ジャンル:戦国BASARA お題:アブノーマルな口 必須要素:血液型 制限時間:30分 読者:57 人 文字数:1546字 お気に入り:0人
[削除]

晒葉の盾【濃姫と蘭丸】

 高すぎる空の青、群れる魚のように輝く雲の白。縁に腰掛けてすんなりとした足を揺らし、少年は麗らかな日にそぐわないほどの緊張の面差しで虚空を油断なく睨みつけている。
 後れ毛を掻き上げて耳に乗せ、濃姫は口を開いた。所帯じみた疲れが滲んでいないか、神経質なほどに気を付けながら。

「蘭丸くん。眉間に皺が寄っているようよ」
「蘭丸は護衛をしているんです!」

 どうやら、聞かれるのを待っていたらしい。会話の噛み合いにもさほど頓着せず、少年は元気よく宣言して円いくりくりとした眼に強い光を湛え濃姫を見上げる。
 護衛。真摯な言葉だった。この少年が夫を、自分を守ろうとしなかった時など、これまでに一度もないというのに。

「そう」

 からかうのは躊躇われた。濃姫は縁に腰かけ、着物の緩みを直した。乳房の付け根は白く、汗が僅かに溜まっている。衿をさり気なく押し付けて汗を拭い取り、染みが浮かないのを確かめる。
 空を見上げる。この国の安寧を写し取ったかのような空模様。いつまで続くかは分からない平穏に、今だけは甘えたい。自分は少し、疲れすぎていた。

「蘭丸くんがいれば心強いわね」
「濃姫様。何から守ってるか、聞いてください!」
「あら、聞いても良かったの?」

 微笑んで蘭丸の手元を見る。そこで、少しの異変に気付いた。
 その手に愛用の弓は握られていない。年相応の幼さと鍛錬が齎した頼もしさが同居するその手にしっかりと掴まれているのは、棕櫚の蠅叩き。
 子供に言い聞かせるような少し戯れた口調で、濃姫は尋ねた。

「蘭丸くんは、何から守っているの?」
「か!」
「か?」

 簡潔すぎる返答に、少し間抜け面を晒してしまったらしい。蘭丸がバツの悪そうな表情を過らせる。

「蚊、です! あいつの口ときたら、ただの針みたいなのかと思ったら……舶来の、虫眼鏡というやつで見たら、本当に嫌な、普通の針なんかじゃない、気持ち悪い形してて……」
「蚊の口の形なんて、気にしたこともなかったけれど」

 子供の好奇心は、奇妙な所に扉を開くものだ。今回は、その扉には嫌悪という名がついてしまったらしい。
 濃姫は笑いを零した。嫌な気分ではなかった。

「そう。蚊の気持ち悪い口が刺さらないように、見張ってくれていたのね」
「蚊が寄ってくる血の持ち主っていうのがいるそうです、想像もしたくねーけど!」
「おいしい血なんでしょうね」

 のんびりと答え、濃姫は肩越しに室内を振り向いた。重ねられた絹の褥は、未だ動かない。
 その行動が、契機になったようだった。蘭丸は胸を張り、朗々と答える。

「赤んぼの肌はきっと柔らかいだろうし――それに、濃姫様と信長様の御子の血なんて、美味しいに決まってます!だから、蘭丸がここで見張ってるんです!」

 褥の上。小さな、小さすぎる掌。今は愛らしい拳を握って、安寧の眠りの内にある。
 濃姫は目を細めた。愛しさに。追憶に。あるいは、これから乱世に魔王の子として生まれ落ちた、その赤子に訪れる未来の熾烈さに。
 そんな遠くを見る必要すら、なかったのかもしれない――何となく教えられた心地で、思いを改める。今は、乳を与え、眠りを見守り、蚊を遠ざける。そうして守られる日々こそが、この赤子の掛け替えのない財産となるのだとしたら。
 濃姫は、蘭丸へ視線を戻す。いずれ王になる児を守る蠅叩きを雄々しく振り上げて、蘭丸は歯を見せて笑った。

