ジャンル:銀魂 お題:名付けるならばそれは宇宙 制限時間:15分 読者:227 人 文字数:1989字 お気に入り:0人

家族の風景

銀時が食事当番の日、万事屋の夕食は少しだけ華やかになる。あまりにも収入のないときは別だが、大抵、銀時が食べ盛り育ち盛りの二人のためにと、少し気合を入れて料理を作るからだ。だから、何もなければいつもは夕食の時間までには帰宅する新八も、銀時が食事当番の日はなんやかんやと理由をつけてお腹いっぱいにして幸せそうに万事屋を出る。本当は銀時の料理をひとりじめしたい神楽も、三人で囲む食卓のくだらないあたたかさや、いつもの何倍もおいしく感じる料理の味を知ってしまってからは、新八がそわそわと夕食を待つのを黙って隣で一緒にそわそわしている。
「銀さん今日食事当番でしたよね、そろそろ支度始めませんか。6時半過ぎてるし」
「あ?もうそんな時間か。神楽ァー」
「何アルか!」
雑用や掃除を頼まれる時とはうって変わってはきはきと明るい声で神楽が返事を返す。銀時はだらしなく椅子に腰かけたまま、チラシの裏にさらさらと何かを書くと、ピッと指の間にはさんで神楽へ向けた。
「ちっとおつかい頼まれてくれや。いつものスーパーで、書いてあるもん買ってきて」
「銀ちゃん酢昆布が書いてないアル!」
「あーはいはい、じゃあプラス酢昆布な。それ以外余計なもん買ってくんじゃねーぞ、分かったな」
「ガッテン承知の助ネ!定春ぅー散歩行くアルよー!」
バタバタと駆けていく足音が軽い。新八はその背中を追いながら、僕も行くよ、と一緒に玄関に向かった。
部屋を出るとき、少し振り返って、キッチンに立つ横顔を二人で覗く。
「今日は何作るんですか?」
「出来てからのお楽しみ〜って、お前らこのやり取り毎回やってんだろ。よく飽きねーな」
フライパンを出して冷蔵庫の中を覗きながら呆れ返った声がいつもの変な調子で言葉を返す。二人はそれに笑いながら、楽しみだね、と顔を合わせて家を出た。

ベーコンを細く切って、バターを溶かしたフライパンに投げ入れる。先に切っておいたほうれん草を加えてしばらく炒める。テレビは穏やかな夕方のニュースを新人のアナウンサーが一生懸命伝えていて、窓の外からは平日を生き抜いた大人たちの陽気な笑い声が聞こえる。タイトルの思い出せない曲を鼻歌で口ずさみながら、銀時は炒めたベーコンとほうれん草を、フライパンの上で形を整えてみっつに分けた。そのかたまりひとつずつに卵を落として、フタをする。
定春の鳴き声と共に階下が少し騒がしくなり、カンカン、とよく響く足音が心地よい喧騒を連れて帰ってくる。
「ただいまーーー!」
「おー、おかえり」
「銀ちゃんすっごいいい匂いするアル!すっごいいい匂い!何アルか何作ってるアルか!」
ドタバタと駆けてくる神楽に正面に立ちはだかって、出来てからのお楽しみっつったろーと悔しそうに頬を膨らませる顔をにやにやと意地悪く笑いながら見下ろす。その後ろで、脱ぎ捨てた靴を綺麗に揃えた新八がスーパーの袋を持ってくすくすと笑いながら歩いてくる。
「書いてあったもの、ちゃんと買ってきましたよ」
キッチンに並んで、すぐいるものとそうでないものに分けながら買い物袋を片付けていく。今使うから、と言って受け取った鮭の代わりに、皿に盛ったソテーを渡す。
「神楽ちゃーん、僕これ運ぶからご飯よそってくれるー?」
「はいヨー」
テレビを観ていた神楽と入れ違って、食卓におかずを並べる。
キッチンではおかずを隠そうとする銀時と意地でも覗き見してやろうと飛び跳ねる神楽の子どもみたいなやりとりが続いていて、そのうしろを通って箸や飲み物の準備をする。
「だーっ!お楽しみだっつったろうが!もうこれ焼けたら終わりだからあっち行ってろ!」
「ええ〜〜なんでヨ〜新八は見てたのに〜並んで横に立ってたのに〜」
「ほら、邪魔しちゃうと美味しさ減ってっちゃうよ。あっち行ってよう神楽ちゃん」
むくれる神楽を引っ張って、新八が食卓へ向かう。二人がテレビに集中し出して、部屋にぽつぽつと笑いがこぼれる頃に、銀時が三人分のメインのおかずを持ってやってくる。ほうっと頬をほころばせてそれを受け取って、三人で手を合わせて各々夕食に箸を伸ばす。
だけど、そこでいつも、銀時は途中で一度だけ箸を止めて、喋りながら笑いながらテレビを観ながら食事を続ける二人を、ほんの少しの間眺めている。
「銀さん食べないんですか?」
年相応の少年の顔をして、頬をご飯でぱんぱんに膨らませた新八が不思議そうに首をかしげる。それに肩を揺らして笑いながら、同じようにおかずをかきこむ。
「美味いか?」
絶対に、いつもと同じ答えが返ってくると分かっていて、銀時はいつもと同じように二人から目線を外してそう問いかける。
「めっちゃうまいアル!」
「すごくおいしいですよ」
米粒をつけながら笑う顔を目の端に止めながら、銀時は、そいつぁよかった、とゆるやかに笑った。

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