ジャンル:東方Project お題:狡猾な警察官 制限時間:30分 読者:320 人 文字数:1574字 お気に入り:0人

一秒の快楽と永遠の苦痛

 響子は激怒した。イルでドープなリリシストを目指していたのだ。ギャングスターでFxxk Tha Policeの精神だったのだ。

「いや……仕事もないし犯罪もないし……そろそろ遊んでないで婚活でもしようかなって」

 小兎姫は気だるげに答えた。この世界で唯一の警察官であった小兎姫は警察の職を辞していたのだ。

「犯罪がないなら火を付けるとか汚職警官になるとか、悪行が嫌でもダイハードなリーサルウエポンを目指そうという考えはないの!?」
「お生憎だけれど」

 響子は激怒しつつミスティアの元に赴くことにした。警察が居ないのでは敵もいない。パブリックエネミーになって911 is a jokeな夢が崩れてしまう。トラッドでオールドスクールなラッパーには官憲という敵が欠かせないのだ。

「ミスティア! 銀行強盗をするわよ」
「本気で言ってるの?」
「銀行強盗はパンクでしょ! ピストルズだってロナルドビッグスと一緒にやったわ、キャッシュフロムカオス! パンクスノットデッド! 私たちに明日はない!」
「パンクは古くさい気がするからヒップホップの世界で鍛えてくると言ってたのは響子でしょうに」


 むう、と響子は呟く。確かに、と首肯する。そもギャングスタラップも些か時代遅れかもしれないが、パンクよりはモボやモガに馬鹿受けではあろう。

「それはそれとして鳥獣伎楽の活動にもお金が必要でしょう? 解散商法のプリズムリバー姉妹に対抗するためにはお金がいるのよ」
「それはそうだけれど――」
 
 ミスティアの言葉は些か歯切れが悪かった。 

「――私は響子と違って仕事があるから、働けば活動に必要なお金は入ってくるのよ」
「人を無職みたいに!」
「違うの?」

 響子はミスティアに背を向けてかけだした。目に涙を浮かべつつ駆けだした。ミスティアだって所詮は安定を求めるブルジョワなのだと思った。ブルジョワは敵だ、屋台はブルジョワだ。
 そして、どこまで走ったのだろう。気が付けば見知らぬ場所にいた。

「あ、あなたはパンク神!」

 見知らぬ男がいたので、とりあえずパンクの神と呼ぶことにした。

「いえ、私は死神の一人ですよ」

 なるほどなるほど、と響子は思った。絶望に打ちひしがれたときに死神が来るのは定番だ。パターンAは試練を突破しないと死ぬと話を盛り上げてくれるタイプで、パターンBは色々なものを与えてくれるが「ははは、代償に貴様の魂を戴くぞ」と宣うタイプだ。

「これはこれは死神さん。私にどんなご用でしょう」

 パターンBの方が手軽でいいなと思った。最後に機械仕掛けの神が舞い降りて、なんだかんだと魂を守ってくれるのが定番だからだ。

「銀行強盗未遂の罪で地獄行きです」
「内心の自由は憲法で保障されてるでしょ!」
 
 響子が叫んだが、幻想郷に憲法はなかった。うう……と肩を落としながら、響子は地獄に連れて行かれた。私はいつの間にか死んでしまったのだろう。ミスティア、白蓮、村紗――みんな、ごめんなさいと思いながら。
 それでも、地獄にイケメン鬼がいるのではないかと最後の希望を抱いた。猫系美少年や鴉系美少年や無意識で不思議系美少年その他がいるのではないかと思った。

 否、男女差別だと言いたくなったが、男の鬼は昔ながらのスタイルだった。
 そして、目の前には溶かされた鉄が煮えたぎっている。響子は針の山に載せられ、鉄を流し込まれる恐怖に――


 ぱん、と音が鳴った。

「ほんと、警察官って商売あがったりなのよ」
 
 目の前には小兎姫。

「死んだ後に裁かれるとわかってれば、誰も犯罪なんて起こさないもの」


 小兎姫は気だるげに笑った。いつでも彼女には仕事がない、死後の世界を持つこの楽園では。












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