ジャンル:ユーリ!!! on ICE お題:愛と死の模倣犯 制限時間:15分 読者:170 人 文字数:1355字 お気に入り:0人

『愛と死の模倣犯』ヴィクトルと勇利


勇利に鼻を寄せた時ヴィクトルの片眉をあげさせたのは彼の一言。
「僕、バージンだよ」
責任をかぶせたいのか。気軽に彼をついばみたかったヴィクトルは
「キスもまだ?」
とまぜっかえす。彼の肉体の貞操を負いたいわけじゃない。
「・・・・・・どうだろう」
「したことあるね」
ヴィクトルは囁くと素早く勇利の唇に自分を押し付ける。
壁際に寄せられた勇利の体は柔らかく細く肩をあげそびやかす。
絞られた体同士、体格差は人種の違いだ。
二、三回乾いた唇を食むように押し付けるとヴィクトルは口を開け音を立てて勇利に入り口を開くよう促す。
犬のように唇を甘噛みしながら。
諦めたのか、勇利は彼の内臓をさらけ出した。
ぬるりと潤っている舌は同じような体温。
におう体臭は醤油のにおいがした気がする。
ヴィクトルは無遠慮に舌を突っ込んで勇利のうごめく舌も吸い出そうとする。

水音をわざと立てて勇利をかき回したあとヴィクトルは口を引く。

「・・・バージン、だって言ったのに・・・」
頬を上気させ、息を乱す彼のかくしどころを足で無遠慮に押すと素直な反応を示していた。

「ふふ、貞操なんて全然知ったこっちゃないって感じだね」
「やめてよ。ヴィクトル、このままだと僕の初めての人にあなたなっちゃうんだよ?」
「君の初恋は別のひとだろう」
「それでも」
「大丈夫だよ勇利」
「どうして」

ヴィクトルはにやにや笑って勇利の鼻を軽く噛んだ。今の自分からはひどい匂いがするだろう。
興奮した男の意地の悪い匂いだ。

(いつだって初めてする相手と相対するときはバージンに戻れるよ、君なら)

勇利は自分のバージンがヴィクトルを押しとどめ、或いは何かの圧力をかけられる材料として提示した。
自分の貞操に価値がある。そうどこか信じられる人間は、いつだって処女ぶれる。
いつでも自分の貞操、相手に与えた事のない肉体の価値を取引材料として出せるのだ。
もし彼が自分の肉体を喜びを以て受け入れることができたら。

ヴィクトルのやり方は勇利を踏みにじる。ヴィクトルは気づかない。このやり方では勇利は自分の肉体をただで切り捨てるようになるだろう。
貞操を尊重され敬われ心細かく扱われてこそかつての処女は永遠に処女の高慢を保てるのだ。

ヴィクトルは傷ついた安手の娼婦が自分を高く見せるための虚栄の作法をバージン・ボーイに植え付けようとしてる自分に気づかない。

勇利の肉体は彼の偶像ヴィクトル・ニキフォロフに開かれてなお処女でいるだろうか。

隠しどころを見せない大切な秘密を尊重する処女に。

そのふりだけを悲しく見せる少女娼婦でなく。

ヴィクトルは彼の失った貞操、見せかけの美しさの向こうにある踏みにじられた自己の再生ではなく破壊の模倣、無意識の報復に彼ヴィクトルを崇拝する成熟した肉体と幼い性経験をもつまだ成熟できない青年を使おうとしている。

彼らのバージンは共に踏みにじられ、そして無残な死をさらすだろう。

尊重のない喪失は再生を約束しない。ヴィクトルは彼を犯したものの形をとってそのものになったのだ。

勇利の肉体は開かれる。だが彼はヴィクトルを愛している。
可能性にわれらは賭けよう。
愛による奇跡の再生。復活に。

『愛と死の模倣犯』

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