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鮫イタ

 うずくまった男が畳の上におびただしい量の血を吐いたのを見て、部屋の端で震えていた女が悲鳴を上げた。男を見下ろしていた鬼鮫がつと目を動かして視線を向けると、女は長い髪を振り乱して身を縮めて、命乞いを繰り返した。
 殺さないでくれと泣き叫ぶ若い女の声を聞きながら、鬼鮫はふと別の部屋へ向かったイタチのことを考えた。イタチであれば現実ではできないほど長い時間苦しめることができるのだろうと、自分にはできないそうした技術をひそかに羨んだ。
 大名の縁者だという男は、若い娘を攫ってきては手篭めにしていたのだという。そうした話は珍しくなかったが、嬲られたすえに自ら命を断った娘の親が復讐を望み、自分たちのような人間を頼ってきたという話はあまりきいたことがなかった。金を受けとった鬼鮫は、壮年の男に自分たちは依頼をこなすことはできるが、そのあとで大名が刺客を差し向けてきても面倒をみることはできないと伝えた。壮年の男は落ち着いた様子で、そうしたことは承知していると応えた。芯のある声を聞いてから、鬼鮫たちは大名の縁者だという男の屋敷へ赴いた。
 鬼鮫は術などは使わずに、自らの拳や脚を使って男を痛めつけていた。幾度となく殴りつけ蹴りつけているうちに、男は詫びの言葉を口にするようになり、やがて頼むから命ばかりは見逃してくれと呻くようになった。
 生まれ持った権力を濫用する愉しみを覚えた人間が、弱いものを思いやるようなまっとうな心を持つはずがないと鬼鮫は決めつけていた。見逃してやるつもりはまったくなかったが、ときおり鬼鮫は男の言葉に耳を傾けているような態度をとった。希望がもてるのではないかと男が顔を上げたところで、鬼鮫は青黒い痣をつくった顔に拳を叩きつけた。
 まだ死なせるつもりはない。ただそろそろより手加減をしなければ、誤って早くに殺してしまうかもしれない。そういうことを考えていた矢先だった。
「鬼鮫」
 ふっと意識が男からそれた直後、肉に鋭い刃が突き刺さる音がした。目を戻した鬼鮫の前で、男はすでに事切れていた。
 長く吐息をついた鬼鮫は体ごと部屋の入口のほうを向いた。佇んでいるイタチは赤い瞳で室内を眺めてから、鬼鮫に静かな目を据えた。
 部屋の隅で震えていた女が声を上げた。床まで流れている長い髪と、乱れた着物の裾からのぞく細い足首を見た鬼鮫は、欲とは程遠い厭世の思いが胸をかすめたのを感じた。
 女が両手で顔を覆っているのを見た鬼鮫は、女に背を向けてゆっくりとしたイタチに近づいた。てのひらの血を外套で拭ってから、黒い髪のかかる頬にふれた。何か言いたげな目で自分を見つめるイタチの眼差しを知っていて、鬼鮫は身をかがめて顔を近づけた。
 イタチが男にとどめを刺したのは、男のためではなく自分のことを思ったからだと、鬼鮫はきちんと理解していた。イタチの自分への心遣いを嫌がる気持ちはなかったが、相手が相手であるために、かえって傷口が痛むこともあるのだと鬼鮫は思った。
 鬼鮫は部屋の隅で震えている女と、まっすぐな眸で自分を見つめるイタチの顔を脳裏に思い浮かべた。そうして起ってしまったことはどうあっても変えようがないのだと理解して、魔術のような業がなければ、こうした痛みから逃れることは出来ないのだろうと鬼鮫は思った。
 重ねた唇はやわらかく、吐息は湿っていた。自分の傷口をいたわろうとするその手も、すでに傷だらけであり血を流し続けていた。イタチからの気遣いを受けるたびに、イタチから遠ざかってしまう自分はどうあってもイタチの側にいられないのだろうと鬼鮫は思った。

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