ジャンル:進撃の巨人 お題:見憶えのある風邪 制限時間:4時間 読者:807 人 文字数:3177字 お気に入り:0人
[削除]

病気付かず

 三日くらい徹夜して、風呂に入らずに私は泥のようにベッドに沈んだ。その次の朝のことだった。
 朝、目が覚めて、だるい体を無理矢理起こし、ブルブルっと体が震えた。
 ー今日は随分冷えているな。
 そう思いつつ、ベッドから降りた途端、ふらりと体が床に叩きつけられた。
 そういえば、と視界が曖昧なことに気付き、ベッドに置いてあった眼鏡を掛ける。視界が鮮明になり、よっこいしょ、と立ち上がる。が、思うように素早くは立てなかった。
 徹夜明けで調子が悪いのか?と思うが、それを無視して制服に着替え始める。

 ードンドンドンドン!
「分隊長、起きてますか?」
 ノックと共にドアからモブリットの声がした。
「起きてるよー!」 と、軽快に返すと、朝の挨拶と謝罪の声がした。
「おはようございます、分隊長。すみません、こんな朝早くに」
「いいよ、別に。私への用件を持ってきてくれたんだろ?」 と、資料を持ってドアの前に立っているであろうモブリットの姿を想像した。
「ご名答です。エルヴィン団長から報告書の提出と、来月までの壁外調査の大まかな計画を立てるので部屋にいつ来れるか、と」
 大まかな? ということはあまり精密な計画を立てる訳ではない、と。成る程、また私の意見を聞きたいようだ。
 しかし、いつ来れるか。
 エルヴィンは私が今日も書類仕事に追われていることを考慮してくれているらしい。
 ふ、と自分の机に目を向ける。山積みにされた書類は、昨日までに終わらせたものだった為、残りは朝食を抜くのなら昼までに終わる数だった。
「うーん、お昼過ぎって言っておいて」
「分かりました。では、昨日までに終わらせた書類の中に提出するものは?」
「ああ、あるよ。もう着替えたから、入ってきていいよー」
 そういうと律儀に「失礼します」と言ってから、モブリットが入ってきた。
 私は、山積みにされた書類を研究書、何かのリスト、ただのメモ書き、と分けながら提出する書類だけを抜き取る。
「はい、これが言ってた報告書。これは昨日モブリットが提出した書類で、もう判子押してるから。それと、これは今週新たに買った食料のリストで、これもエルヴィンに提出して」
「はい、分かりました。それと分隊長、これ兵士長からの書類で」
 そう言われながら、書類を受け取る。その書類に記されたのは、現在までわかってきた巨人についての情報整理と私自身の考察をまとめろ、というものだった。
「ふうむ、これまた時間がかかりそうな仕事を…」
 特に私自身の考察を字に書き記すとなると、言葉選びに時間が掛かるので、徹夜をを覚悟しなければならなかった。
 ーまあ、覚悟なんてしなくても、いつの間にか徹夜してるけど。
「…あの、分隊長」
「ん? なんだい?」
「その仕事、今日はやめた方がよろしいのでは?顔色が優れていませんよ」
 そう指摘されて、体が鉛のようにだるいを思い出して、そんなに顔色悪いのか、と一瞬自分の身を危惧したが、大したことではなかろう、と放置した。
「あぁ、大丈夫。そんな、どこかが痛いってことはないし」
 手をヒラヒラさせてそういうと、「そうですか…」とモブリットは半信半疑で呟くように返事をした。
 ーやれやれ、モブリットは心配性だな。
「では、私はこれで…失礼しました」
 ガチャン、と閉められたドアに踵を返してから、私は作業に入った。

 お昼過ぎ、予定通りリヴァイからの巨人報告書以外の書類仕事を終わらせ、エルヴィンの部屋に向かった。

「……大体、こんな感じだな。あとは、リヴァイ達と細かいところの予定を議論するか」
 トントン、と予定書をまとめながら、エルヴィンはそう言った。本当はエルヴィンだけでもできるミーティングに呼ばれたのは、巨人を研究している私の意見が必要だったからなのだった。
「ところで、ハンジ」
「なんだい?」
「随分と調子が悪そうだが…」
 エルヴィンのその言葉に、私は目を丸くする。
「おやおや、またそれを言われるとは。私、そんなに顔色が悪いかい?」
「あぁ…今日はもう一通りやってもらうべきことはやってもらったし、午後はゆっくりしていてくれ」
「ありがとう、そうさせて頂くよ」
 ーとは、いっても人類最強から、仕事を承っているんですけどね。


