彼のことは僕が一番よく知っていますが ※未完
僕って結構、状況に影響されやすいタイプだ。
長谷津にいるとおおらかな気分になるし、ディズニーランドみたいなところに行くと楽しくなっちゃうし。
試合の時でも衣装を着るとやるぞって気になるし、新しく買った服を着ると足取り軽くなっちゃうし。
その日は、ヴィクトルに仕立ててもらったスーツを着ていて、ちょっと背筋が伸びた気分だったんだ。
「こんばんわ。失礼ですが、一緒にいらっしゃった方、フィギュアスケーターのニキフォロフ選手ですよね?」
タクシーを待つ間、コーヒーを買ってくるからとマイペースに歩いて行った彼のことをいやに丁寧な女性が訪ねてきた。
「そうですけど、何かご用ですか?」
つられて僕も丁寧に返す。
「私記者のエリーゼと申します。最近話題になったニキフォロフ選手の恋人についてご存知のことがあったら教えてくださいませんか?」
「