全に一寸の灯りもない闇に包まれる頃には、江戸の町 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:菜琉 ジャンル:銀魂 お題:同性愛の魔物 制限時間:15分 読者:247 人 文字数:2371字 お気に入り:0人
周りの誰彼と同じように、当たり前に礼服に身を包んでそこにいた土方の姿を遠目から見ただけで、近藤はこみ上げてくる感情に顔を覆った。(来ないんじゃねェかと思ったのに 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:菜琉 ジャンル:銀魂 お題:当たり前の子犬 制限時間:15分 読者:245 人 文字数:2235字 お気に入り:0人
差し伸べた手を掴んでほしいと思っていた。全部託すから、全部託してほしかった。『見てられないから、夜中目が覚めないようにするしかないアル』『…そんなにひどいの』ぽ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:菜琉 ジャンル:銀魂 お題:セクシーな闇 制限時間:15分 読者:259 人 文字数:3021字 お気に入り:0人
「またこんなところでサボってる」寝転がって広げていた週刊誌の影が急に濃くなったと思ったら、そこからひょっこりと覗いた顔がくすくすと笑みをこぼしながら揺れる。「お 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:菜琉 ジャンル:銀魂 お題:名前も知らない作品 制限時間:15分 読者:237 人 文字数:1656字 お気に入り:0人
けたたましく鳴らされるインターホンに怒鳴りつけながら戸を開けた先、そこに立っていた人物に新八は息を呑んで言葉をなくした。「あ……あいつ、は」いつもV字だクソ真面 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:菜琉 ジャンル:銀魂 お題:フォロワーの始まり 制限時間:15分 読者:232 人 文字数:1678字 お気に入り:0人
付き合ってすぐの頃、ずいぶんと長いこと重ね合わせた唇を離した後の熱い吐息で、不思議そうに問われたことがあった。「…お前って、なんでキスする時目ぇ閉じねーの」なん 〈続きを読む〉