ジャンル:東方Project お題:情熱的な、と彼は言った 制限時間:1時間 読者:76 人 文字数:2850字 お気に入り:1人

導入を長く書きすぎた話

『結局のところ、私に何をさせる気だよ!』
「あら、ここまで来たんだから自分で分かってるんじゃないの? あんな大言壮語を吐いたんだから、【妹様の遊び相手】頑張ってね」
 ちょ、無理無理無理無理!
「あんな頭おかしい奴の相手なんてしてられるかよ!」
「あら、頭がおかしいなんてひどいわね」
 クッソ覚えていろよ!
「最後に言い残したことがあるなら聞いてあげるわよ?」
 じゃぁ、がんばってね。

**********
『転ばないようにね』
 
 そういったのは私をここまで連れてきた図書館の魔女だ。
 私にどんなことをさせる気なのか。
 まさか悪口を言ったくらいで、処刑されるなんてことはないだろうな?
「そんなことする訳ないじゃない」
 その一言にほっと一息をつく。
「こんなとこでやったら本が汚れちゃうじゃない」
 おぃいいいいいい!
 人道的な理由じゃなくて!自分の所有物の心配なのかよ!
「いいじゃない、さ。こちらにいらっしゃい。そっちの扉を通るといいわ」
 そこには一段と低いところに向かう扉があった。
「こあ、通してあげなさい」

**********
『承りました……ではこちらに』

 そういって年若い有翼の司書見習い。小悪魔は図書館の扉を開いた。
 屋敷の入り口と、図書館の中を隔てていた重厚な扉が音を立てて口を開く。
「覚えていろよ!」
 私はそう言い残し、その扉をくぐった。そう言い残すことしかできなかった。
 負け惜しみだ。私に許されたのはこの扉を通ることだけだ。
「早く外に出たい」
 そう思いながらも、私はそれが容易ではないと感じていた。
 くっそ、まるでこの扉は地獄の門のようじゃないか。
 本家本元の地獄の門は考える人とやらが付いているそうだが、ここでは悪魔がじっと私を観察していた。
「逃げられない」
 そう思わせるには十分な視線だった。


**********
『起点がここだというのは間違いない』

 目の前にあるのは屋根から壁面まで真っ赤な西洋屋敷。
 窓が異様なまでに少ないことと、悪趣味な色彩感覚さえなければ、主が吸血鬼であり、住人のほとんどが妖怪だということを除けば概ね普通の館といってもいいだろう。
 幻想郷での異変の始まり……『窓』から見ることができ始めた赤い霧の異変は確かにすべての始まりだったのだろうと思う。
 少々、登場人物らしからぬ言い方かもしれないが、そこはあれだ。下剋上というやつだ。作者という【絶対的強者】とそれに好きに動かされるだけの登場人物という【絶対的弱者】という立ち位置を入れ替えたのさ。当然、【登場人物】が知りえない情報も【作者】と立場が入れ替わったのなら知りえるのは当然だといえるだろう。
 その証拠にこのあたりの一文ははじめから入れるつもりなんかなかったはずなのに書き加えられている。
 入るはずのなかった私の独白。
 これは私が作者を好き勝手に動かして書いたという証左だろう。
「ふははははは! もう何も怖くないぞ。私は【神】を超えた! どんな強者であろうとも、もう私に勝つことはできない! 吸血鬼? 時間を止める異能者? 怖くなんかないさ! どんな奴でもかかってくればいい! 返り討ちにしてやる! 何百年も生きた強大な魔女? へでもないね! すべてを破壊する者ディケ……」
「その本人を目の前にして、ずいぶんな物言いじゃない、天邪鬼?」
 ジュワッと私が立っているすぐそばの地面が液体のように溶けた。
 真っ赤に、そして立ち上る湯気から異常なほどの高熱を浴びたんだろうな。と容易に想像できた。そして、間違いなくこれが私に当たっていたなら私も同じように溶けていただろうことも。
 あるぇ? どうしてだ? 私はすべてを超越した存在のはずなのに、なぜ理解しえぬ一瞬で死にかけた!?
「ああ、そうだったわね。あなたは【すべてをあべこべ】にしてしまうのだからさっきのは褒めてくれたのよね。ありがとう、そして消えて?」
 地面に向いていた視線を声のしたほうに向ける。
 そこには普段だったらそこにはいないはずの魔女が立っていた。
 掌の上で転がすように赤く燃え盛る炎の塊をもてあそんで。
「どうして、どうして、どうして!?」
 間違いなくあれを食らったら私は死ぬ!
 なぜだ! 私がストーリーテラーだ! 私が進行役だ! 私が主人公だ!
 私の望んだままに話は進み、私が願ったままに都合よく物語は終わるはずだ。
「なのに……どうして、最後の最後で……私の思うようにいかないんだ!」
 一発逆転はないのか!
 絶対に勝てない敵に勝つための秘策は用意されていないのか!
 こんな時に救ってくれるヒーローは何で出てきてくれない!
「あなたが何を言いたいのかは【よくわかる】わよ」
 嘘をつけ! ただの登場人物のお前に作者さえ意のままに操る私の事なんてわかるわけがないだろう。
「そんなことはないわよ。だって、私は【作者の代弁者】だもの。私も、あなたも、そして、あの子も。すべてが。作者の創造のままに動かされている。作者を動かしている? そうね、勝手に登場人物が作者の手を離れるとは聞くわね。けれど、それは登場人物が文を動かしているわけじゃないわ。作者の【無意識】が勝手に私たちならどう動くのか……と考える前に動いてしまうだけよ……あら、これだと、まるで地底の妹さんが作者を動かしているみたいね。可笑しい……動かすはずはないといってるのに、動かしてるだなんて、この一文さえ、瞬間的に脳裏によぎった言葉を紡いでいるのだから【無意識の産物】といえるかもしれないわね」
「お前は……何を言ってるんだ?」
 あいつのいっていることは訳が分からない。
 それに……どうして、私の考えている子音が手に取るようにわかるんだ? サトリの魔術か?
「そんな地底の姉の方でもあるまいし、考えていることがわかるわけないじゃない。そうね、あなたが理解できるようにもう一度言うわ私は【作者の代弁者】よ。あと、勘違いしているみたいだけど、これは終わりじゃないわ、【始まり】よ。本来なら四つに分けられた最初のセクション。あなたは終わりだというけれど……すべてはここから始まるのよ? 貴方はこれから地下に連れていかれて、ひどい目に合う予定なんだから。さて……ではまず【はじめに】言い残したいことがあるなら聞いてあげるけど?」
 彼女――鬼人正邪は口をパクパクとさせて、言葉をどうにかしてつむごうとしていた。

