ジャンル:弱虫ペダル お題:来年の女 制限時間:1時間 読者:167 人 文字数:1824字 お気に入り:1人

【真東】落ちていく。

俺は、彼を見る度にこう思った。
「東堂さんが俺のモノにならないのか」「俺『だけ』を見るようにならないか」
こんな感情は救いようもない程に身勝手だった。
________何を隠そう、東堂さんは総北高校の巻島さんと恋人関係なのだから。部内ではもう周知の事だ。
東堂さんの幸せを願おうなんて頭ん中で綺麗事を並べ立てても、俺の薄汚い感情は俺の心に宿ったままだった。
皆から慕われ尊敬される東堂さんを妄想で穢すのは気分の良いことではない。
寧ろ罪悪感と自分に対する嫌悪で押しつぶされそうな位だ。


それでも彼を穢すことを、俺はやめられなかった。



(やっばいや………部室しまっちゃってるよなあ…参ったな)
今日は8時まで山に登ると決めたのにうっかり飲みかけのボトルを忘れてしまったのだ。
もう1時間もない。小走りで部室に向かった。
部室前につくと、今日は珍しく部活が早く終わったので部室の周辺には人一人居なかった。
明かりももうどこもついていなかった。
…と思ったが、ロッカールームだけ薄暗い明かりが付いていた。
(福富さんとかが日誌つけてたりするのかなあ)
ドアは……………鍵が開いているようだ。
人影が見えた。その影は……………東堂さんだった。
部活が終わってまで東堂さんに会えるなんて願ってもなかったことだ。
自然と顔がほころぶ。
(そうだ、東堂さんをびっくりさせよう‼︎)
ゆっくりと音が出ないように開けよう。スリーピング真波‼︎‼︎なんちゃって。えへ。
そ~っとドアを開ける。東堂さんの驚いた顔を期待して。


________俺の目に映ったのは、驚いた顔でもなく、怒った顔でもなかった。ただ俺が見たことのない表情を浮かべる東堂さんだった。

力なく項垂れる東堂さんがそこに居た。
ゆっくりと顔を此方に向けた。その瞬間、その一瞬で表情が変わった。
笑っている、ように見えるだろう。普通の人には。
でも俺にはすぐに分かった。
ただ笑顔の仮面を貼り付けているだけだ。…無理してる。
俺の前では素でいて欲しいのに。
「ああ…真波か。どうした?んん??さてはお前、忘れ物しただろう‼︎‼︎」
「ええ…そうですよ。」
自分のロッカーからボトルをとりカバンにしまった。
「もう帰るといい。遅いからな、7時23分だぞ‼︎親御さんが心配する。」
…東堂さんは俺が気付いてないとでも思ってるのだろうか。そんなの……

「帰れる訳ないじゃないですか。何で泣いているんですか」
「…泣いてなどおらんよ。だから早く…」
「俺には分かりますよ東堂さん。俺ずっと東堂さんを見てきましたから。巻島さんなんかより絶対東堂さんのこと理解してるし。」

『巻島さん』という言葉に明らかに顔を曇らせた。自身がその表情になっているのに気付いて表情を作り直そうとするが無理そうだ。
(これは間違いない。巻島さん関係かな…)
別れたならいいな、と黒い部分が顔をだす。
「巻島さんですね。話してください。」

苦しそうに言葉を紡ぎ始めた。
「……先程電話があってな。巻ちゃん…イギリスに行くそうだ。一年以上は戻ってきそうにない…」
涙をこぼして自身が置かれた状況に絶望しているようだ。
ああ…羨ましい。これだけ東堂さんの心を奪えるのが羨ましい。______憎い。
散々心奪っておきながら東堂さんを悲しませるなんて。
俺だったら…俺だったら………。
「許せません」
「え?」
押さえ込もうとしたがもう想いが溢れ出て止まらなかった。
「俺だったら、そんな思いさせません。…絶対。東堂さんを幸せにします。買い物もロードも東堂さんが言うならずっと付き合います。最初は巻島さんの代わりっていうだけでもいいです。なんなら、巻島さんが日本に帰って来たら一思いに捨ててくれても構いません。だから、俺が一緒に居ていいですか。」
驚いたあと東堂さんは深く考え込んだ。
「…まだ、巻ちゃんに心が傾いてるぞ。もしかしたらお前を好きになれないかもしれないぞ。」
「それでも構いません。」
「そうか……俺、お前に依存してしまうかもな……。お前のその優しさに。深く深く落ちていきそうだな」
東堂さんは微笑んだあとそういい放った。
いいんですよ。依存して。
俺以外誰も頼れなくなって、俺が居ないと駄目人間になっちゃえばいいんだ。
「大好きです。東堂さん末長く、よろしくお願いしますね。」
今更誰にも渡してやんないよ?

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