ジャンル:王室教師ハイネ お題:夜の木 制限時間:2時間 読者:35 人 文字数:1121字 お気に入り:0人

秘めた心、気付かぬ想い

 どうしようもなく、悲しくなる時がある。否、悲しいとは違うのかもしれない。ただただ心臓のあたりがきゅうっとして、絞られるような、そんな感覚に襲われる。そのスイッチが入るのは、一つ下の弟、リヒトを見る時だ。
 たとえば、リヒトがカイ兄上と笑ってるとき。
 たとえば、ブルーノ兄様に怒られているとき。
 たとえば、ハイネを抱きしめているとき。
 たとえば、たとえば、たとえば。
 挙げればいくらでも出てくるほどに、リヒトが誰かといると胸が締め付けられる。それを見て、僕の心が悲鳴を上げる。
(――なんなんだ、これは)
 世界が夜の帳に包まれ、静かになった真夜中の中庭。部屋にいるのもなんとなく嫌で出てきた。
(アイツのせいで、こんなことになってるというのに、きっとアイツは気付いていないんだろうな)
 シャツの胸元を握り、唇を噛み、視線を俯ける。悔しい、とは少し違うけれど、八つ当たりするにもあの笑顔を見ると何もできなくなる。
「……リヒト」
 ほとんど吐息だけで呟いて、しゃがみ込んで膝を抱える。
「リヒト、リヒト……」
「はぁい?」
「!?」
 誰もいないはずだった。なのに返ってきた声。ばっと顔を上げれば、そこにはいてはいけないヤツがいた。
「な、お前、なんでここに!?」
「え? レオ兄ぃが思いつめた顔して外に出てるの見えたから、気になって」
「思いつめた顔……?」
「うん。自殺でもするんじゃないか、ってくらい怖い顔してた」
「……」
 そんな顔をしているつもりはなかったのだが……。
 自らを思い返すも、やはり心当たりはない。というか、自殺なんて痛いか苦しいかだろうし、したくない。
「レオ兄ぃ?」
「っ、なんだ」
「いや、俺の存在忘れて考えこんじゃってるから」
「……すまん」
「いいよ、別に」
 僕が腰を下ろした隣に、リヒトも座って空を見上げる。
「わー、すごい、星が綺麗」
「……そう、だな」
「……やっぱり、なにかあった?」
「そういうわけじゃない。……ただ」
「ただ?」
 言い淀み、そうして紡いだのは、近頃の悩み。即ち、リヒトが誰かといると心臓がおかしくなる、ということ。
 すべて話し終えた僕がリヒトを横目で窺えば。
「……どうしたんだ、そんな真っ赤になって」
「えっ!? あ、いや、なんでもない、なんでもない!」
「?」
 よく判らない弟だ。そう思いながら首を傾げるも、リヒトはあわあわと焦ったようにしている。
「ご、ごめん、俺、そろそろ寝るね! おやすみ!」
「? ああ、おやすみ」
 全速力で走り去っていく背中。それを見つめ、僕は。
「……今度侍医に頼んで薬をもらおう」
 呟いて、僕も自室に戻ろうと腰を上げた。

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