ジャンル:アイドリッシュセブン お題:僕とあいつ 制限時間:30分 読者:138 人 文字数:1131字 お気に入り:0人

スプーンひとつで

※いおてん


 あの子のことは――和泉一織という少年のことは、あまり好きじゃないはずだった。
 ことあるごとに突っかかってきて、何かあると口を出してきて、まるで重箱の隅をつつくみたいにあれやこれやと文句を言ってくる、そんな年下のおじゃま虫。ひと言で表すならば鬱陶しい、それが相応しかったと思う。
 何より和泉一織は、ボクがつよくつよく欲している立ち位置を、「陸のとなり」を得ている子。今の陸には彼がいる。和泉一織という少年がいてくれるから、きっとあの子は何倍も、ボクが知る七瀬陸よりもまばゆく在れているのだろう。
 だからこれは嫉妬なのだ、きっと。ボクはあの子に嫉妬している。喉から手が出るほど欲しかったもの、いたかった場所、手放したくなかった宝物、それらを手にしている彼が、羨ましくて、仕方ない。
 ――そう思っていたはずだった。それだけのもので、この汚い気持ちすらおのれを磨く糧として。以上も以下もないただの「嫉妬」で済ませておけばよかった。
 それなのに。
「どうして――いつから、こんなことになったのかな」
 いつの間にか、彼をひどく恋しいと思ってしまっている自分がいる。和泉一織という個人に対するこの想いは先輩としてのものでなく、きっと嫉妬や羨望よりも後ろめたくて穢らわしい。人としての道すら踏み外しているように思える。彼が「彼」でなく「彼女」ならまだ許されるものであったかもしれないけれど、現実はボクが思うよりも非情で無情で残酷だ。
 同性で、アイドルで、ライバルで、年下で。高すぎる壁を前にして、ボクの心はまるで覗き穴でも欲しているよう。否、ただのヒビ割れでもいい、少しの歪みがあればいい。そこから少しこじ開けて、せめてこの手が伸ばせれば。
 ――伸ばせれば、どうなるの。おのれのなかに生まれた浅ましい欲求に、どうにも重苦しいため息が漏れる。
 彼がこちらを振り向くとでも思っている? 彼にも自分と同じように、この腹の底に溜まり続ける鉛のような気持ちを抱えろと? それこそ馬鹿らしい話だ、曲がりなりにも好意を寄せる相手にわざわざ苦しめというつもりはないし、現実問題一蹴されて終わりだろう。むしろ相手にしてくれれば御の字というところではないのか、嫌悪を隠さず避けられてはアイドルどころか人としても終わったようなものなのだから。
 ――恥ずかしい話。こんなふうに、誰かに嫌われることを恐れる日が来るなんて。陸以外の赤の他人から受ける拒絶、明確な嫌悪、おのれを蝕む負の感情を、受け入れるでなく怖がる自分がなんだかひどく滑稽だった。
 取り付く島もないような、けれどどこか隙が多い、「完璧」を手にする高校生。彼に乱されるこの胸中が、この頃ひどく恨めしい。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:左の私 制限時間:30分 読者:15 人 文字数:1643字 お気に入り:0人
指定席。僕がここにいていいのだという、印。現実にはそんな便利なものはなくて、いつでも探し回っている気がした。気が付けば、案外思いもかけずに手にしているのに。「壮 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:苦し紛れの国 制限時間:30分 読者:16 人 文字数:1533字 お気に入り:0人
まさか、こうして酒を酌み交わすことになるとは思わなかったけど、それは俺にとってとても、嬉しいことで。…そして、何より。「本当に、お礼が言えるようになって嬉しいよ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:記憶の粉雪 制限時間:30分 読者:19 人 文字数:1331字 お気に入り:0人
ほとんど、後ろ姿しか見ていなかった気がする。あとは、ゆっくりと語る母親の口調。後から見る、姿。俺が直接見たものは、自分の心境のおかげか、断片的なものでしかない。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:強い別居 制限時間:30分 読者:22 人 文字数:1528字 お気に入り:0人
たくさんの煽り文句で、俺は形容されてきた。ただ、それはあくまでも作られた俺へのものであって。本来の、素のままの俺に付ける煽り文句としたら…何があるんだろうか。「 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:失敗の熱帯魚 制限時間:30分 読者:17 人 文字数:1434字 お気に入り:0人
ぼーっと何を見るわけでもなくチャンネルを送り、ソファでくつろぐ。のんびりするのがオフの過ごし方ってなもんで、基本は何もしないに限る。ビールの時間には早すぎる(と 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:未熟なわずらい 制限時間:30分 読者:18 人 文字数:1602字 お気に入り:0人
子ども扱いされているのは十分わかっているけれど。頑張って背伸びしても、相手はどんどんと先に行ってしまうから。子供みたいに我がまま言って、引き留めるくらいしか、な 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:悔しい男 制限時間:30分 読者:19 人 文字数:1439字 お気に入り:0人
夢に見たものが、寸前で途切れる瞬間を見た。暗闇に投げうたれた俺は、その暗闇の中でまだ光り輝く何かを求めて、必死にもがいていた気がする。「よし。あとはスケジュール 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:宿命のもこもこ 制限時間:30分 読者:20 人 文字数:1358字 お気に入り:0人
正直、他人と関わるのは好きじゃない。自分の好きなように解釈して、すり寄ってきたり、怒ったり、泣いたり。僕がしたいことを阻害していく他人は、僕にとって邪魔にしかな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:希望の交わり 制限時間:30分 読者:22 人 文字数:1541字 お気に入り:0人
猪突猛進だって、昔からよく言われていた。でも、オレはあの時の決断を後悔なんてしていないし、今こうして見ている景色は、あの時の決断がなければ絶対なかったものだから 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まき ジャンル:アイドリッシュセブン お題:あいつの笑顔 制限時間:30分 読者:23 人 文字数:1832字 お気に入り:0人
皆さんを支えるのが、私のお仕事です。けれど、私は皆さんに支えられてばっかりで…。きちんと、皆さんに頼っていただける、一人前のマネージャーになりたいんです。「おは 〈続きを読む〉