 カリカリ…とペンが紙に字を写していく音がなり響く。部屋に戻ってから、早速巨人報告書を書き上げていった。
 巨人についての情報はもうまとめたのだが、やはり中々自分の考察を文章にするのに時間が掛かる。
 言葉選びは勿論のこと、相手が読みやすいように書かなくては、再提出を食らってしまう。
「おい」
 それに、リヴァイはエレンのことがあるだろうから、巨人について私の意見を参考にするだろう。どこかで曖昧な表現にすると、誤った情報が伝達されるかもしれない。そんなことになってしまえば、エレン達の立場を危うくしてしまうかもしれない。
 ーそんなことは、ないだろうけど。
「おい」
 あいつとは気心知れた仲だし、私が言いたいことはこの部屋に散らばってる殴り書きのメモを見れば、一瞬で分かるだろう。しかし、これは報告書。誰が見ても読めて理解ができるような文にしなくては。
「っ!おい、クソメガネ!!」
「ふぇえ!?」
 ずっと机に向かっていてうつむいていた顔が、頬を掴んだ誰かの手で強制的に仰向けにされる。天井と共に見えたのはリヴァイの顔だった。
 ーあぁ、じゃあこの手はリヴァイの手か。
 そう状況を把握すると、リヴァイが私の額に手を当ててきた。
「…やっぱ、熱あんじゃねえか」
「えぇ?」
 ーえ、私、風邪ひいてたの?
 確かに、思い当たる節は幾つかあるが、ずっと無視していたので気がつかなかった。
「ったく、エルヴィンが言ったとおりだな」
 ーエルヴィン? あぁ、そういうこと。
 彼はエルヴィンに言われて、来てくれたらしい。と、いうことは私を看取ってくれるのだろう。私の部屋まで来たというのはそういうことだ。
「…リヴァイの手、ひんやりしてて気持ちいい」
「はっ、んじゃあこの手でお前の熱でも冷ましてやりたいもんだ」
 と、リヴァイがそういうとすぐさま私を抱き上げた。ご丁寧に、お姫様抱っこで。
「ちょ、リヴァイ! 私、自分で…」
「こんな部屋で寝て治るか。俺の部屋で看取ってやる」
 ーさりげなく、私の部屋をディスったな。
 そう思うも、思いの外疲れていたのか、私はリヴァイに抱かれたまま、寝入ってしまった。

 目が覚めると、私はリヴァイの部屋のベッドで体を沈ませていた。
 顔を少し横に向けると、リヴァイが私に背を向けて何やら水の入った桶にタオルを入れて絞っていた。
 ーあれ、なんかこの光景、前にも見た気が…。
 あぁ、そうだ。前にも私、風邪ひいてリヴァイに看取ってもらったんだ。
 あの時は、確か…壁外調査で巨人に吹っ飛ばされて池に落ちたのが原因だったような。
「起きたか」
 前のことを思い出していたら、リヴァイが私の額に絞ったタオルをおいた。
「うん、まあ」
「そうか」
「…ねぇ、リヴァイ。私さ、前も貴方に看取られた気がしたんだけど」
「あぁ、巨人の攻撃で池に落ちて、そのあと壁に帰るまでずっと風邪ひいてるのに気づかなかったな、お前」
「えっ、そうなの!?」
「おう、それまでずっと平気平気って言ってたのによ、壁に入った途端倒れて、モブリットが泣き叫んでたな」
「えぇ~…覚えてないなぁ」
 ーううむ…自分で自分の体調に気付かないとは、これ兵士失格じゃね?
「ったく、自分を無視するのも大概にしろ」
 そう言って、ポンポンと私の頭をリヴァイは撫でた。
「…貴方って、こういうときだけ優しいのね」