「安心して休んでいてください、濃姫様。ここは、蘭丸の戦場だから!」
「……子育ては、母親の戦場よ」

 反論のつもりはなかった。ただ、降参だとは言いたくなかっただけだ。
 笑いを含んだ軽口を一つ零して、濃姫は蘭丸の滑らかな額をちょん、と突いた。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:秋月蓮華 ジャンル:戦国BASARA お題:アブノーマルな口 必須要素:血液型 制限時間:30分 読者:48 人 文字数:1277字 お気に入り:0人
(オリキャラ居るよー)【伝わってくるもの】「はるさまは?」「燐火か。本殿じゃねえか? ゆかさんと波瑠さんととーりょーと元就様でのんびりしてるというか」「かいぎ? 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:秋月蓮華 ジャンル:戦国BASARA お題:少女の朝飯 必須要素:扇風機 制限時間:30分 読者:144 人 文字数:552字 お気に入り:0人
(オリキャラ居たり模造だったり)【其れが夢だと知っていたから】「……なんだこれ」大山祇神社にて越智安成は消し炭を食すことになりそうだった。彼はここの神官で、立場 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:秋月蓮華 ジャンル:戦国BASARA お題:宿命の小雨 制限時間:30分 読者:187 人 文字数:700字 お気に入り:0人
(4ベースなようで3ネタがあるよ。オリキャラ居るよ)【転換】越智安成は眼鏡を押し上げながら厳島神社で空を見上げた。唐突に鶴姫が厳島に行きたいと言い出したので連れ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:葛城なぎ ジャンル:戦国BASARA お題:彼と会話 制限時間:30分 読者:270 人 文字数:608字 お気に入り:0人
ザァ、ザァ、ザァ、激しく屋根を打ちつける雨音で意識が浮上した。自然に目覚めるなど、寝坊ばかりの自分としては何とも珍しい。小十郎が起こしに来る気配も無く、どうやら 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:秋月蓮華 ジャンル:戦国BASARA お題:わたしの嫌いな殺人 必須要素:複雑なストーリー展開 制限時間:30分 読者:215 人 文字数:2069字 お気に入り:0人
(オリキャラ居るよ-)【7.いられた】「すまぬな」謝られた。「我はお前が望んだ世界を見られなさそうだ。お前を幸いに出来なんだ」酷い。そんなこと言われても否定する 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:秋月蓮華 ジャンル:戦国BASARA お題:子供の喜び 制限時間:30分 読者:232 人 文字数:803字 お気に入り:0人
【ものでつる】厳島は古くから安芸の一宮としてその存在を確かにしてきた。海に関わる者たちにとっては神聖な場所でそうでなくても毛利元就にとっては神聖な場所である。「 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:秋月蓮華 ジャンル:戦国BASARA お題:恋の転職 制限時間:30分 読者:221 人 文字数:809字 お気に入り:0人
(オリキャラ居ます)【本当のところは】厳島神社にて毛利元就は出されたもみじ饅頭を頬張っていた。その様子を越智安成は無言で眺めている。毛利家と越智……正確に言えば 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:秋月蓮華 ジャンル:戦国BASARA お題:優秀な境界 必須要素:化粧水 制限時間:30分 読者:245 人 文字数:987字 お気に入り:0人
(オリキャラ居ます)【大人の階段登るシンデレラ】安芸にある厳島神社、毛利元就が本拠地としているこの場所に伊予河野軍の船がやってきた。「いらっしゃい」「お邪魔しま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:白猫。 ジャンル:戦国BASARA お題:フハハハハ!それはブランド品 制限時間:30分 読者:446 人 文字数:23字 お気に入り:0人
お題のテンションについていけない(吐血 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:白猫。 ジャンル:戦国BASARA お題:明日のぬくもり 制限時間:30分 読者:522 人 文字数:822字 お気に入り:0人
