ジャンル:家庭教師ヒットマンREBORN! お題:謎の野球 必須要素:芥川賞 制限時間:1時間 読者:177 人 文字数:1635字 お気に入り:0人

懲りない大人たち(ザンザス夢)

 その男はパーソナルスペースを侵されることがとにかく我慢ならない性質で、しかも残念ながら己の領域を侵犯されようものなら即座に物理攻撃で排除するような横暴な真似が許される立場にあった。そんなデンジャラスな職場であるものだから、彼の部下なんてのは文字通り毎日命の綱渡りを強要されているはずなのに、揃いも揃って彼の言語化しにくいカリスマにすっかり惚れ込んだ変態ばかりで、毎日命のすり減らしながら彼らなりに楽しく過ごしている。新入りなんかには到底理解できぬ理念であるが、どうせ適応できぬ者は早々に死んでいくので、そう言う意味では非常にシンプルな部隊である。ボスの言うことには逆らうな。勝手に死ぬな。任務は必ず遂行しろ。できなければ死ね。
 そういった鉄の掟のひとつを、蔑ろにして今尚生きている可笑しな女がいる。
 女は今、男のベッドでぷかぷかと煙草を吹かしながら、お気に入りの古典小説を読み耽っていた。夢中になりすぎてうっかりシーツを焦がしてしまい一瞬焦ったものの、でもまあどうせセックスしたらぐちゃぐちゃになったシーツはどうせ処分されるからいいかと忘れることにした。そもそも仕事帰りでどろどろの(比喩ではなく返り血エトセトラで割とどろどろである)風呂にも入っていない女がごろんごろんしている時点で、シーツは最早再起不能な状態と言えた。
 足音がする前から、女は男の近づく気配を感じ取っていた。なんとなくわかるのだ。いつだったか愛ゆえだと言ったら、馬鹿じゃねえのかと吐き捨てられたことをふと思い出す。女は、男のそういう素直じゃないところが最高に好きだった。
「ただいま」
 扉が開いたと同時に、女はうっそりと微笑む。
「どうしてここにいる」
 男の返答はひどくそっけない。しかしいつものことだ。一番ひどい時は無視されるので(正直頻繁にある)、寧ろ機嫌は悪くないと言えた。
「おかえりって言ってくれないの」
「明日までフランスだろてめえ」
「もう終わったもん」
 女は口もとを尖らせてそう言った。乱れた髪を掻き上げながら、横目に男をちらりと窺う。
「ちゃんと終わったんだけど……、あのね、一応早めに言っとくけど、明日の朝刊見ても怒らないでね」
「ああ? なにした」
「いや大丈夫! うちの仕事だってばれてないから!」
「目立つなってんだろ」
「ごめんね。言うこと聞かない悪いこで」
 申し訳なさを全く感じない、場違いに晴れやかな面差しで女ははにかんだ。この女が特別なのは、男の、いや、ボスの命令を全く意に介さない癖に、結局なんだかんだそれを許されてしまっているところである。それは彼女が唯一、組織ナンバーツーの傲慢な美形と双璧をなすくらい任務を達成できる実力者であるからなのだけれど、如何せん生来の杜撰さのせいでコリエレデラセラの三面に載るような事態がしばしば起こるのだ。それでも今なお男が女を排除しないのは、まあ有り体に言うと、惚れた弱みである。
「また読んでるのかそれ」
 女の手にする小説は、紙の端が擦り切れてくたりとなっている。女が愛する男のために何もかも捧げて、最終的にはその男のために無残にのたれ死ぬあまりにも悲惨なストーリーだ。男はそのしみったれたストーリーを全く好きになれないのだが、女は飽きることなく何度も何度もそれ読み返している。憑りつかれたように。狂ったように。
「いいでしょ、好きなんだから。憧れてるの」
「っは、俺が死ねって言えば死ぬのか」
「死ぬよ。任務なら喜んで死ぬよ」
 いっそ気持ち悪いくらい平坦な声で女は答えた。その淀みない返答に男は満足して、ベッドに乗り上げると女に覆い被さって唇を塞いだ。触れた唇は苦しいくらいの熱を孕んでいて、身体中が燃え盛っている。暗がりのなかで鈍い光を携えたヘーゼルの瞳は、生半可な死など簡単に退けるくらいの強さを有してる。
 喜んで死ぬ。いつだってそう言い切る女は結局死なずに戻ってくる。いつだって、その繰り返しだ。

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