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歩きながら愛して

 夜は優しい生き物のようにぴったりと俺たちに寄り添っていた。街灯に照らされた犬の毛並がつやつやと輝いて、視線に気付いた顔が見上げて嬉しそうな顔をする。よく躾けられた、いい犬だった。あんまり嬉しそうにするものだから、物言わずとも、それが伝わったような心地さえする。
 はやく帰れそうだと珍しい連絡があり、食事はどうするつもりか返信で尋ねる。
『今日は彼女のところの犬を預かっているんだったか』
「ああ、あれの分は飯も預かってるから問題はねえが」
 電話口から駅の雑踏に似た喧騒が届くので、パーカーを引っ掴み、犬のリードを荷物から探した。物音を察した犬は物分りよく飛び起きて足元にまとわりつき、床を爪で鳴らして玄関までまっしぐらに走っていく。
「迎えに行く、コンビニで飯買って帰ればいいだろ」
『珍しく優しいな』
「珍しいか?」
 押し黙った男がどんな顔をしているのかと思うと口角が上がっていく。いいから、迎えに行く、駅で待ってろと伝えて切った。きちんと座って待っている犬のために水とおやつと、念のため下の世話のための道具も持って部屋を出、鍵をかける。いい犬だ、いい犬だが、犬は犬でしかない。リードをつけてこれを守るのも、犬を預かるうえで説明を受けたことの一つだ。人の食べ物は人が食べて美味くできている、犬には塩気が強すぎるので与えてはいけない、だとか。存外、きちんと飼っているのだという顔をしていたらしく、わたしの犬を完璧に管理するのだってわたしの役目よ、と女は華やかに笑った。そうして、俺と一匹は夜の街をふらふらと駅へ向かった。
 駅で恋人と合流し、コンビニまでの道は犬を抱いた。パーカーの前を少し閉めて、その中に抱え込む。首元をべろべろと舐められてくすぐったい。すぐに慣れた様子で、物珍しい高さに目を輝かせていた。
「飯を買ってくるから、お前たちはここで待っていろ」
「ああ、犬のおやつも」
 水を飲ませながらそれを頼んだ。量も分からず、少ししか持ってこなかった。恋人は何だかんだと言いつつも彼の毛嫌いする彼の兄に似て小さいものには甘い。犬よりも風下の縁石に腰を下ろして煙草に火をつけた。煙の気配に、また犬が寄って来ようとするのを煙草のない片手で宥めた。吸い込んだ煙草の香りに、車の排ガスの匂いがいつも残っているコンビニ前の空気と、夜が複雑に混ざり合っている。誘蛾灯に集る羽虫とそれらの数多の死骸、店頭売りのコーヒーのカップや千切れた煙草のゴミ。夜のコンビニは有象無象の集積のように見えるが、何かしらの原因と結果の積み重なった繋がりの塊だ。それに触れている。あの中で食事を買っている恋人も、俺も、この犬も。何かしらの原因と結果の集積だった。
「待たせたな」
 恋人が缶のチューハイを差し出した。一緒に、歩いて飲んで帰ろうと言う。すこしより道をしようと思った。

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