ジャンル:モアナと伝説の海 お題:アブノーマルな失敗 制限時間:30分 読者:212 人 文字数:1277字 お気に入り:0人

【マウモア】奪い攫う魂

人としての生は余りにも短すぎ、半神としての生は終わりが全く見えなかった。
半人半神であるこの体は人間より長生きで丈夫であるのと引き換えに数多の御霊が天に昇るのを見送る。兎角悲しみは感じない。これが人間の暮らしで世界なのだと漠然と受け止めていた。
そんな中、あるきっかけで大勢の人間の中の一人ではなく過ごす時間が長くなるにつれ一人の人間として認識する人間の少女と出会った。
体に刻まれるタトゥーにもなったその少女はとても勇気があり明朗で時折年相応の態度を見せる愛らしい人間の子だった。
その少女が大人になり、伴侶を貰い、子を授かり、天寿を全うする。そんな人間の暮らしでは幸福に位置する人生を歩む少女は終始幸せに満ち。たまに暗礁に乗り上げようが沈むことなく海を渡るその光景は見ていて微笑ましく心があたたかくなる。

はずであるべきだった。

まず彼女の御霊を一度見送った。
気が遠くなるような時の中、幾重にも見てきた光景であったのに胸に違和感を覚えた。相棒も同じなのか自身の胸に手を置き頭を捻るがとんと答えは出てこなかった。
相棒のすぐ近く少女のタトゥーを見れば胸の違和感は消えた。

徐々に人間達の暮らしが変わってきた。
自然とは違う力が生活の一部に加わり、行動する範囲や人間だけで行える範囲が増えた。
だが、人間は自然に対して敬う心を忘れず日々感謝の気持ちを祈り続けていた。
変わり始めた生活に人間達も慣れ始めた時、あの少女の魂を持つ子を見付けた。
海も風も彼女の魂が世界に帰還したことを喜んだ。無論、半人半神である己自身も喜び祝福した。これから先、どんな困難が訪れようとも乗り切れる子になるようにと。
その直後、二度目の彼女の御霊を見送った。
流行り病に臥せ亡くなったというが違う。あれは性質の悪い魔物が呪いを掛け、その御霊を喰らおうとしたからだ。
人間達には分からない。それが分からないから病の所為だとむせび泣いた。
俺は彼女の御霊を捉え喰らおうとした魔物を殺した。たまの昔話をする相手が一人減ったが然程気にすることではない。
胸の違和感は痛みを伴い、彼女のタトゥーを見ても痛みは引くどころかその痛みを増した。



自然主体の暮らしは廃り、無機物がそこら中に蔓延する暮しが当たり前の世界となった。
人間達の生活は随分と様変わりし、快適さ豊かさを得た対価として自然を敬う心を失ってしまった。
空気は澱み、海の水も濁った。体の節々が軋み以前みたく身軽に動けなくなっている気がする。釣り針はまだ扱え、鷹になって人間達の世界を見回ったが誰一人此方に気付く気配は無かった。
石造りの高い塔が立ち並ぶ世界でまた彼女を見付けた。冷たい世界でも彼女は変わらず輝いていてあたたかであった。
無垢な瞳に映る世界は汚らしいどころか全てが輝いて見えるといわんばかりに輝いている。こんな穢れた世界でなお、穢れず清らかな心を魂を持つ彼女。
嗚呼、もう無理だ。また彼女を見送ってしまったら正気でいられる自信がない。
嗚呼、ああ、アア……。




俺はモアナを、その手を、……。

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