ジャンル:咲-Saki- お題:馬鹿な借金 必須要素:予想外の展開 制限時間:30分 読者:246 人 文字数:2304字 お気に入り:0人

まーじゃんくん②-誤字修正間に合わねえ-


「なるほど、美味いな」

ペペロンチーノを口に運び、辻垣内智葉が素直に賞賛の言葉を述べる。
世辞でも何でもないらしく、皿に乗せられたスパゲッティは見る見る智葉の口へと吸い込まれていった。

「この雀荘が流行るのも頷ける」

口元を紙ナプキンで拭い、智葉が空になった皿を差し出す。
未だに流れについていけない染谷まこの父親が、怯えた小動物のように、皿を下げて厨房へと消えていった。
無茶な勝負をして申し訳ないと、まこは思う。
それでも、もうこれしか方法はないのだ。
着席後、無理に引き剥がさないあたり、まこに託してくれたようにも見える。

「――あの藤田プロが常連なだけあるな」

その言葉が、まこの胸にぐさりと刺さる。
今この卓には、一人ずつしか座っていない。
もう一人をどうするのか、明言されていなかった。
そして――そして、もし可能ならば、常連である藤田靖子の力を借りることが出来たらと、どこかで考えていた。
そんな心を見透かされたようで、まこは思わず目を伏せる。

「呼んでもいいぞ。2人では麻雀にならないからな」

ごくり、と喉が鳴る。
竹井久に頼めば仲介してもらえるかもしれない。
そんな考えがあったのは事実。
だが、それでも。

「いや――あの人は、無関係じゃけえ」

何とか上げた顔は、きっと惨めに歪んでいたと思う。
未練だって、当然ある。
それでも、その一線は、roof-topという“みんなに愛された雀荘”として、越えてはならない一線だった。

「そんな人を、こんなことには巻き込めんよ」

勿論、巻き込めないのは藤田プロに限った話ではない。
宮永咲や原村和なら、きっと智葉に対抗出来るだろう。
真剣に頼み込めば、今からでも来てくれるかもしれない。

だが、しかし、巻き込むわけにはいかない。

当然だ。無関係なのだ。
そしてこれは、もうとっくに“借金を背負ったお店と貸した側”の話の領域を飛び越え、裏社会のソレになっている。
どうして誰かを巻き込めようか。

「そうか。だが、いいのか?」

そして巻き込めないのは、店の従業員もである。
社員であろうが、バイトであろうが、こんなことに首を突っ込ませるわけにはいかない。
これは染谷家で解決せねばならぬ問題だ。
はっきり言って心許ないが、両親のどちらかに卓に着いてもらわざるを得ないだろう。

「こちらは、食事を頂く間に、お引きを用意させて貰っているぞ?」

うっ、と思わず呻いた。
咲や全国クラスの魔物と接する内に、最低限の魔物探知能力は身につけたつもりだ。
そのセンサーが告げている。
この場に居る人物で、魔物クラスは辻垣内智葉ただ一人だと。
だから、まだ、勝ちの目があると思ったのに。

「安心しろ。こちらは別にプロを雇ってはいないし、裏稼業の代打ちを連れてくるつもりもない」

少しばかり、安堵する。
勿論安堵出来るような人物が来るとは思えないが、それでもどうしようもない実力者を連れてこられるよりマシだ。
固く打ってもどうにもならないような相手に来られると、お引きの差で惨敗という可能性はある。
最低限、オカルトで無双されるような相手ではないことを望むしか無い。

「はっきり言っておこう。ウチの組は、お前たちをナメている。
 仮にも全国制覇した清澄高校の副部長だというのに、私一人で余裕で勝てるだろうとのことだ」

合点がいった。
辻垣内組の後継者たる智葉が、わざわざ長野まで来たのは、恐らく力を試されてのことだろう。
年齢的にあまりにも若く、実績もない。
唯一の強みは雀力だが、しかしインターハイなどのスポーツ的な麻雀を低く見ている裏稼業の連中には、そこのトップにすら立っていない智葉の実力なんて評価に値していないのだろう。

「所詮はスポーツと、表の麻雀をナメているんだ。いや、ひょっとすると、死に物狂いで行われないあらゆるものを低く見ている。
 当然、私のことも含めてな」

だからこれは、“はじめてのおつかい”なのだ。
ヤクザものとして戦えるかどうかを見極めるため。
死に物狂いになるであろうまこ達相手にちゃんと完封できるかを、試してみようという話なのだ。

