ジャンル:おそ松さん【腐向け】 お題:勇敢な動揺 制限時間:30分 読者:228 人 文字数:2851字 お気に入り:0人

らしくない約束

(おそカラ)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 いつかわかるだろうと先延ばしにしていることが、積もり積もって、いつの間にかわからないことだらけになっている。
 理解したくないのかというとそういうわけではない。ただ、おそ松はその場で深刻に思案することは不得手であったし、そもそも思い悩む質でなかった。カラ松とは中学の頃から異質な関係を築いてきたけれども、わからぬことばかりだった。彼らは中学一年でキスをして、卒業前にセックスをした。卒業してから数日の頃、おそ松が何か焦燥感を得て、告白のようなものをした。自分らのことをどうにかしなければとふと思ってからは気になって仕方なく、そのときもカラ松が何を考えているのかわからぬまま、身勝手に告白をした。カラ松はちょっとの躊躇もなく頷いた。付き合わない? という軽々なおそ松の言葉に、ひどく嬉しそうに頷いたものだから、そのときおそ松は、カラ松が何を考えているのかさっぱりわからなかったけれどもすっきりとした心地になったのだ。
 お互いに恋愛関係であるという確認をしてから数年経ったけれども、おそ松は恋人のことについてわからぬ瞬間が多かった。率直に「お前何考えてるの」と聞いたところで、カラ松は言葉での説明が不得手で、満足な返答が得られぬというのを繰り返した。おそ松も単純であって、何か靄がかった事柄があっても、カラ松と身体を合わせてしまえばすぐに払拭された。カラ松が全身で、おそ松を好きだと叫んでいるのがわかるからだ。

     ◇

 将来のことを考えないのか。おそ松は日々暇であったので、そういうことを考えることもある。カラ松とそういった話をしたことはないし、たとえ切り出したとしても、理想的な話で終わるのだろうなとわかる。カラ松は夢見がちだ、おそ松も現実を見ないところがあるが、それ以上にファンタジックで平和な思考をしているような弟だった。家族が自分らの関係をどう思うかについて、一度話したことがあった。
「みんな理解してくれるさ、俺達のラヴは真実なんだから。」
「あ〜……まあ、なんだかんだ言って、勘当なんてこたあないと思うよ、俺も。でもなんか気味悪がられそう。」
「そうか? 別に、みんなは何も変わらなくていいんだぞ。」
「お前はそう言うけどねえ、そういうわけにいかないやつもいるでしょ。」
 カラ松はしばし思案する素振りをしてから、
「でも、俺たちだって、そんな変わらないだろう。ブラザーとしてだって愛しているのは事実。」
「はあ。」
「お前だけが少し特別ってだけさ。ほんの少し。」
「……はあ。」
 おそ松は曖昧に相槌を打った。たしかに、弟たちも親も大切で、愛しているのは確かであった。その中でカラ松だけが特別なのも。ただ、それが彼が思うように大したことではないのかというと、おそ松にはわからなかったし、そうして引っかかってしまうのも、胸がざわめいて居心地が悪くなった。カラ松が平気な顔をしているのに、おそ松は居てもたっても居られぬような気になった。言い表す言葉がうまく見つからなかった。とにかく、思っているよりも厄介なものを抱えているのだと自覚したときだった。

     ◇

 男同士は結婚ができないから、結婚するという選択肢がそもそもない。それを理由にして将来のことを決め兼ねているのかも知れぬ、と気がついたときに、おそ松は、もしも結婚ができるのならばするのだろうかと考えた。おそらくするだろう、けれども、どうして? もう、彼らはとっくに同じ籍に入っている家族であった。肉親で、これ以上近い関係はない。ただ気になるところといえば、おそ松にはカラ松以外にも弟がいるし、カラ松にも兄弟がいるということだ。その中でもお互いを特別だとするのであれば、結婚というのはうってつけである。
 そう考えたとき、おそ松はなんだか途方に暮れてしまった。婚姻を結べない自分らは、けれども肉親であり、かといって唯一ではない。他の弟たちに伴侶ができたとして、新たに籍を入れるとしても、自分は彼らにとって何よりも近い契約を結んでいるのは確かだ。では、カラ松と婚姻を結べぬことに関して、とても致命的なのではないのかと思うのだった。
 常より世間体に因われぬ彼らであったが、おそ松がこうも情緒不安なのは、何よりカラ松の考えがわからぬのが原因だった。カラ松はよくおそ松に対して愛の言葉を囁くし、身体を重ねるときには恋をしているような顔をするし、感極まって泣いて抱き返してくるときだってある。だが、彼らの間で未来の話はない。約束がなくとも永遠につながる血縁というものが間にあるとしても、ちっとも真剣な話をしてこないのを、おそ松は不思議であったし理不尽にも苛立った。自分だってそのような話は不得手であるのに、カラ松から切り出せば取り合うのに、と勝手な憤りを覚えるのだった。

     ◇

 身体を合わせた直後、荒く呼吸をしながらベッドに沈むカラ松が、おそ松を見ながら微笑んだ。
「き、気持ちよかったあ……ふふ……兄さん、愛してるぜ。」
 ピロートークで愛を囁くカラ松は、まさしく幸福に満ち満ちた顔をし、普段の格好付けがちっともないので、おそ松は心から歓喜して、我ながら柄でないと思うけれども頷きぎゅっと弟を抱きしめた。それから日頃不満を抱いていることが頭をもたげ始め、けれども自分から話すのもいやで、口ごもる。将来の約束をしたいなんて馬鹿げているし、約束なんかしなくとも自分らは永遠に一緒なのだと思う。それは言い聞かせているようにも自覚があり、困った。カラ松を一層強く抱きしめた。
「どうした……? ちょっと、苦しいぞ。」
 カラ松は笑った。苦しいくらい抱きしめてるなんて情けないと思いつつ、おそ松はなんだか感極まってやめられなかった。結婚して、とも、ずっと一緒にいて、とも言うのは躊躇われた。自分らにはそのようなことはふさわしくない、とおそ松は自負していたが、単に勇気がないだけなのだ。
 カラ松はちらと目を逸し、気まずそうにぼそりと呟いた。
「俺たち、いつまでブラザー……というか、延長線上、というか……」
 彼が何を言いよどんでいるのかわかるような、わからぬような、とにかく何か自分らが一歩未知の領域に進んだ気がして、おそ松は目を見開きカラ松を見た。途端に彼は動揺し、わたわたしながら、
「特別だろ、俺はそう、思ってる。違ったか? その、どうにか、パートナー…というか、その、そういうことができる区もあるらしいから。と、届け出を……」
 急に、おそ松の身体には熱いものがたぎり、思わずカラ松を力任せに抱き込んで、またもや「苦しいっ」と苦情を受けた。プロポーズとか約束とかいうものからはかけ離れているという自負があるから、これくらいでいいけれど、何よりカラ松から言われたことが嬉しい。泣きそうになりながら、あのさあ、と切り出した。(おしまい)

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