ジャンル:弱虫ペダル 今杉 お題:オチはうどん 制限時間:15分 読者:54 人 文字数:1328字 お気に入り:0人

【今杉】答え、恋人同士である

朝靄の中を突き進んで行くときの快感を、この世のどれだけの人が知っているのだろうか。
例えば朝練をしている時、自分の頭の中にあるのは、いかに効率的に筋肉を動かすか――ということだけにはならない。もちろん一から十まで向上心の塊になって弾丸のごとく真っ直ぐに飛んでいければ良いのだけれど、人間の集中力にも限界がある。そうして、ふと、その集中力の途切れた時にようやく周囲の景色が飛び込んできたり、空腹を思い出したり、喉の渇きを自覚したりするわけだ。
自分の体の全部が物言わぬ歯車になったとしたら、それすらを淘汰した場所から自分を俯瞰できるのだろうが、そうなった自分に、自転車に乗る意味が残っているのか。

「今泉! さっきの角、曲がらなくて良かったのかい!?」

自転車の荷台にくくりつけられ――てはいない奴から声が上がる。

「……」
「間違えたんだろ? 僕と今泉の家じゃ方向が違うからね! でもいいかい今は今泉の家よりも早く僕の家に連れてってくれないと困るんだよ。なにせ君ときたら自分の荷物はちゃんと持ってきてるっていうのに、僕は着の身着のまま飛び出してきたんだから!」

きゃんきゃんと後ろで騒ぎ立てる杉元に、分かってるよ、とぶっきらぼうに返答をする。
今泉はつい小一時間ほど前、朝日が昇るよりも早く杉元の家を訪れ、唐突に自転車の二人乗りに誘い出した。持前の優等生ぶった考え方で二人乗りを断られるかと思いきや、杉元はすんなりと荷台に乗った。今泉の腰に手を回し、じわり、と朝霧の中に散布していく互いの淡い熱を感じ合った。

今泉は杉元のことを憎からず思っている、と考える。どうしても確信が持てないような表現になるのは、ひとえに、今泉がこうした「他者を特別視すること」に慣れていないからに他ならない。小野田には老婆心、鳴子には敵対心のようなものを持っているが、それは今まで友達と呼べる相手すら居なかった今泉の遅い友情と言えるだろう。今泉は否定するだろうが。
今泉にとって、「うるさくない」相手は初めてだった。こんなに吠えたてて、言葉数も多くて、今泉を決して独りにはしてくれない。絵本の中で、主人公が脇に抱えるぬいぐるみだって、こんなに底抜けな輝きを眼前に広げたりしてこなかった。
見つけたからには、逃がせない。先頭に一人で躍り出て、そこでダンスを踊るような感覚に高揚する。
ぐん、と足に力を入れてペダルを踏み込めば、わっ、と小さく声が上がる。スピードが出たことで重心がずれたのだろう。今泉のジャージにしがみつく力が少しだけ強くなった。

「ちょっと、今泉。もしもーし! 聞こえてる?」
「……なんだ」
「やっと返事したね! 今日の放課後なんだけど、一緒に走ろうよ! ねっ!? インハイ前に一回くらいさ!」
「断る」
「えーっ!」

けんもほろろに切って捨てれば、残念そうな声が空に響く。顔を少しだけ上げれば、地平線から完全に顔を出した太陽が、地平線の上に金色の海を作っていた。稲穂が揺れるかのように、陽炎かとも見紛う眩さに、目を細める。ペダルを踏み込む強さは変わらなかった。

「――今日も、明日も、だ」

小さく呟かれた言葉は、果たして杉元に届いたのだろうか。

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