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【カルジュナ】転生なんて聞いてない4

アイドルになっても死んでしまうとは情けない。
しかしカルナは学んだ。人間は弱いのである。英霊とは全く別物なのだ。つまり、死ぬときは死ぬ。それだけの事である。

「しかしワイヤーが切れてはどうしようもない」

小学校に上がってすぐに作ってもらった図書館の貸し出しカードをフルに使い、自分が覚えている年代の新聞を読み漁ってみても、自分の訃報は見つからなかった。前回前々回ぐらいは死んだときのことが新聞の隅にでも掲載されていようものだったが、インターネットに接続してそれらしき語彙を検索しても見当たらなかった。
つまり、ここは全ての世界線に繋がっていない場所である。カルナはそう結論付けた。
それぞれから独立してしまった世界では、今までのやり方をなぞっても、同じようにいくかは分からない。現に、カルナは今までの同じような両親の元に生まれていたが、年号や西暦もすべてデタラメのように共通点が無かった。
俳優もアイドルもダメだったとなると、どうすれば良いのだろうか。アルジュナが見つけられそうなくらいに目立ち、なおかつ、今度こそ死なないものでなければならない。カルナは首を捻って考えたが、連日の情報過多な日常において、取捨選択をするにはあまりにカルナのCPUは不十分だった。ネットリテラシーも学んでは来たが、そこは生来の性格ともいえよう部分である。手先は器用だが口は立たない。いつかのカルデアでは、アルジュナが大根を桂剥きする横で、生のままの花形人参を齧っていたような男であった。

「やはりアルジュナに見つけられるのが最短な気がするな」

前回のアイドル路線は、町中で出会ったジークフリートに頼まれたからこそ生まれた道順である。終着点は未定だったが、途中駅から見える景色は中々に面白かったとカルナは記憶している。ドームだかホールだかに所狭しと詰まった人間たちが、色とりどりの光を振り回す光景を、記憶の何処かで再生する。しかし、どれだけの人間がカルナに手を振ろうとも、それはアルジュナではないのだ。アルジュナは決してカルナに手を振ったりはしないし、うちわを掲げたりはしない。
とうとうこの世界でも十五歳になろうとしているカルナは、ぼんやりとしながら街中を歩いていたが、ふと顔を上げた。そこにはビルに据えられた巨大な液晶画面。この周囲一帯で一番の広告塔に流れる映像に、見知った顔があった。
女王メイヴ――アルジュナを一度でも従えたケルトの貴婦人。
映像は、時間にして一分足らず。その中で、メイヴは次々と衣装を変えて登場した。パリ・コレと呼ばれる、オートクチュールのファッションショー。その宣伝だった。

広告を見上げて立ち止まっていたカルナは、知らず人の目を引いていた。
今世でもやはり色の抜けた髪色に光をはじき返す肌色。男でありながらも細く、しかして密度のある骨組み。

ねぇ君、モデルやってみない?

そう声を掛けられ、カルナは生前のように、一二もなく頷いていた。

何を隠そう、モデルの仕事は楽だった。ウォーキングの練習は辟易したが、一度歩くだけで大量の写真が撮られ、全世界にばらまかれる。これならばアルジュナもどこかでカルナを見つけるだろう、と確信すらしていた。カルナはただ、いつかのアルジュナの便りを待っていた。待ち続けていた。来る日も来る日も、メールや郵便受けを何度もチェックし、ファンレターもアルジュナの名前を探してひっくり返した。

が、結局のところ、カルナは他人の作ったレールに乗っていたにすぎない。考えることを放棄しながら生きていたら、ある日家を出た瞬間にトラックに轢き殺された。
カルナは遠のく意識の中で、解せぬ、とだけ唱えておいた。

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