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【マリアリ】不正解のピロートーク

 「愛しているわ」
 「私もだぜ、アリス」

全く笑ってしまうほど、それは道化のような定型文だった。
ベッドに残るのは行為の後のけだるさではなく点々とシーツを汚す血痕だったし、その血痕を生んでいる互いの肌に刻まれたものは愛の証とは程遠い傷。
尤も、こちらの傷はすぐ治るのだけど。
寝返りをうつにも痛そうな、どうにも色気の足りない表情で傍らの少女は私に背を向ける。細い背中。引っ掻き傷。血はもう止まっている。
その腕やふくらはぎと違って、背中には私の残した傷しか目立ったものはない。引っ掻き傷だけならば、多少乱暴なだけの情事の跡に見える。

 「ねえ」
 「ん」
 「痛くないの」
 「あー、さっぱりだな」

それは彼女らしい返事だった。煙に巻くつもりさえない嘘。口に乗せた瞬間空気に溶けるような軽口。こんな行為を慣れる程繰り返して、そんな関係で、それでもその会話にひとかけの甘さも含まれることはない。

 「ッ、て」
 「……痛いんじゃない、やっぱり」

傷口を柔く爪で擦りながら、思う。
そう、きっと何から何まで間違っているのだ。
私はいきたいところにいけるような道を辿れてはいないし。
この子は、いつだっていきたいところへいってしまえる。
背中に残した引っ掻き傷だって、疲れきった事故みたいなこの関係だって、私なりの恋し方だった。間違っている。そんなことはわかっている。けれど、どう修正したらいい?

細い背中。引っ掻き傷。血はもう止まっている。ああ、私は貴女になにも残せやしない。

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