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鮫イタ

 部屋の明かりをつけなくともいいと鬼鮫に言ったのはイタチだった。窓際で月明かりを拾いながら本を読んでいたイタチが、自分と同じく淡い紫に染めた爪で、最後のページをめくり終えて本を閉じた。
 どうでしたかと鬼鮫は静かな声で訊ねた。イタチは感想を述べる前に、お前はこういうものをよく読むのかと問いかけてきた。
「いえ、私も人から貰ったものなので」
 赤い目が自分をまっすぐに見つめてくるのを鬼鮫は妙に意識した。自分に本を渡してきた人間のことを詮索しないイタチは、あるいはすでに気づいているのではないかと、鬼鮫は埒もない想像をした。
 マダラはイタチが宿を離れていた昼間にやってきた。面を外した男は暇をもてあましているのであれば読んではどうかと、鬼鮫に一冊の本を差し出してきた。表紙の左端と小口に黒い染みがあり、血であるらしいと鬼鮫は気づいたが、そのことを特に取り立てて口にすることはしなかった。
「………」
 眠りたいと述べたイタチを、鬼鮫は布団の中へ招いた。結局本の感想を聞くことはできなかった。
 細い体を抱いて眠ろうとした鬼鮫は、眠る前に読むにはあまりにもむなしい中身の本だったと考えた。本に引き寄せられて悪い夢をみても、イタチは仕方がなかったと考えるだけで、文句を言ってきたりはしないだろう。
 明日の朝にでもあの本を燃やしてしまおうと鬼鮫は思った。

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