ジャンル:カルジュナ お題:楽しかった大学 制限時間:15分 読者:255 人 文字数:1383字 お気に入り:0人

【カルジュナ】洋裁専攻学科xモデル志望6

アルジュナが教員控室に乗り込んでいる一方、カルナの方は少しだけ時間を遡って動き出すことになる。

生まれて初めてモデルにしたいと思った人間にすげなく断られたカルナは、しばらくその衝撃に呆然と立ち尽くし、周囲の学生たちから励まされたり肩を叩かれたりとせわしなかった。皆はカルナがどんな服を作るか、どんな評価を得ているかを知っている人間たちであったため、この機会にカルナへと取り入ろうとする者も何人かいた。
しかしカルナは全ての言葉に軽く返事を返した後、勢いよく走り出した。そして今しがた飛び降りてきた二階の教室まで、階段を場違いなほどの勢いで駆け上がり、力いっぱいにドアを開けた。これはカルナが乱暴にしようとしたからではなく、勢い余ってそうなっただけだということだけ訂正しておく。
そしてカルナは開口一番、教室内のチームメンバー全体に聞こえるように叫んだ。

「オレはチームからしばらく外れる!」
「はぁ!? どうしたんだよ!?」
「ちょっと待って辞退!?」

チームリーダーにも等しいカルナの台詞に教室内が一気にざわつく。が、カルナの言葉を待つよりも早く、声を上げるものが居た。

「はっはっは! なんじゃお主、在奴に惚れたか!」

清々しいほどの笑い声に、全員の視線がそこへ無垢。ノッブこと、信長がさもおかしそうにカルナを指差していた。

「あの交換学生、手に入れるには生半可なものでは足りんぞ」
「交換学生?」
「ム? 知らんのか? 次の個人コンペがあるじゃろ? それの『景品』じゃぞ、在奴らは」

にたり、と信長が笑うと、カルナの双眸が細められる。信長は、今まで腰掛けていた実習用机から降り、パーカーのポケットに両手を突っ込みながらカルナへと歩み寄った。

「てっきりお主、個人コンペで一位が取りたいからチームを抜けるもんだとばかり。しかしその様子だと知らんと見えた」
「あぁ、今知った。が、礼を言う」
「そうじゃろうそうじゃろう? 手に入れる手段を教えてくれたノッブに、ちと褒美をくれても良いのだぞ?」
「オレにできることならば」

信長は、カルナの前に立ち、その細身からは想像できない程の眼力でカルナを見上げてくる。
ちろ、と信長の舌がさもごちそうを前にした蛇のように動いた。

「あの交換学生、ワシにも味見させよ」
「断る」

ばっさり。
断頭台もかくや。
先程自分がかけられたギロチンの下に、今度は他者をひっかけることになろうとは。カルナは底冷えする瞳で信長を見下ろしている。

「アレはオレのものだ」
「ほーぅ? またまた、施しの気鋭は冗談が上手いのう。今の今まで、お主は在奴のことをこれっぽっちも知らなんだ」

けけけ、と信長は心底楽しそうに笑う。
こうした、他人をおもちゃにするときの信長の笑みは、まるで魔王のようだと言われる。信長に、目の前でじっとりと笑われると、その瞳の奥に心根さえを焼き尽くしてくる炎を見せられるのだと。
しかしカルナは信長の視線を如何ともせず、ただ静かに見返すのみだ。
何故ならカルナは知ってしまった。自分の心の中の炎を、自覚してしまった。
流れ星が落ちてきたように、轟く雷鳴に導かれたように。

「それでも、オレはあいつを待っていた。誰にもやることはできない」

カルナの心へ向かって、真っ逆さまに、彼は落ちてきたのだ。

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