ジャンル:進撃の巨人 お題:見憶えのある風邪 制限時間:4時間 読者:431 人 文字数:3177字 お気に入り:0人
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病気付かず

 三日くらい徹夜して、風呂に入らずに私は泥のようにベッドに沈んだ。その次の朝のことだった。
 朝、目が覚めて、だるい体を無理矢理起こし、ブルブルっと体が震えた。
 ー今日は随分冷えているな。
 そう思いつつ、ベッドから降りた途端、ふらりと体が床に叩きつけられた。
 そういえば、と視界が曖昧なことに気付き、ベッドに置いてあった眼鏡を掛ける。視界が鮮明になり、よっこいしょ、と立ち上がる。が、思うように素早くは立てなかった。
 徹夜明けで調子が悪いのか?と思うが、それを無視して制服に着替え始める。

 ードンドンドンドン!
「分隊長、起きてますか?」
 ノックと共にドアからモブリットの声がした。
「起きてるよー!」 と、軽快に返すと、朝の挨拶と謝罪の声がした。
「おはようございます、分隊長。すみません、こんな朝早くに」
「いいよ、別に。私への用件を持ってきてくれたんだろ?」 と、資料を持ってドアの前に立っているであろうモブリットの姿を想像した。
「ご名答です。エルヴィン団長から報告書の提出と、来月までの壁外調査の大まかな計画を立てるので部屋にいつ来れるか、と」
 大まかな? ということはあまり精密な計画を立てる訳ではない、と。成る程、また私の意見を聞きたいようだ。
 しかし、いつ来れるか。
 エルヴィンは私が今日も書類仕事に追われていることを考慮してくれているらしい。
 ふ、と自分の机に目を向ける。山積みにされた書類は、昨日までに終わらせたものだった為、残りは朝食を抜くのなら昼までに終わる数だった。
「うーん、お昼過ぎって言っておいて」
「分かりました。では、昨日までに終わらせた書類の中に提出するものは?」
「ああ、あるよ。もう着替えたから、入ってきていいよー」
 そういうと律儀に「失礼します」と言ってから、モブリットが入ってきた。
 私は、山積みにされた書類を研究書、何かのリスト、ただのメモ書き、と分けながら提出する書類だけを抜き取る。
「はい、これが言ってた報告書。これは昨日モブリットが提出した書類で、もう判子押してるから。それと、これは今週新たに買った食料のリストで、これもエルヴィンに提出して」
「はい、分かりました。それと分隊長、これ兵士長からの書類で」
 そう言われながら、書類を受け取る。その書類に記されたのは、現在までわかってきた巨人についての情報整理と私自身の考察をまとめろ、というものだった。
「ふうむ、これまた時間がかかりそうな仕事を…」
 特に私自身の考察を字に書き記すとなると、言葉選びに時間が掛かるので、徹夜をを覚悟しなければならなかった。
 ーまあ、覚悟なんてしなくても、いつの間にか徹夜してるけど。
「…あの、分隊長」
「ん? なんだい?」
「その仕事、今日はやめた方がよろしいのでは?顔色が優れていませんよ」
 そう指摘されて、体が鉛のようにだるいを思い出して、そんなに顔色悪いのか、と一瞬自分の身を危惧したが、大したことではなかろう、と放置した。
「あぁ、大丈夫。そんな、どこかが痛いってことはないし」
 手をヒラヒラさせてそういうと、「そうですか…」とモブリットは半信半疑で呟くように返事をした。
 ーやれやれ、モブリットは心配性だな。
「では、私はこれで…失礼しました」
 ガチャン、と閉められたドアに踵を返してから、私は作業に入った。

 お昼過ぎ、予定通りリヴァイからの巨人報告書以外の書類仕事を終わらせ、エルヴィンの部屋に向かった。

「……大体、こんな感じだな。あとは、リヴァイ達と細かいところの予定を議論するか」
 トントン、と予定書をまとめながら、エルヴィンはそう言った。本当はエルヴィンだけでもできるミーティングに呼ばれたのは、巨人を研究している私の意見が必要だったからなのだった。
「ところで、ハンジ」
「なんだい?」
「随分と調子が悪そうだが…」
 エルヴィンのその言葉に、私は目を丸くする。
「おやおや、またそれを言われるとは。私、そんなに顔色が悪いかい?」
「あぁ…今日はもう一通りやってもらうべきことはやってもらったし、午後はゆっくりしていてくれ」
「ありがとう、そうさせて頂くよ」
 ーとは、いっても人類最強から、仕事を承っているんですけどね。