「いい気はせんが……まあ、こちらとしちゃ、それに感謝するしかないけぇのう」

しかしおかげで、チャンスがこうして降ってきた。
実際こちらは死に物狂い。
それこそ、“夏の三年生”のような気迫を込められる。
今ならば、相手に化物じみた裏社会のプロがいなければ、なんとかなるかもしれない。

「一つ忠告しておこう。ヤクザはメンツの生き物だ。“今の私”も含めてな」

ガチャリ、とドアが開けられる。
外していなかった入店を知らせるベルが、からんころんと音を立てた。

「死に物狂いで必死なのは、こちらもだ」

振り向くと――そこには少女が立っていた。
口を聞いたことはない。
それでもまこは、その少女を知っている。

「遅かったな」

智葉に促され、雀卓へと歩み寄る少女。
ネリー・ヴィルサラーゼ。
あの大会で、咲を苦しめた少女だ。

「こいつはウチで馬鹿な借金をして踏み倒そうとした。必死なのは、こちらも一緒だ」

すう、と一呼吸して、智葉が言った。威圧感たっぷりに。

「死ぬ気で来い。さもなくば――――死ぬぞ」

汗が伝う。
なるほど、相手は裏社会のプロじゃない。
だが――しかし、下手をすると、もっと最悪で、予想外のじだった。

※これはさっきやった即興二次(http://sokkyo-niji.com/novel.php?id=115043)の続きです

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:宥凪 ジャンル:咲-Saki- お題:馬鹿な借金 必須要素:予想外の展開 制限時間:30分 読者:168 人 文字数:1238字 お気に入り:0人
「好きだよスミレ。結婚して欲しいの」豪華な食事、夜景を見渡せるレストラン、何時も以上にお洒落な服装。告白されてから思い返してみると当然ではあるのだが、私からすれ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:よくと氏 ジャンル:咲-Saki- お題:馬鹿な借金 必須要素:予想外の展開 制限時間:30分 読者:152 人 文字数:1241字 お気に入り:0人
※前回の即興SSから続いてます。一「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」宥「実は…お金を借りたくて…」一「借り入れのご相談ですね。こちらへどうぞ」私 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨七 ジャンル:咲-Saki- お題:理想的な彼氏 必須要素:予想外の展開 制限時間:30分 読者:575 人 文字数:2106字 お気に入り:1人
「えーっ!! 揺杏ちゃん、彼氏出来たんですか!?」「ばか! 声が大きい!」 有珠山高校に、成香の驚く声が響き渡る。「本人に聞かれたらどうするんだ」と、慌てて爽が 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ユーリン ジャンル:咲-Saki- お題:理想的な彼氏 必須要素:予想外の展開 制限時間:30分 読者:584 人 文字数:1747字 お気に入り:2人
私の家の近くにはかっこいいお兄さんが住んでいた。いつも、ニコニコしていて私に出会うと笑顔で微笑みかけてくれて……そして、私の誕生日にはいつも決まってプレゼントを 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨七 ジャンル:咲-Saki- お題:輝くカラス 必須要素:予想外の展開 制限時間:15分 読者:510 人 文字数:761字 お気に入り:0人
「あのねー、宮永さん」 カン。カン。もいっこ、カン。三つめのカンを加カンで宣言した宮永咲に、対面の黒ずくめが小さく呟く。その声はか細く、他家の石戸や末原には聞こ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:咲-Saki- お題:めっちゃ木 必須要素:甘栗 制限時間:30分 読者:30 人 文字数:801字 お気に入り:0人
「甘栗食べたくない?」「食べたいけど何?山から栗拾ってきたの?」秋のしずは毎日のように山へ行く。栗拾いにキノコ狩り、紅葉狩りetc..秋の山には食材がたっぷりあ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:晴天バーディーズ ジャンル:咲-Saki- お題:めっちゃ木 必須要素:甘栗 制限時間:30分 読者:22 人 文字数:679字 お気に入り:0人
「めっちゃ木やん」と、洋榎の第一声がこれ。木ですね…、木なのよー。と姫松メンバーが集まっているのは部室内、の中心にある木だ。 「めっちゃ木やん」洋榎はおんなじ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にーな ジャンル:咲-Saki- お題:めっちゃ木 必須要素:甘栗 制限時間:30分 読者:38 人 文字数:538字 お気に入り:0人
咲「そういえば、あの日◯のcmに出てるめっちゃ大きい木あるじゃないですか。」和「◯立のcmのあの木ですね。」咲「あの木ってなんの木なのかな?」和「リアルこのー木 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨七 ジャンル:咲-Saki- お題:めっちゃ木 必須要素:甘栗 制限時間:30分 読者:31 人 文字数:1338字 お気に入り:0人
「めっちゃ木が生えてますよー!」「栗の木。ただの木なら神境にも生えてる…」「はるるはこまかいですねー」 きゃっきゃと巫女服の少女たちがはしゃいでいた。一人は滝見 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:咲-Saki- お題:めっちゃ木 必須要素:甘栗 制限時間:30分 読者:34 人 文字数:934字 お気に入り:0人
「ねえねえすこやん。すこやんの高校時代の文学祭の映像見たんだけどさ」「…は?」正直こーこちゃんが言ってることが理解できなかった。どうして彼女が私の高校時代の映像 〈続きを読む〉