**********

けれど『「冷酷だな」、と彼女は言わなかった』。

**********
__________
【覚書】
・ワンドロキャラ
 パチュリー こいし 正邪

・お題
 『情熱的な、と彼は言った』

・キャラ
 メイン:正邪
 相方:パチュリー
 ちょい役:こいし、小悪魔

※注意】
※本作はメインキャラの『能力』が過分に影響を及ぼしています。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:川後 ジャンル:東方Project お題:情熱的な、と彼は言った 制限時間:1時間 読者:93 人 文字数:1468字 お気に入り:0人
お題:パチュリー こいし 正邪カップリング パチュリー×こいし遥か昔に動かない大図書館と自称した事がある。私の中では中々に効いたフレーズで自己紹介する時にもつい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:川後 ジャンル:東方Project お題:ゆるふわな食事 制限時間:1時間 読者:28 人 文字数:2228字 お気に入り:0人
お題は霊夢 永琳 響子手紙はいつも渡すものだった。命蓮寺にはいつも大量の手紙がやってくるのでそれを受け取り、そしてそのお返事を郵便屋さんに手渡す。門前で修行する 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:川後 ジャンル:東方Project お題:メジャーな失望 制限時間:1時間 読者:58 人 文字数:2089字 お気に入り:0人
お題はレミリア 美鈴 雷鼓私は昼間っから人里の外れにある蕎麦屋で酒を飲んでいた。ここの蕎麦屋はそう美味い訳ではなく、さりとて不味いと言い切るほどではないがあまり 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:百合街@紅楼夢G15bネムノコス ジャンル:東方Project お題:自分の中の屍 制限時間:1時間 読者:71 人 文字数:1615字 お気に入り:0人
得体のしれない想いが、身体中を駆け巡ることがある。 妖怪の寿命は長い。果てしない時を、同じような暮らしをして淡々と過ごしていく。そのうちに、具体的な事象こそ忘 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ちょうできるねこのひと ジャンル:東方Project お題:軽い水たまり 制限時間:1時間 読者:77 人 文字数:1518字 お気に入り:0人
空気の澄んだ朝。昨日までの暗い空とは違い、山の向こうがグラデーションに彩られる心地良い空。「そうだ、湖、行こう」私は気の赴くままに、晴れた空へと飛び出した。私は 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:川後 ジャンル:東方Project お題:消えた勝利 制限時間:1時間 読者:67 人 文字数:1723字 お気に入り:0人
カップリング:屠自古×衣玖お題:文 屠自古 衣玖真夏のある日、屠自古は射命丸を睨みつけていた。それもこれも唐突に呼び出しをしたかと思えば無礼な事を言い出すのだ。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:川後 ジャンル:東方Project お題:楽観的な声 制限時間:1時間 読者:82 人 文字数:1994字 お気に入り:0人
カップリング:清蘭×スターお題:清蘭 小鈴 スター 暗い小屋の中。 私達は三人で蠟燭を囲んで座り込んでいた。 暑さからだろうか。 私の頬に汗が流れ落ちる。「あら 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
輪廻 ※未完
作者:川後 ジャンル:東方Project お題:見憶えのある小雨 制限時間:1時間 読者:79 人 文字数:2125字 お気に入り:0人
カップリング さとり × 村紗「はいはいオンステージいくよー!」「突飛な事を言い出しても私が困るのですが」「はいはいさとりんノリ悪いよー!今は空気読もうよKYっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:かぼちゃ ジャンル:東方Project お題:清い修道女 制限時間:1時間 読者:99 人 文字数:2559字 お気に入り:0人
二度と見ることの出来ない景色。 そもそも、早苗自身が己の目で見た景色ではない。もう、どこで見たのかも覚えていない。何かの本だろうか? それともテレビだろうか? 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:川後 ジャンル:東方Project お題:清い修道女 制限時間:1時間 読者:84 人 文字数:1534字 お気に入り:0人
カップリング 響子 × 聖「では、あなたも命蓮寺に入りたいという事ですね」「はい!是非とも聖様の元で学びたいと思います!」元気な声で響子は答える。門前の小僧を辞 〈続きを読む〉