同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:ちくわぶ@就活楽しいです ジャンル:進撃の巨人 お題:穏やかな医者 制限時間:4時間 読者:1307 人 文字数:2944字 お気に入り:0人
死んだ方がマシ、という言葉がある。幸いなことに僕自身がこういった感情に囚われたことはない。あのシガンシナの地獄でだって、第一には死にたくない、生きたいという考 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:桜梅桃李†臨焼け読了 ジャンル:進撃の巨人 お題:静かな壁 制限時間:4時間 読者:4975 人 文字数:1250字 お気に入り:0人
エレミカです。途中からワケわかんなくなってる...ギャーー!!満月の夜。ミカサは何者かの気配を感じていた。一応は熟睡と呼べる程に寝入っていた午前2時。自室の付近 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
※現パロ ※未完
作者:あおゆ ジャンル:進撃の巨人 お題:肌寒い悲劇 制限時間:4時間 読者:1014 人 文字数:462字 お気に入り:0人
この世界には空白の歴史がある。エレンがそのことを知ったのは退屈だと感じていた歴史の授業の時だった。黒板の前に立って教科書を片手にそう話す教師は、いつものやる気の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まひひ ジャンル:進撃の巨人 お題:漆黒の闇に包まれし慰め 制限時間:4時間 読者:1552 人 文字数:3794字 お気に入り:0人
※童話パロエレリ(リヴァエレ風味)あだちさんの星飼いエレン設定を一部流用させて頂いていますこれは、北極星の少年と、その星に恋をしてしまったある愚かな青年のお話。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まひひ ジャンル:進撃の巨人 お題:生かされた動揺 制限時間:4時間 読者:1349 人 文字数:1805字 お気に入り:0人
どうしても寒い冬の日は、こうやって2人で毛布にくるまって微睡む。それを最初に提案してきたのはユミルの方だった。クリスタはちっちゃくてあったかそうだから湯たんぽに 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:秋← ジャンル:進撃の巨人 お題:あいつと狐 制限時間:4時間 読者:1306 人 文字数:2890字 お気に入り:1人
犬に似ていると、言われたことがあった。会話に突然巻き込まれた形だったから、ろくな返事もできなかった上に、色々なことがあった今となっては誰が言ったのかも思い出せ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:しま ジャンル:進撃の巨人 お題:突然の「えいっ!」 制限時間:4時間 読者:1228 人 文字数:3370字 お気に入り:0人
(現代パロディでルームシェアしてる山奥組)最近気づいた事がある。リビングの中央にでんと置かれた特大サイズのソファベッドに半ば埋もれるようにしてちょこんと座った小 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:しま ジャンル:進撃の巨人 お題:過去の霧雨 制限時間:4時間 読者:1076 人 文字数:2146字 お気に入り:0人
(神経質ベルトルト)空中で、身体を水平に保つ事は思ったよりも難しかった。増して支えとなるのはワイヤーとベルトのみだ。立体機動装置を装着すれば、重力の抵抗が軽くな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:しま ジャンル:進撃の巨人 お題:昔の狐 制限時間:4時間 読者:4386 人 文字数:2852字 お気に入り:0人
(甘い匂いのするベルトルトの話)壁にもたれて座りこみ、立てた膝の間に本を置いて少年は羅列された文字を目で追う事に集中していた。読み慣れた独創的な物語はもう三度読 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:はるの ジャンル:進撃の巨人 お題:暗黒の奈落 制限時間:4時間 読者:1956 人 文字数:3817字 お気に入り:0人
※夢です 女の子同士の話題で、一番盛り上がるのは恋愛トーク、所謂「恋バナ」というやつだ。わたしも成人を迎えているのだし、経験がないとしらばっくれることもできない 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 二次小説


ユーザーアイコン
甘庶(1%未完) ※未完
作者:匿名さん ジャンル:真・三國無双 お題:僕の好きな略奪 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:506字 お気に入り:0人
敗者の物は勝者の物。湖賊だった頃から、甘寧にとってそれが常識だった。いくさに勝てば、相手の財産を奪うのは当然のことで。だから今回だって、大敗した曹操軍の物は何だ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:遊戯王ARC-V お題:薄汚いパソコン 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:443字 お気に入り:0人
※ユーゴとリン。過去話。ユーゴがDホイールの調整に使うパソコンは、彼とリンが一から作り上げたものだ。モニターやキーワードは闇市で購入、細かい部品は少しずつ貯めて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:僕のヒーローアカデミア お題:フニャフニャの宿命 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:1110字 お気に入り:0人
どうしても、映える個性というのは差があるものだ。華やかなヒーローを目指す者が大多数の世の中で。思想や、スタイルがフニャフニャと定まらない者と言うのは。つまはじき 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:バチ官 お題:過去の恋人 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:829字 お気に入り:0人
それはゆきずりだった。雨がしとしとと降っている。部屋の中からガラス越しに薄暗い、灰色の世界を眺めながら、平賀は頬杖をつく。「なんだい、浮かない顔をして」カフ○ラ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:バチ官 お題:ダイナミックな超能力 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:748字 お気に入り:0人
平賀は飢えていた。物理的にお腹が空いている。彼にさてどれだけ基本的欲求が備わっているのか、あるいは感じているのかは不明だが、稀有なことに彼はおなかがすいてどうに 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 お題:捨てられた本 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:705字 お気に入り:0人
うちの本丸の中には、小さいが書物の保管庫がある。刀剣男士や審神者の私物であったり、政府から送られてきた必読のものであったり、様々な時代のものが一部屋に収められて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 お題:とびだせ笑顔 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:677字 お気に入り:0人
「あるじさま。なんだか、むつかしいのですか」私の顔を覗き込むあどけない姿は、今日の近侍の今剣だ。真紅のおおきな瞳でじっと見つめられると、一瞬何を悩んでいたのか忘 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 お題:裏切りの小説合宿 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:712字 お気に入り:0人
「だからなんなのよーーー!もぉーー」こんのすけが定期的に運んでくる、政府からの諸連絡帳を開いて、未読の記事を目にした途端、割と大きな声を出してしまった。小説を書 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:スタァライト お題:穏やかな博物館 制限時間:30分 読者:14 人 文字数:938字 お気に入り:0人
「博物館ってなかなか来ないから新鮮だなぁ」「私はイギリスの頃、何回か……」「イギリスでも行ってたんだねー日本とは違うの?」 なんて話ながら今日はひかりちゃんと二 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:終わりのセラフ お題:忘れたい過ち 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:746字 お気に入り:0人
「昔のグレンは可愛い」いきなり深夜がそう言った周りの暮人も真昼もうんうんと頷く「は?」どういう意味だコラ怒りが口が吹き出そうになるのを抑える「だってだって、可愛 〈続きを読む〉