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20170812ワンドロ

『紅葉』
ワンドロお題:レミリア・静葉・(大妖精)

 葉っぱを塗っていたはずが気づけば壁に赤い絵の具を塗りたくっていたのでひゃあと悲鳴をあげて跳びのいた。どうしたの、続けてちょうだいと背中に幼い声が投げつけられる。見れば周りは赤一色で、壁紙の白いところはわたしが向かっていた壁にだけ残っていた。
 こんなことは続けられるわけがない。はねつけるつもりが相手の威圧感に口ごもってしまった。幼い少女だと思ったが不思議と風格がある。背中には黒くつやのある羽が生えている。なるほどちまたで噂になった吸血鬼であった。横目に覗いた窓からは、仕事途中で放り出した妖怪の山が緑と赤のコントラストで小さく見えている。まるで秋を通り過ぎてクリスマスになったかのようであった。それにしても神を誘拐するなど常識では考えられぬ、文字どおりの神業である。わたしは震えあがらずにはいられなかった。結果唇からまろび出たのはせめて事情を聴かねば仕事に取り掛かれませんという弱気な一言だった。吸血鬼は仕方ないわねえとため息をついた。
 尋ねてみたはいいものの、話を聞けば聞くほど私はあきれ返っていく一方であった。
 この吸血鬼は紅葉というものをどうやら知らぬらしい。私が毎年葉を赤く染めているのを彼女たち吸血鬼に対する応援だとすっかり思い込んでいる。あまつさえ今日は張り替えた壁紙が白かったので赤にさせてやる、光栄だろうときたものだ。神に向かってどんな口の利き方だ。常識がないガイジンはこれだから厭なのだ。よくもため息などついてくれたなと怒りさえおぼえる。吸血鬼の勘違いを明かして仕事に戻るのは簡単だがその後ろの給仕服の女が何やら身振り手振りで符号を送ってくる。頭をペコペコと下げているところ、私に頼みがあるようである。おおかた黙って協力してくれとでも言いたいのだろう。腹も立っているが、吸血鬼の尊大な仕草と比べてあまりにも申し訳なさそうなので、なんとなく同情心が湧いてきてしまった。それに私の赤が気に入ったというのには悪い気分もしなかった。一度くらいは協力してやってもいいだろう。だが味を占めて壁紙を張り替えるたびに小間使いのように呼び出されてはたまらないので条件を出すことにした。

 山へは初めて踏み入ったという吸血鬼は物珍しそうにあたりを見回っている。確かに部外者が立ち入ろうとすると哨戒がすっ飛んでくることになっている。今日は私がついているから現れないのだろう。日傘を差す給仕女の方は到ってすまし顔である。私は大人しく見学するように言いつけて仕事に戻った。
 私が出した条件とは社会科見学である。私がさらわれた屋敷は紅魔館というそうだ。紅魔館を出ると全貌が明らかになった。驚いたことに壁紙どころか建物全体が赤く塗られていた。吸血鬼は当主でレミリアと名乗った。赤で染めたのは当主の趣味なのらしい。素敵でしょうと胸を張ってみせるが私の感性ではずいぶんと奇天烈である。ガイジンとは誰もがこうなのだろうか。
 レミリアは見たところものを知らない。どうせ日本の文化などには毛ほども興味がないのだろう。その日本で四季の一つを司るものとして、黙って見過ごすわけにはいかないという使命感がある。
 私が仕事を進めているあいだレミリアはしばらくは黙って見ていたがすぐに文句を言い始めた。常識がないだけでなく集中力もない。初対面の印象が買いかぶりだっただけで中身はとんとお子様らしい。
 仕事が一通り終わるころにはレミリアの忍耐は限界に達していた。隣の給仕女も心なしか疲れた顔をしている。終わったようだし帰っていいかと訊かれたのでもう少しだけ付き合えと言った。
 初めから決めていた場所へ移動する。そのあたりだけ、赤が濃くなるように塗り方を少々変えたのだ。それは秋が深いこととまったく同じである。そして私はじっと待った。五分か十分か。幸運にもレミリアがしびれを切らすよりも早くその時は訪れた。

 びゅおう、と突風が吹いた。何かを言おうと口を開いたレミリアの上空の紅葉が一斉に枝を離れた。真っ赤な葉が幾枚も幾枚も私たちに降り注ぐ。その隙間から見えるレミリアは、ポカンと口を開いたまま頭上を見上げていた。葉は舞いながらその場に降り積もっていく。レミリアは意識してか無意識中にか、その場でくるりと回る。スカートが、白い腕が紅いステージでひらめいている。奇しくもそれは、傍目には踊っているようにも見えた。

 前言撤回。
 奇天烈な趣味と言ったことは取り消さなくてはならない。
 確かにこの吸血鬼には、紅がよく似合っている。

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