ジャンル:咲-Saki- お題:馬鹿な借金 必須要素:予想外の展開 制限時間:30分 読者:235 人 文字数:2304字 お気に入り:0人

まーじゃんくん②-誤字修正間に合わねえ-


「なるほど、美味いな」

ペペロンチーノを口に運び、辻垣内智葉が素直に賞賛の言葉を述べる。
世辞でも何でもないらしく、皿に乗せられたスパゲッティは見る見る智葉の口へと吸い込まれていった。

「この雀荘が流行るのも頷ける」

口元を紙ナプキンで拭い、智葉が空になった皿を差し出す。
未だに流れについていけない染谷まこの父親が、怯えた小動物のように、皿を下げて厨房へと消えていった。
無茶な勝負をして申し訳ないと、まこは思う。
それでも、もうこれしか方法はないのだ。
着席後、無理に引き剥がさないあたり、まこに託してくれたようにも見える。

「――あの藤田プロが常連なだけあるな」

その言葉が、まこの胸にぐさりと刺さる。
今この卓には、一人ずつしか座っていない。
もう一人をどうするのか、明言されていなかった。
そして――そして、もし可能ならば、常連である藤田靖子の力を借りることが出来たらと、どこかで考えていた。
そんな心を見透かされたようで、まこは思わず目を伏せる。

「呼んでもいいぞ。2人では麻雀にならないからな」

ごくり、と喉が鳴る。
竹井久に頼めば仲介してもらえるかもしれない。
そんな考えがあったのは事実。
だが、それでも。

「いや――あの人は、無関係じゃけえ」

何とか上げた顔は、きっと惨めに歪んでいたと思う。
未練だって、当然ある。
それでも、その一線は、roof-topという“みんなに愛された雀荘”として、越えてはならない一線だった。

「そんな人を、こんなことには巻き込めんよ」

勿論、巻き込めないのは藤田プロに限った話ではない。
宮永咲や原村和なら、きっと智葉に対抗出来るだろう。
真剣に頼み込めば、今からでも来てくれるかもしれない。

だが、しかし、巻き込むわけにはいかない。

当然だ。無関係なのだ。
そしてこれは、もうとっくに“借金を背負ったお店と貸した側”の話の領域を飛び越え、裏社会のソレになっている。
どうして誰かを巻き込めようか。

「そうか。だが、いいのか?」

そして巻き込めないのは、店の従業員もである。
社員であろうが、バイトであろうが、こんなことに首を突っ込ませるわけにはいかない。
これは染谷家で解決せねばならぬ問題だ。
はっきり言って心許ないが、両親のどちらかに卓に着いてもらわざるを得ないだろう。

「こちらは、食事を頂く間に、お引きを用意させて貰っているぞ?」

うっ、と思わず呻いた。
咲や全国クラスの魔物と接する内に、最低限の魔物探知能力は身につけたつもりだ。
そのセンサーが告げている。
この場に居る人物で、魔物クラスは辻垣内智葉ただ一人だと。
だから、まだ、勝ちの目があると思ったのに。

「安心しろ。こちらは別にプロを雇ってはいないし、裏稼業の代打ちを連れてくるつもりもない」

少しばかり、安堵する。
勿論安堵出来るような人物が来るとは思えないが、それでもどうしようもない実力者を連れてこられるよりマシだ。
固く打ってもどうにもならないような相手に来られると、お引きの差で惨敗という可能性はある。
最低限、オカルトで無双されるような相手ではないことを望むしか無い。

「はっきり言っておこう。ウチの組は、お前たちをナメている。
 仮にも全国制覇した清澄高校の副部長だというのに、私一人で余裕で勝てるだろうとのことだ」

合点がいった。
辻垣内組の後継者たる智葉が、わざわざ長野まで来たのは、恐らく力を試されてのことだろう。
年齢的にあまりにも若く、実績もない。
唯一の強みは雀力だが、しかしインターハイなどのスポーツ的な麻雀を低く見ている裏稼業の連中には、そこのトップにすら立っていない智葉の実力なんて評価に値していないのだろう。

「所詮はスポーツと、表の麻雀をナメているんだ。いや、ひょっとすると、死に物狂いで行われないあらゆるものを低く見ている。
 当然、私のことも含めてな」

だからこれは、“はじめてのおつかい”なのだ。
ヤクザものとして戦えるかどうかを見極めるため。
死に物狂いになるであろうまこ達相手にちゃんと完封できるかを、試してみようという話なのだ。

「いい気はせんが……まあ、こちらとしちゃ、それに感謝するしかないけぇのう」

しかしおかげで、チャンスがこうして降ってきた。
実際こちらは死に物狂い。
それこそ、“夏の三年生”のような気迫を込められる。
今ならば、相手に化物じみた裏社会のプロがいなければ、なんとかなるかもしれない。

「一つ忠告しておこう。ヤクザはメンツの生き物だ。“今の私”も含めてな」

ガチャリ、とドアが開けられる。
外していなかった入店を知らせるベルが、からんころんと音を立てた。

「死に物狂いで必死なのは、こちらもだ」

振り向くと――そこには少女が立っていた。
口を聞いたことはない。
それでもまこは、その少女を知っている。

「遅かったな」

智葉に促され、雀卓へと歩み寄る少女。
ネリー・ヴィルサラーゼ。
あの大会で、咲を苦しめた少女だ。

「こいつはウチで馬鹿な借金をして踏み倒そうとした。必死なのは、こちらも一緒だ」

すう、と一呼吸して、智葉が言った。威圧感たっぷりに。

「死ぬ気で来い。さもなくば――――死ぬぞ」

汗が伝う。
なるほど、相手は裏社会のプロじゃない。
だが――しかし、下手をすると、もっと最悪で、予想外のじだった。

※これはさっきやった即興二次(http://sokkyo-niji.com/novel.php?id=115043)の続きです

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