ジャンル:モンスターズインク お題:冷静と情熱の間にあるのは宴 制限時間:30分 読者:140 人 文字数:676字 お気に入り:0人

【サリ→ブー】これから起こる奇跡

名前を付けたら情が移る。たしかにその通りで否定するつもりなど無かった。
自分自身思っていた以上にこの子に情が移っていたと気付いたのはシュミレーション部屋で吠えた時だった。自分の声に怯えスタジオの隅に縮こまり逃げるブー。怖くないと手を伸ばしても一向に近寄ってくれない。
嗚呼、この態度に見覚えがある。夜寝る前にクローゼットのドアを怯えた目で見ていた。
これじゃまるでこの子を怖がらせていたあいつと同じだ。この子の中で怖いモノだと認識されてしまったではないか。
気落ちした視線と意識を画面に向ける。多方面の角度から録画された映像がくっきり映し出され、そこには怖がらせ屋として映っている自分と――、恐怖に怯えるブーが映っていた。

違う、違うんだ。これは違うのだと。そう言い訳したところで幼い子供は分からない。
懸命に笑いかけ悪意なんてこれぽっちもないなんて焦る気持ちはこの子には伝わらない。

やってきたマイクの後ろに隠れるブーの姿に胸の奥がズキリと痛む。
社長の影に隠れ怯えた瞳でこちらを見詰め、社長が動くたびにその影に隠れる姿に心が悲鳴をあげる。



結果的自分自身が望んでいたブーを元の場所に帰すことが出来た。
しかし、多寡だが数日の間だというにも関わらず離れたくないという馬鹿げた願望を抱いてしまっていたのも事実。
いつか会えるのなら再び会いたい。そんな女々しい気持ちを捨てきれず、ドアの欠片と拙いながらも特徴をしっかりとらえているブーの掻いた絵を後生大切に仕事先で持っているのだから笑えない。
何度書類を捲って欠片と絵を見詰めたか定かではない。

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