ジャンル:アイドルマスターシンデレラガールズ お題:初めてのユートピア 必須要素:iPhone 制限時間:1時間 読者:134 人 文字数:2991字 お気に入り:0人

初めてのユートピア

 未央ちゃんとお家デート、といえば私の家がほとんどです。私の家が事務所から近いこともありますが、未央ちゃんは兄弟がいますから、お家にお邪魔するのが悪いというのが一番の理由でした。ですから、事務所からの帰り道で、明日のオフはお家デートにしようと話している今も、当然私の家で遊ぶものだとばかり思っていたのです。

「ええとさ。いっつもあーちゃんの家だからさ。今度はうちに来ない?」

 前髪を掻き上げて私とは反対側へ視線をずらすのは、最近気付いた恥ずかしがっている時の仕草でした。未央ちゃんは驚いて黙り込んだ私を不自然に思ったのか、「ああいやあーちゃんの家のほうがよければそれでいいんだけど!」と続けました。もちろん、未央ちゃんの家が嫌なわけではないのですが。

「でも、未央ちゃんは兄弟が居ましたよね。お邪魔じゃないですか?」
「それがさ、私以外の家族みんなで旅行なんだよね。私は撮影とかあるから遠出できないし。その間誰も家に居なくて」
「誰も……ですか? いつからいないんですか?」
「ちょうど明日から三日間。だからさ、うーん。えーっと」

 普段は快活で、前へ前へと引っ張ってくれる未央ちゃんですが、私の前ではこうしてよく言葉を濁します。私のことを大切に考えてくれる気がして、こうして悩んでいる未央ちゃんを見るのは密かに私の楽しみになっています。未央ちゃんが言葉を選んでくれた後には、嬉しいことを言われることが多いですから、待っている時間も自然と頬が緩んでしまいます。

「……あーちゃんが良ければなんだけど。その間うちにお泊りしない?」
「はい、いいですよ?」
「えっいいの?」
「ダメなんですか?」
「いやいい、いやいいんだけど。そっか、よかったー」

 レッスンを終えた後のように緊張が解けた表情で、未央ちゃんはにへらと笑いました。未央ちゃんのお家にお泊りするのが嫌なわけはありませんし。それに、未央ちゃんのお部屋にも興味があります。一緒にいる時間も長くなりますし、当然嬉しいに決まっているのですが、未央ちゃんはどうにも私のことには慎重みたいです。

「じゃあ、3日分のお着替え持っていきますね。シャンプーとか化粧水とかは、借りても大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫。私のあるし。私のでいい?」
「もちろん。じゃ、明日楽しみにしてますね」
「私も楽しみ。またね、あーちゃん」

 丁度帰り道が別れるあたりで話がまとまりました。ここで名残惜しくて少しおしゃべりをしてから帰ることもありますが、明日は一日一緒だと思えば寂しくはありませんでした。むしろ、明日の準備を早くしたくて、いつもより足早に歩きました。



*****



 私のiPhoneに表示された住所は団地の一室でした。似たような見た目の建物達に少し混乱しましたが、GPS地図の機能で迷うことはありませんでした。お散歩の時なんかには使わないことが多いのですが、目的地がわかっているときには便利だな、と思います。
 本田、と書かれた表札の下に備えられたインターフォンに指を伸ばし、ゆっくりとボタンを押します。中からドタドタと慌ただしい足音が近づいてきて、ドアががちゃりと開きました。

「おはよ、あーちゃん。ええと、いらっしゃい」
「はい、おはようございます。お邪魔しますね」

 靴を揃えて入ると、団地らしく少し狭いお家でした。途中、こことここは兄貴と弟の部屋だから入らないでね、と言われたお部屋のドアをしっかりと覚えておいて、辿り着いたのは未央ちゃんのお部屋でした。中は物が多いものの整理されていて、賑やかだけれど気配りの効く未央ちゃんの性格がよく現れているように思います。

「特に何もないんだけどね、とりあえずベッド使って」

 そう言いながら未央ちゃんは床のクッションに座り込みました。二人で床に座るには少し狭く、言われたとおり、掛け布団を畳んで避けてからベッドに座ります。そのまま、部屋全体を見ていました。ゴミ箱が意外と可愛いスマイルマークのものを使っていたりだとか、ベッドの上に置かれたハンバーガーのクッションだとか、テレビの下に置かれたゲーム機だとか。私の部屋とは全く違う雰囲気を眺めているだけでも楽しく感じられます。

「……さすがにあんまりジロジロ見られると恥ずかしいんだけどなー」
「ふふ、ごめんなさい。なんだか珍しくて」
「変わったものはないと思うけどな。面白いものでもあった?」
「そうですね……」

 ベッドの足を向ける側にぴったりとくっついている棚のCDの山が目に止まりました。そこだけが雑然としていて、イヤホンやCDプレイヤーが一緒に棚の中に無造作に置かれていました。CDプレイヤーも今では珍しいな、と思いながらそれに手を伸ばしました。

「あっ、それは……」
「あ、ごめんなさい。大切なものでしたか?」
「い、いや、そうじゃなくて、いやまあ大切なんだけど」
「ううん?」

 何かこのCDプレイヤーにあるのでしょうか。OPENと書かれたボタンに軽く力を込めてみると、プレイヤーの蓋が開きます。中のCDは、なんと私のソロCDでした。よく見直すと、CDプレイヤーがあった位置に置かれたCDは私の曲が収められたものばかりでした。

「もっとちゃんとしまっておけばよかった……」
「私は嬉しいんですけど」
「私は恥ずかしいからね結構」

 未央ちゃんはがっくりと肩を落とし、机にべたりと倒れ込みました。隠すようなことではないと思うのですが、未央ちゃんにとっては恥ずかしいことだったのかもしれません。……確かに、私もiPhoneのプレイリストに「未央ちゃん」という名前の、未央ちゃんの参加曲の一覧があると知られたら結構恥ずかしいかもしれません。

「毎日聞いてくれてるんですか?」
「声聞きたいなって思った時にさ、夜だと通話するのも悪いかなと思って。っていうかほら、うち団地だからさ、あんまり夜遅いと声出せないから」
「ふふ」
「何さ」
「……未央ちゃんに愛されてるな、って思って?」
「ぐふっ」

 これは加蓮ちゃんに教わったやり方なのですが、こうして口に出してみると実際に未央ちゃんに効果抜群だとわかります。度々、悪戯心でこうして未央ちゃんをからかうのですが、加蓮ちゃんと違ってすらすらとは出てきませんし、言う私も顔が赤くなっているかもしれません。幸い、からかった後の未央ちゃんに私を見る余裕はありませんから、今のところ、バレずに済んでいると思います。

「今日から三日間はCDは必要ないですね」
「あーちゃんいるしね」
「本当のことを言うと、その後もあんまり聞かないで欲しいかも」
「え、なんで? CD聞かれるのやだった?」
「ううん、そうじゃないんですけど」

 三日間何をして過ごそうかな。一緒ならなんでも楽しいな、とこの後の予定に思いを馳せながら、未央ちゃんに本心を伝えます。しばらく、未央ちゃんは呻いてしまい、復活を待つことになっちゃうんだろうなあ、その間にお夕飯の材料を買い込むのもいいかもしれない、なんて思いながら。

「CDの私で我慢されるなんて、私が嫉妬しちゃうじゃないですか」

 やっぱり未央ちゃんは悲鳴を上げて、しばらくは私を見ることができそうにありませんでした。

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