ジャンル:王室教師ハイネ お題:清い会話 制限時間:30分 読者:24 人 文字数:1155字 お気に入り:0人

嘘つきはだぁれ?

 人間は嘘つきだ。中には本当に嘘をつかないと言い張る者もいるが、まずその多くが嘘であることは想像に難くない。たとえ聖人君子であろうとも、その言葉に偽りを埋め込まない人間など存在しない。存在しえない。
(だから、嫌い)
 じっと己に覆いかぶさる男から視線を逸らし、深々と嘆息する。そうすれば、男はさらりと髪を揺らしながら小首を傾げた。
「どうしたんだい、ハイネ。何か気に食わないことでも?」
「……理解していらっしゃるのでは? というか、私が同性に押し倒されたことを気にしないとお思いですか?」
「存外簡単に押し倒されてくれたから、別に構わないのかと思ったよ。違ったのなら申し訳ないね」
「そうおっしゃるのでしたら、早くどいてください」
「それはできない相談かな」
 私の言葉に、男――ヴィクトールは食えない笑みを浮かべる。それは自信に満ち溢れたもので、きっと自分が嫌われているとは思っていないのだろう。
 再度深々と息を吐き出す。そして、両手を持ち上げヴィクトールの胸元を押すと、けれど彼は堪えた様子もなく私の両手首を片手に収め、言った。
「極東の島国ではね、『いやよいやよも好きの内』なんて言葉があるらしいよ」
「私はそこの民ではございませんが」
「同じ人間の言葉なんだ、そんなに気にすることはないさ」
「気にする気にしないという話をしたつもりはありませんが?」
「うーん、やっぱりハイネは頑固だなぁ」
 そんなにかたくなにならなくても良いんだよ?
 紡がれた言葉に顔を歪める。やはりこの男は、どこかネジが飛んでいる。それを自覚せずに国王なんて地位に就いてしまったのだ、そりゃあただでさえおかしい人格がおかしいままで固定されるのも頷ける。
「……」
「おや、諦めたのかい?」
「面倒くさくなっただけです。この身体を暴きたいのでしたら、お好きにどうぞ。ですが、私は何も応えませんので悪しからず」
 大嫌いな人間の筆頭に抱かれるのは好ましくないが、それでもこの押し問答を終わらせられるなら、と、ヴィクトールを映していた目を遠くへ向ける。するとヴィクトールは小さく苦笑しながら私の手を解放し、そのまま身体を起こして私から遠ざかった。
「……? 抱かないのですか?」
「いくら私でも、嫌がっている想い人を無理やり手籠めにする趣味はないよ」
 瞬きを一つ。思っていたよりも、この男には人の心が残っていたのか。というか、それならそもそも押し倒しもしないでほしいところだが、まぁそれは置いておく。
「……」
 ゆっくりと身体を起こし、じっと相手を見つめる。
 それから、
「この調子でご自分が嫌われていることも理解してくださいね」
 そう言葉を投げつければ、ヴィクトールは「それはないって知ってるから無理かな」と笑った。

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