ネップリしてるタイプのあけうちの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:ネップリしてるタイプのあけうち ジャンル:アイドリッシュセブン お題:僕とあいつ 制限時間:30分 読者:138 人 文字数:1131字 お気に入り:0人
※いおてん あの子のことは――和泉一織という少年のことは、あまり好きじゃないはずだった。 ことあるごとに突っかかってきて、何かあると口を出してきて、まるで重箱の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ネップリしてるタイプのあけうち ジャンル:アイドリッシュセブン お題:愛の故郷 制限時間:30分 読者:125 人 文字数:1383字 お気に入り:0人
※いおてん♀ 彼らと関わることが増えて、親睦を深めて、変わったことはいくつもあった。 それはおのれの在り方であったり、仲間との関係性であったり、かけがえない「友 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ネップリしてるタイプのあけうち ジャンル:アイドリッシュセブン お題:早すぎた魚 制限時間:30分 読者:140 人 文字数:1205字 お気に入り:1人
※同棲してるみつてん♀「あつい……」 空っぽになったコップを片手に携え、わたしは静まり返った廊下を進んでゆく。 フローリングのうえをスリッパでぺたぺたと歩き、ち 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ネップリしてるタイプのあけうち ジャンル:アイドリッシュセブン お題:くだらない悲しみ 制限時間:30分 読者:148 人 文字数:1380字 お気に入り:1人
冷蔵庫のケーキが消えた。 そんな事件は何気なく日常的にありえる話で、きっとこの日本でも、東京に絞ったとしても、あちらこちらで頻発していることなのだろう。 けれ 〈続きを読む〉