すかい「文章」ギオンの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:咲-Saki- お題:めっちゃ木 必須要素:甘栗 制限時間:30分 読者:30 人 文字数:1706字 お気に入り:0人
このー木なんの木_人人人人人_> 宮永咲 < ̄Y^Y^Y^Y^Y^ ̄「大変だーーーー!咲が木になっちまった!!!!」「えっ、須賀くんも咲さん狙いなんですか!?」 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:咲-Saki- お題:大人の魚 必須要素: 制限時間:30分 読者:33 人 文字数:1998字 お気に入り:0人
「大変だーーーー!! 全国制覇の祝勝会で大量の寿司を取ったら咲が泡拭いて気絶したーーーーーーっ!!」須賀京太郎の絶叫が木魂する。ここは清澄高校麻雀部が部室。つい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:咲-Saki- お題:裏切りの道のり 必須要素:スラム街 制限時間:15分 読者:76 人 文字数:1178字 お気に入り:0人
『ネリー、あたしね』そう切り出す彼女の顔は、いつも太陽のように輝いていた。ドブ川の底に溜まった泥のようなこの街で、あんな笑顔が出来るだなんて。素直に感心するし、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:ガールズ&パンツァー お題:彼のところてん 必須要素:《算数のたかし》 制限時間:15分 読者:180 人 文字数:1154字 お気に入り:0人
「大変よアリサ、貴女の愛するタカシくんがゲイビデオに出演していたわ!!」「!?」乱暴にドアが開け放たれる。驚いて振り返ると、そこにはサンダース大学付属高校戦車道 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル: お題:興奮した処刑人 必須要素:じゃがいも 制限時間:30分 読者:244 人 文字数:2382字 お気に入り:0人
「ほう……」深夜のコンビニエンスストアで、戸叶は一人雑誌を眺めていた。お目当ては、雑誌のグラビアページだ。ストリートファイトの賞金があるため雑誌を買う余裕くらい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:咲-Saki- お題:馬鹿な借金 必須要素:予想外の展開 制限時間:30分 読者:246 人 文字数:2304字 お気に入り:0人
「なるほど、美味いな」ペペロンチーノを口に運び、辻垣内智葉が素直に賞賛の言葉を述べる。世辞でも何でもないらしく、皿に乗せられたスパゲッティは見る見る智葉の口へと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:咲-Saki- お題:商業的な消費者金融 必須要素:ペペロンチーノ 制限時間:30分 読者:275 人 文字数:1825字 お気に入り:0人
「roof-topか……なるほど。いい店だな」染谷まこの頬を、冷たい汗が伝った。「どうする」などという思考は、すでに放棄したはずなのに、それでも何か活路はないか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:バトル・ロワイアル お題:凛としたフォロワー 必須要素:山田が犯人 制限時間:30分 読者:352 人 文字数:2256字 お気に入り:0人
そういえば、集団下校というものが、ランドセルを背負ってる頃にはまだあったような気がする。相馬光子(女子11番)だって、まだ9つの誕生日を迎えるまでは、無邪気に集 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:咲-Saki- お題:俺は犯人 必須要素:《英語のクミ》 制限時間:30分 読者:298 人 文字数:1575字 お気に入り:0人
「わあ」思わず言葉が漏れた。すっかり手狭になってきた勉強机。その大掃除をしていたら、プリントをまとめたファイルの中に、英語の教科書が紛れこんでいた。「懐かしいな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル: お題:暴かれた会話 必須要素:会話劇 制限時間:4時間 読者:326 人 文字数:4750字 お気に入り:0人
「こんな格言を知ってる?」カップを口元に運びながら、金髪の少女――ダージリンが口を開く。「10のダンベルが全て揃った時。10人の始祖及び超人閻魔は――――」くい 〈続きを読む〉