ジャンル:アイドルマスターシンデレラガールズ お題:うるさい正義 制限時間:1時間 読者:52 人 文字数:3821字 お気に入り:0人

うるさい正義

※みおあい なおかれ うづりん前提

 あたしは頭を抱えていた。

「で、どうやったら手を出してもらえるのかって話なんです」
「いや……手って……えー……」
「むしろ口がいいですよね!」
「それ絶対に外で言うなよ卯月。本当に外で言うなよ」

 藍子と卯月に半ば強制的に連行され、事務所のカフェスペースで秘密の相談だと言われたのがこれなら、あたしでなくとも面食らうことは間違いない。
 と言うより、卯月と藍子に「どうやったら恋人と仲良くやれるんですか」と言われたって勝手にしろとしか言えない。リア充爆発しろ。
 
「だいたいアタシと加蓮はそういうのじゃなくてだな」
「否定しなくてもいいんですよ、凛ちゃんから聞いてますから」
「加蓮ちゃんと奈緒ちゃんがいっつも仲良くしてるみたいに、私達も仲良くしたくて」
「うん、まあ、そこで止まってたら本当にただの仲良しの友達との相談って感じだったのにな」
「だって付き合い始めてから未央ちゃんデートにも誘ってくれないんですよ!」
「凛ちゃんだって手を繋いでもくれないんですよ!」
「どうしろってんだ……。大体、あれは加蓮が積極的なだけで――」

 そうだ。手を繋ぐのも加蓮からだったし、デートのお誘いも加蓮からだし、ええと、そういうことするのはいつも加蓮からで、

「え、あたしもしかして加蓮に何もしてない?」
「何もしてないのに尽くされてるんですか? 愛されてますね」
「尽くされ……そうなるのか……?」
「そうですよ、凛ちゃんなんて全然何もしてくれないのに。そういうクールなところもカッコいいんですけど」
「ちょっとごめん、加蓮と話してくる」
「あっちょっと」

 藍子に呼び止められたけど、今は加蓮と話がしたい。片手を立ててごめんな、と合図を送り、加蓮がいるであろうレッスンルームへと駆け出した。



*****


 奈緒ちゃんは走ってどこかへと行ってしまいました。加蓮ちゃんも愛されてますね。凛ちゃんももうちょっと私を見てくれたらなあ、と思ってしまいます。
 私はともかく、藍子ちゃんは真剣に悩んでいたみたいですから、相談相手がいなくなってしまって肩を深く落としてうなだれています。手元の紅茶を少し啜った後、軽く横に頭を振って私に笑いかけました。とはいえ、いつもの藍子ちゃんと比べて不自然なそれでした。

「奈緒ちゃん行っちゃいましたね。うーん、未央ちゃんも加蓮ちゃんくらい積極的ならなあ……」
「お二人はデートも行ってないんでしたっけ?」
「そうなんですよ、オフが合わないっていうのもありますけど、ちょっと避けられちゃって」
「凛ちゃんは誘えば来ますからねえ。うーん、でも告白はオーケーしてくれたんでしょう?」
「はい。でも本当は、未央ちゃんは私に気を使ってくれたんじゃないかなって」
「それはないと思いますけど、うーん……」

 実は凛ちゃんが未央ちゃんから「藍子ちゃんとどうしていいかわからない」と相談を受けていることは知っていました。なので、未央ちゃんと藍子ちゃんは間違いなく相思相愛ではあるのですが、藍子ちゃんは自分に責任があると思っているようです。
 未央ちゃんが頑張ってくれれば解決する問題ですから、藍子ちゃんの気を紛らわせようと奈緒ちゃんに相談する体を取ったのですが……ううん。困りましたね。

「未央ちゃんに比べると私はあんまり活動的でもないですし、スポーツとかしませんし、一緒にいて楽しくないのかもって」
「いえ藍子ちゃんも結構アクティブだとは思いますけど、お散歩とかするでしょう?」
「でも茜ちゃんとかと比べると」
「そこと比べると未央ちゃんも多分あんなに走ったりはしないと思いますけど」
「とにかく、未央ちゃんに退屈させないように、私がどうにかしなきゃかなって」
「うーん……」

 元気付けたくて喋っていても、今の藍子ちゃんは悪い方へ悪い方へと考えてしまっている気がします。これは私の出番じゃない、というか未央ちゃんは今ここで藍子ちゃんを慰めるべきだと思うんです。ちょっとだけ腹が立ってきました。

「そうだ。じゃあ、ちょっと凛ちゃん呼んできますね。凛ちゃんなら、何かいい知恵を出してくれるかもしれませんし」
「本当ですか? じゃあ、ちょっと待ってますね」

 藍子ちゃんは一応の笑顔を浮かべますが、やっぱり見ていて悲しくなります。藍子ちゃんの笑顔を取り戻せるのは……やっぱり一人しかいませんよね。
 凛ちゃんに「今どこにいますか?」とLINEを送信して、少しだけ駆け足でその場を離れました。


