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晒葉の盾【濃姫と蘭丸】

 高すぎる空の青、群れる魚のように輝く雲の白。縁に腰掛けてすんなりとした足を揺らし、少年は麗らかな日にそぐわないほどの緊張の面差しで虚空を油断なく睨みつけている。
 後れ毛を掻き上げて耳に乗せ、濃姫は口を開いた。所帯じみた疲れが滲んでいないか、神経質なほどに気を付けながら。

「蘭丸くん。眉間に皺が寄っているようよ」
「蘭丸は護衛をしているんです!」

 どうやら、聞かれるのを待っていたらしい。会話の噛み合いにもさほど頓着せず、少年は元気よく宣言して円いくりくりとした眼に強い光を湛え濃姫を見上げる。
 護衛。真摯な言葉だった。この少年が夫を、自分を守ろうとしなかった時など、これまでに一度もないというのに。

「そう」

 からかうのは躊躇われた。濃姫は縁に腰かけ、着物の緩みを直した。乳房の付け根は白く、汗が僅かに溜まっている。衿をさり気なく押し付けて汗を拭い取り、染みが浮かないのを確かめる。
 空を見上げる。この国の安寧を写し取ったかのような空模様。いつまで続くかは分からない平穏に、今だけは甘えたい。自分は少し、疲れすぎていた。

「蘭丸くんがいれば心強いわね」
「濃姫様。何から守ってるか、聞いてください!」
「あら、聞いても良かったの?」

 微笑んで蘭丸の手元を見る。そこで、少しの異変に気付いた。
 その手に愛用の弓は握られていない。年相応の幼さと鍛錬が齎した頼もしさが同居するその手にしっかりと掴まれているのは、棕櫚の蠅叩き。
 子供に言い聞かせるような少し戯れた口調で、濃姫は尋ねた。

「蘭丸くんは、何から守っているの?」
「か!」
「か?」

 簡潔すぎる返答に、少し間抜け面を晒してしまったらしい。蘭丸がバツの悪そうな表情を過らせる。

「蚊、です! あいつの口ときたら、ただの針みたいなのかと思ったら……舶来の、虫眼鏡というやつで見たら、本当に嫌な、普通の針なんかじゃない、気持ち悪い形してて……」
「蚊の口の形なんて、気にしたこともなかったけれど」

 子供の好奇心は、奇妙な所に扉を開くものだ。今回は、その扉には嫌悪という名がついてしまったらしい。
 濃姫は笑いを零した。嫌な気分ではなかった。

「そう。蚊の気持ち悪い口が刺さらないように、見張ってくれていたのね」
「蚊が寄ってくる血の持ち主っていうのがいるそうです、想像もしたくねーけど!」
「おいしい血なんでしょうね」

 のんびりと答え、濃姫は肩越しに室内を振り向いた。重ねられた絹の褥は、未だ動かない。
 その行動が、契機になったようだった。蘭丸は胸を張り、朗々と答える。

「赤んぼの肌はきっと柔らかいだろうし――それに、濃姫様と信長様の御子の血なんて、美味しいに決まってます!だから、蘭丸がここで見張ってるんです!」

 褥の上。小さな、小さすぎる掌。今は愛らしい拳を握って、安寧の眠りの内にある。
 濃姫は目を細めた。愛しさに。追憶に。あるいは、これから乱世に魔王の子として生まれ落ちた、その赤子に訪れる未来の熾烈さに。
 そんな遠くを見る必要すら、なかったのかもしれない――何となく教えられた心地で、思いを改める。今は、乳を与え、眠りを見守り、蚊を遠ざける。そうして守られる日々こそが、この赤子の掛け替えのない財産となるのだとしたら。
 濃姫は、蘭丸へ視線を戻す。いずれ王になる児を守る蠅叩きを雄々しく振り上げて、蘭丸は歯を見せて笑った。

「安心して休んでいてください、濃姫様。ここは、蘭丸の戦場だから!」
「……子育ては、母親の戦場よ」

 反論のつもりはなかった。ただ、降参だとは言いたくなかっただけだ。
 笑いを含んだ軽口を一つ零して、濃姫は蘭丸の滑らかな額をちょん、と突いた。

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