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いき ※未完

この国の音曲は故郷とは調子が違う。薩摩で感じた違和は長崎で過ごして慣らされた。言葉も違う場所であれば、音曲も変わる。丸山の女たちはサンシンではなくシャミセンを弾いた。曲も、舞も、ゆったりしていた。酔っ払って騒ぐのは同じ人間だから、それはまあ、どこも変わらない。ただ、変わるのは音、調子。心の中は、どこの人間も同じなのだろう。口を閉ざし、一皮向けば、そこには血と臓腑が詰まっている。その先は、どこの国の人間も、同じところに同じものがある。
しかし、だ。目を奪われるというのは、身体を失うということなのではないだろうか。あっという間に負かされて、己の不十分さを思い知らされた。この赤司という人物は、それから涼しい顔で、舞を一差し、と舞はじめた。勝利に酔うこともなく、それが当然のような、風が吹いたから目を細めた、といったような風情で一礼し、音も無く立ち上がって、扇を開いた。そして始まったのはあの、丸山の女たちが弾いていた曲、少し調子は違った。こちらの実渕と名乗った者の演奏が際どい。物が良いのだろう。一音一音の響きが緩いのに、鋭い。
ゆったりと赤司は舞った。何が違うのか。指先、裾捌き、顔の角度、目線。すべてが違った。赤司のすべてが曲の一つであり、風景の一部であり、舞の一部となっていた。曲は上がっては下がり、扇は上を向き、斜めを向く。空気はそこにあった。終わりまで、息が苦しかった。
洛山楼は安泰やな
燕内先生が言った、その言葉で、この世に意識が戻ってきた。俺の意識はどこをほっつき歩いていたのだろう。目はここにあったというのに。
ほんにそうですな、と木村が同調した。
シン
燕内先生はそと思い出したように続けた。
半口開けて、見惚れてたな、お前

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