ジャンル:咲-Saki- お題:商業的な消費者金融 必須要素:ペペロンチーノ 制限時間:30分 読者:232 人 文字数:1825字 お気に入り:0人

まーじゃんくん


「roof-topか……なるほど。いい店だな」

染谷まこの頬を、冷たい汗が伝った。
「どうする」などという思考は、すでに放棄したはずなのに、それでも何か活路はないかと相手の様子を窺ってしまう。

「だが、それも今日までだ」

経営が芳しくないとは聞いていた。
テコ入れのために、どこかから金を借りているとも聞いていた。
だが、よもやここまで膨れ上がっているだなんて、思ってもみなかった。

まこのような女学生が知った所で何も出来やしないのだ、言わなかったのは心配かけまいとする親心だったのかもしれない。
それでも、もっと早くに、一言相談してほしかった。
自分だって、このroof-topで育ってきた、従業員の一人なのだから。

「払えないのならば、仕方あるまい?」

自動卓をそっと撫でながら、辻垣内智葉が鋭い眼光を向けてきた。
そこに居るのは、あの夏の日に見た“女子高生雀士”ではない。
辻垣内組より派遣された“スジ者のお偉いさん”であることは、火を見るより明らかだった。
顔見知りだなんてことは、何の意味も持たない。
借りたものは返す――その当然の理が、粛々と行われるだけだ。

「土地を譲ってもらおう」

ぎゅう、と拳を握りしめる。
血が滲む掌よりも、心の方がずっと痛かった。
何かしたいけど、もうどうにもすることができない。
握った拳を振るう権利だってない。
それが、何より辛かった。

「――ここまでが、タンヤオファイナンスの者としての言葉だ」

タンヤオファイナンス。
辻垣内組が経営して入るのだが、それでもあくまで健全な消費者金融である。
合法的な金利で貸出を行い、“許された手段”で真っ当な権利を行使し回収する。
勿論金利は高いのだが、それでも所謂『闇金』なんかと比べると、よほどマシで安心できる消費者金融だった。

「商業的な、消費者金融としての話の他に、望むならもう一つ提案が出来る」

ピクリ、とまこが反応する。
もう、何も出来ないと思っていた。
借金をしたことは事実で、そして返せないのも事実。
だから、どうしようもないと、思っていたのに。

「ただしこれは――商業的ではあるが、しかし表向きの商売ではない、金融ですら無い“ヤクザの世界”の話になる」

強く握りすぎた拳の下で、スカートがシワになっている。
まこの眉間は、きっともっとシワだらけだろう。
期待してはいけないと思っていたのに、それでも期待してしまった自分が憎らしかった。

「闇金ででも、借りれるもんなら、借りて返して経営してほしい……そう思っちょった。じゃが――」

店が潰れずに済むなら、闇金で借りてもいいとまこは思っていた。
だが――闇金に返せる見通しがたつようなら、こんなことにはなっていない。
そんな両親の冷静な言葉が、まこに“諦めるしかない”という結論を出させていたのだ。

「安心しろ。別に辻垣内組の闇金で借りろという話ではない。勿論他所で借りろとも言わん」

なのに。

「私達は、この店がほしいんだ。今まで通り表向きには健全で、しかし裏では非合法な博打も出来る場として」

蜘蛛の糸が、垂らされた。

「とはいえ、そう簡単に納得してはもらえまい」

身動きを封じてから、甘い言葉で罠にはめる。
ヤクザの常套手段である。
それは分かっている。
この店を、そんな非合法な場所にしたくなんてない気持ちだって強い。
なのに、目の前の蜘蛛の糸は、登りやすいようどんどん強化されていく。

「だから――こいつで決めよう」

自動卓を撫でていた智葉の指が、ボタンに触れる。
せり上がってきた牌山から、席決めのために使う牌を抜いていく。

「こちらが勝てば、大人しく配下として今後も経営してもらう」

呆然とするまこを置いて、話はどんどん進んでいく。

「万が一こちらが負ければ、借金はチャラにしてやろう」

どうするのが正しいのかなど、分からない。
だが、それでも――

「今なら通常の金融会社としての話に戻る事もできるが?」
「必要ないけぇ」

両親の止める声を振り切り、まこは、迷わず卓についた。

「ただし、こっちからも条件じゃ。半荘2回程度じゃラッキーパンチが当たることもある。半荘6回はしてもらうけえ」
「いいだろう……ラッキーパンチを当てられなくなるのはそちらだと思うがな。
 長丁場になるな。ペペロンチーノでも持ってきてもらおうか」



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