藤月カゴメの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:藤月カゴメ ジャンル:東方Project お題:情熱的な、と彼は言った 制限時間:1時間 読者:76 人 文字数:2850字 お気に入り:1人
『結局のところ、私に何をさせる気だよ!』「あら、ここまで来たんだから自分で分かってるんじゃないの? あんな大言壮語を吐いたんだから、【妹様の遊び相手】頑張ってね 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藤月カゴメ ジャンル:東方Project お題:見憶えのある小雨 制限時間:1時間 読者:82 人 文字数:1896字 お気に入り:0人
暦の上での秋にも入り、寝苦しい夜もだいぶ減ったある日の事だ。それでも日中はまだ暑いと、白狼天狗の犬走椛に誘われて、「どこかに涼みに行きましょう!」と誘われた。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藤月カゴメ ジャンル:東方Project お題:気持ちいい冥界 制限時間:1時間 読者:83 人 文字数:2406字 お気に入り:0人
貸本屋という職業上、よくよく立ち会いたくない場面に首を突っ込むことがある。 ん? ただ店の奥にこもっているだけのくせに何を言っているのか。ですって? 『本を貸 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藤月カゴメ ジャンル:東方Project お題:小説家たちのヒーロー 制限時間:1時間 読者:89 人 文字数:2280字 お気に入り:0人
『キャラクター』 それは創作上の登場人物で、虚構の存在だ。 紙の上、画面の向こう、頭の中……様々な場所で苦悩して、不正をして、堕落して、逃避して、奮闘して、打破 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藤月カゴメ ジャンル:東方Project お題:賢い夕日 制限時間:1時間 読者:88 人 文字数:2246字 お気に入り:0人
初めて彼女に会った時、『ああ、なんて愚かそうな妖怪だろう』と思った。 ただの一介の野良妖怪風情が、『毘沙門天の代理』を名乗り、まるで偉くなったかのようにふるま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藤月カゴメ ジャンル:東方Project お題:あいつと快楽 制限時間:1時間 読者:98 人 文字数:2666字 お気に入り:0人
これは自論ではあるのだが。 音楽を奏でるときはライブでみんなと盛り上がるのもいい。けれど、たまには……そう、週に5日や6日くらいは一人で演奏するのがいい。 誰 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藤月カゴメ ジャンル:東方Project お題:人妻の武器 制限時間:1時間 読者:112 人 文字数:2500字 お気に入り:1人
『駆け込み寺』という言葉がある。 何かに――または誰かに追われて逃げた人が救いを求めて寺に駆け込んでくるのだ。 時には一時的な保護を求めて。 時には俗世を捨て 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藤月カゴメ ジャンル:東方Project お題:神の冥界 制限時間:1時間 読者:94 人 文字数:2136字 お気に入り:0人
煙がゆっくりと天に立ち上る。 ゆらゆらと、ふわふわと。 今日は風が吹いていない。 煙はゆっくりと、一本につながったまま空の彼方まで道を引いていた。「人は死んだ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藤月カゴメ ジャンル:東方Project お題:宿命の昼 制限時間:1時間 読者:114 人 文字数:2569字 お気に入り:0人
【注意:若干のエロ要素が入っております。下ネタが嫌いな方はご注意を】ジンジンと肌を刺すような強い日差し。軒下の日陰に寝転がっていても、滝のような汗が流れ、じわじ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藤月カゴメ ジャンル:東方Project お題:見憶えのある接吻 制限時間:1時間 読者:93 人 文字数:2444字 お気に入り:1人
「失礼いたしますお嬢様」 そう声をかけられ、寝台で寝ている私の胸元まで布団がかけられた。 私の事を思ってか、その手つきはひどく優しい。 まるで壊れ物を扱うみたい 〈続きを読む〉