 カリカリ…とペンが紙に字を写していく音がなり響く。部屋に戻ってから、早速巨人報告書を書き上げていった。
 巨人についての情報はもうまとめたのだが、やはり中々自分の考察を文章にするのに時間が掛かる。
 言葉選びは勿論のこと、相手が読みやすいように書かなくては、再提出を食らってしまう。
「おい」
 それに、リヴァイはエレンのことがあるだろうから、巨人について私の意見を参考にするだろう。どこかで曖昧な表現にすると、誤った情報が伝達されるかもしれない。そんなことになってしまえば、エレン達の立場を危うくしてしまうかもしれない。
 ーそんなことは、ないだろうけど。
「おい」
 あいつとは気心知れた仲だし、私が言いたいことはこの部屋に散らばってる殴り書きのメモを見れば、一瞬で分かるだろう。しかし、これは報告書。誰が見ても読めて理解ができるような文にしなくては。
「っ!おい、クソメガネ!!」
「ふぇえ!?」
 ずっと机に向かっていてうつむいていた顔が、頬を掴んだ誰かの手で強制的に仰向けにされる。天井と共に見えたのはリヴァイの顔だった。
 ーあぁ、じゃあこの手はリヴァイの手か。
 そう状況を把握すると、リヴァイが私の額に手を当ててきた。
「…やっぱ、熱あんじゃねえか」
「えぇ?」
 ーえ、私、風邪ひいてたの?
 確かに、思い当たる節は幾つかあるが、ずっと無視していたので気がつかなかった。
「ったく、エルヴィンが言ったとおりだな」
 ーエルヴィン? あぁ、そういうこと。
 彼はエルヴィンに言われて、来てくれたらしい。と、いうことは私を看取ってくれるのだろう。私の部屋まで来たというのはそういうことだ。
「…リヴァイの手、ひんやりしてて気持ちいい」
「はっ、んじゃあこの手でお前の熱でも冷ましてやりたいもんだ」
 と、リヴァイがそういうとすぐさま私を抱き上げた。ご丁寧に、お姫様抱っこで。
「ちょ、リヴァイ! 私、自分で…」
「こんな部屋で寝て治るか。俺の部屋で看取ってやる」
 ーさりげなく、私の部屋をディスったな。
 そう思うも、思いの外疲れていたのか、私はリヴァイに抱かれたまま、寝入ってしまった。

 目が覚めると、私はリヴァイの部屋のベッドで体を沈ませていた。
 顔を少し横に向けると、リヴァイが私に背を向けて何やら水の入った桶にタオルを入れて絞っていた。
 ーあれ、なんかこの光景、前にも見た気が…。
 あぁ、そうだ。前にも私、風邪ひいてリヴァイに看取ってもらったんだ。
 あの時は、確か…壁外調査で巨人に吹っ飛ばされて池に落ちたのが原因だったような。
「起きたか」
 前のことを思い出していたら、リヴァイが私の額に絞ったタオルをおいた。
「うん、まあ」
「そうか」
「…ねぇ、リヴァイ。私さ、前も貴方に看取られた気がしたんだけど」
「あぁ、巨人の攻撃で池に落ちて、そのあと壁に帰るまでずっと風邪ひいてるのに気づかなかったな、お前」
「えっ、そうなの!?」
「おう、それまでずっと平気平気って言ってたのによ、壁に入った途端倒れて、モブリットが泣き叫んでたな」
「えぇ~…覚えてないなぁ」
 ーううむ…自分で自分の体調に気付かないとは、これ兵士失格じゃね?
「ったく、自分を無視するのも大概にしろ」
 そう言って、ポンポンと私の頭をリヴァイは撫でた。
「…貴方って、こういうときだけ優しいのね」



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