*****



「で、凛。卯月に、デートの、お誘い」
「ヒューヒュー!」
「はぁぁぁぁ……えー……オフ被ってたっけ……被ってるな……」
「はい今すぐ卯月に電話。今すぐ。早く」

 加蓮と未央に煽られてスマホを取り出す。新着通知に、卯月からのメッセージが届いていた。「今どこにいますか?」だから、きっと一緒に帰ろうというお誘いだろう。ちょうどいい、私から映画でも誘ってしまおうと観念して通話ボタンを押そうとしたときだ。

「私がどうかしましたか?」

 突然、卯月が現れた。通話だから顔見えないから大丈夫大丈夫、と念じていたのに、今卯月の顔が目の前にある。

「事務所にまだ凛ちゃんがいるなら一緒に帰ろうかなって。何か用でした?」
「う、あ、そう? いや、いいの。じゃ、帰ろうか」

 助かった。ちょっと情けないけど、ここは卯月に助けてもらう形で。とりあえずあの煽り魔二人から一刻も早く逃げないと。

「えー、凛。さっき卯月に電話ですぐに伝えたいことがあるって携帯握りしめてたのに。今言ったら?」
「そうだよしぶりん、いつ言うの?」
「「今でしょ」」

 ネタが古い、と突っ込みたかったが、卯月は内容を察したのかニコニコと笑みを浮かべてこちらを見つめてきた。……こうなると私が弱い。卯月の笑顔に弱いのは、もうどうしようもない。

「その、卯月、次の被ってるオフさ、一緒に……ええと、映画見ない? 今度封切りのやつ。ちょっと見たいんだよね」

 ぼそぼそと何か小声で煽ってくる二人を軽く睨みつける。卯月に視線を戻すと満足したような表情で「いいですよ」と言われた。断られるとは思っていなかったけど、それでも安心で胸を撫で下ろす。卯月の差し出す手に引かれて部屋を出たところで、卯月がはっとした表情になった。

「その、凛ちゃんごめんなさい。大事な用があったんです」
「何? 急ぎ?」
「未央ちゃん呼んでもらえますか。ええと、ちょっと話があるのでって」
「いいけど……え、加蓮いたらダメ?」
「ダメじゃないですけど、その、藍子ちゃんに会わせたいので……藍子ちゃんに内緒で」
「そういうことね、オッケー」

 元いた部屋のドアを開けると加蓮がまた何か煽ったのか、未央がなんとも微妙な表情を浮かべていた。

「未央。卯月がちょっと話があるって」
「私? 何の用だろ」
「えーなにそれ。アタシだけ仲間外れ?」
「そういうんじゃないけど……まあ、差し支えなかったら後でちゃんと話すから。今は我慢して」
「後で? うーん。まいっか。じゃ、後片付けはアタシがしとくから、未央は行ってきなよ」
「ごめんねかれん、行ってくる」

 未央は頭の上にクエスチョンマークをいくつか浮かべていそうな顔で部屋から出ていった。あとは卯月が上手くやるだろう。

「で、卯月がどうしたって? やっぱ藍子絡み?」
「察してんじゃん」
「私がわざわざ呼ばれないのに未央だけ呼ばれたらさすがにわかるって。未央がヘタレだって話?」
「たぶん。私も詳しく聞いてないけど」
「うわ詳しく聞いてないのに未央と卯月二人っきりにするんだー。もしかしたら二人で秘密の逢引かもよ」

 それを聞いてちょっと想像してしまった。未央に頬を赤く染めて笑いかける卯月。それに応えるように手を引いて駆け出す未央。

「次言ったら殺す」
「凛表情こわーい。卯月に嫌われちゃうよ」
「卯月を引き合いに出せばいいってもんじゃないから。奈緒の話されたら加蓮だって嫌じゃないの」
「私は別に奈緒に愛されてる自信あるし?」
「ふーん。じゃあ罰ゲームの口実も要らないってことだよね。本気でゲームできるよね」

 この部屋は他にも遊び道具が持ち込まれている。私が一番得意なゲームを持ち出して、加蓮の目の前に叩きつけた。

「じゃ、ゲームしようか。罰ゲームはそれぞれ相手に愛してるって言ってもらうってことで」
「うわ凛はっずかしー。……いいよ、やってやろうじゃん」


*****


「ねえねえしまむー、しぶりんはいいの?」
「まあ、ちょっと未央ちゃんに用事があって。ほら、この先」
「この先……? え?」

 しまむーに引っ張られるままにカフェまでたどり着くと、元気がなさそうにスマホを弄っているあーちゃんがいた。しまむーはあーちゃんを指し示すと、にっこりと笑って言った。

「未央ちゃんがなかなかデートもしてくれないんだーってああなってるんですよ。どうしたらいいかわかりますよね?」
「え……う、はい。行ってきます……」

 お膳立てされてようやく覚悟が決まるっていうのも情けない話だな、とは思うけど。本田未央、気合い入れてあーちゃんをデートに誘います!

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