「……っ!!」頭に響く衝撃とともに目をパチリと開ける。月光だけが頼りの薄ぼんやりとした天井と、天井へと伸ばされた自分の手。先ほどまでの世界では、私は血に染まり薙 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ミスプリ! お題:彼女と傘 制限時間:1時間 読者:8 人 文字数:1068字 お気に入り:0人
6月も半ば――。僕は雨に濡れながら、帰路についていた。 いつもなら同じ学校に通う主、姫岡こころと帰っているはずなのだが、今日は違う。 こころが友達とどうしても行 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
対価 ※未完
作者:匿名さん ジャンル:Axis powers ヘタリア【腐向け】 お題:ちっちゃなローン 制限時間:30分 読者:22 人 文字数:505字 お気に入り:0人
「そうですね……、ではこうしましょう」暫く考えたのち、本田は覚悟を決めたように言った。どんな条件を出されようと、彼の唯一になることを諦めるつもりは無い。彼の国の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:怪盗ジョーカー お題:傷だらけの狸 必須要素:扇風機 制限時間:2時間 読者:21 人 文字数:1022字 お気に入り:0人
ある暑い夏の日。扇風機の前でゲームをしていた俺はハチに「もーちょっとジョーカーさん、ちゃんと見たいてくださいよ〜!」と怒られた。季節は夏。いまはスカイジョーカー 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ガールズ&パンツァー お題:限りなく透明に近い慰め 制限時間:1時間 読者:17 人 文字数:1958字 お気に入り:0人
「会長はいつから私のことを知ってたんですか?」生徒会室で一緒にのんびりお茶をすすっていた西住ちゃんが唐突にこんな言葉を投げかけてきた。「どうしたの急に?あと私は 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
UB
作者:匿名さん ジャンル: お題:魅惑の彼 制限時間:2時間 読者:28 人 文字数:1011字 お気に入り:0人
「彼は馬鹿である。」そんなイメージがあるのは、嵐の天然担当、相葉雅紀のことである。だけど、最近思うことがある。それは、彼の大人としての魅力が最近感じられること 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:熱いプロポーズ 必須要素:丑三つ時 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:542字 お気に入り:0人
「違う!!!僕が言いたかったのはそうじゃないんだッ…!!」キリッとした眼差しはそのままに、フーゴは顔を真っ赤にして全力否定する。午後の優雅なティータイム。ニヤニ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:あんさんぶるスターズ! お題:静かな超能力 制限時間:30分 読者:16 人 文字数:1314字 お気に入り:0人
「実は僕、超能力使えるんです」 紫乃創がそう言ったのは、ガーデンテラスで部活動をしている時だった。朔間凛月と天祥院英智はその言葉を聞いて不思議そうに創を見た。少 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ゾイド お題:ぐちゃぐちゃの高給取り 制限時間:30分 読者:18 人 文字数:512字 お気に入り:0人
微笑(プロイツェンとレイヴン)彼の食事する姿はなぜか印象に残っている。結構な高級料理ばかり口にしていたがちっとも美味しそうに食べないのだ。当時のぼくは子供だった 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:あんさんぶるスターズ! お題:早い冤罪 必須要素:クリスマス爆破計画 制限時間:1時間 読者:25 人 文字数:2077字 お気に入り:0人
ドンドンドン、ガンガンガンッ!「ま~ぁくーん。あ~そ~ぼ~ッ!寒いからい~れ~て~ッ!」「~~ッ!あ゛あ゛ッ!!凛月うるさい!!!!」今何時だと思ってるんだ!! 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル: お題:経験のない祖母 必須要素:育毛剤 制限時間:30分 読者:19 人 文字数:1846字 お気に入り:0人
私には祖母と触れ合った記憶がないのである。幼少期、父親を亡くした私は義理の兄の智とともに暮らし、大きな邸宅の中で過ごしていた。齢三歳のことである。智は執事として 〈続きを読む〉