ジャンル:うちのトコでは お題:犬の雑踏 制限時間:1時間 読者:101 人 文字数:1336字 お気に入り:0人

なんてことない休日の話 ※未完

 世間的には三連休ですね、まあ私はそうではないですが。そう口にした瞬間「バカか?」と素敵な一言をくださった神奈川さんに言い返そうとした瞬間に電話が切れ、珍しく(彼の)休日に遊びの誘いをしてきたかと思えばこの仕打ちかと悲しくなったところ、それから数分後にまた電話をよこしてきて、「あと一時間でそっち行くから支度しろ」との仰せ。いやいやいや、支度云々の前にやらなければならないことが山ほどあり、何せ今日私は休みではないと先ほど申し上げたばかりではないでしょうか、と丁寧に説明しても「そんなの明日やればいいだろ」と一言。

「そんなこと言っても、クライアントの要望とか納期とか諸々事情があってですね」
「あーもううっせえな。お前がそんなんだから土日出勤だの残業だのがいつまでたってもなくなんねえんだろ」
「……確かに」
「わかったら支度して駅のところまで来いよ。一応視察ってことにしてお前のスケジュールは抑えたから」

 さりげない根回しと気遣いに若干心が温まりつつ、「どこに行くんですか?」と聞くと、神奈川さんはなぜか「後でな」と濁して電話を切ってしまいました。神奈川さんが休日にわざわざ電話をかけてきて私を連れて行きたがるところに心当たりなどなく、日常に疲れた男二人で夢の国や水族館に行くといった地獄のようなプランを彼が考えるとも思えない――というか、断じて思いたくないところ。

 休日でごった返す中、一人でぼうっと駅のロータリーのあたりで待つ時間の虚無さ加減たるや。
 誰かを待っている時の、「本当に来るだろうか?」というあの不安を抱かずにいられる方法をそろそろ知っておきたいものです。幸い、神奈川さんはさして時間をかけることなく颯爽と現れてくれました。



「ドッグラン?」
「ああ」

 いかにも神奈川さんの趣味っぽい外車に乗り込んで、告げられた行先は全く予想だにしていなかったところではありましたが、癒しを得るという意味ではちょうどいいように思えました。

「この前、神戸とドライブ行った時に寄った淡路のドッグランが結構良かったから。観光資源としても参考になるかと思ったんだよ」
「へえ……」
「なんだその冷たい目は」
「特に何も」

 心の中で舌打ちしつつも、慣れた愛想笑いでごまかす私の器用さよ。「休日がある」「女性とドライブに行ける」「イケメン」という三コンボを決めた神奈川さんは、私のささやかな自尊心にどれだけダメージを蓄積させてくれるのでしょうかね。まあいいんですけど、いつものことだし。
 目的地のドッグランにたどり着いて車を降りると、元気そうな犬の鳴き声が聞こえてきました。やはり家族連れが多く、幸せを具現化した風景に心が和むのを感じます。

「なんだか、楽しそうに走ってる様子がかわいいですね」
「そうだな」
「でもさっきから神奈川さんだけすごく吠えられてますけど」
「…別にいいんだよ」

 ふん、と拗ねたようにそっぽを向いた横顔でさえ様になっているのが同性としてやや妬ましいですが、三連休などめったにない私をここにわざわざ連れてきてくれたのが神奈川さんなりの気遣いだということも薄々わかっているので、からかうのもほどほどにしておきましょう。

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