ジャンル:カルジュナ お題:ロシア式の男祭り! 制限時間:15分 読者:155 人 文字数:1362字 お気に入り:0人

【カルジュナ】小説家x小さい婚約者

「カルナ、まただめだったのですか」

どんぐりまなこを、えいやっと細めてカルナを睨もうとしている幼子(おさなご)の名前はアルジュナ。カルナの従弟でもある小さな子供。

「あぁ」
「もう! そんなだからいけないのですよ! 母上がいってしました、しょうせつ、というのは、人の心をうごかすものなのですから、もっといっしょうけんめいにかかなければ!」
「そうだな」

カルナの前でプリンをつつくためのスプーンをくるくると空中で回しながらアルジュナは喋る。
アルジュナは今年でようやく幼稚園から脱出する年齢になったのだが、同い年の子供よりも頭二つほどとびぬけた賢さを持っているため、幼稚園で浮いてしまうのだという。よく回る口も、簡単に分かってしまう計算問題も、アルジュナには退屈すぎてどうしようもない。アルジュナは、自分を排他しようとする友人(むしろ、友達と呼ぶほどに仲良くもないのだが)たちよりも、言葉少なながらも自分の意見を聞いてくれるカルナになついていた。

「つぎのおはなしは、なんです?」
「そうだな…何にするか…」

カルナが小説家になってから、もうそろそろ六年になる。
始まりは大学自体に友人にそそのかされて、短編の創作小説を書いてくれと言われた時だったように思う。それは文学サークルの中で発行する同人誌に収録するから、と言われたものであったが、カルナの寄越したものを見て「ハッハハハハ!世も末だな笑うがいい俗世よ!俺は見つけたぞ金の卵ならぬ万年筆の原材料こそを!」とトチ狂ったように笑った小柄な同級生に勝手に文学賞へ応募された経緯を持つ。
カルナはその時文学部ではなかった。が、ビジュアルも手伝ってか、異色の学生小説家として文豪デビューを果たしたのだった。
さて、この小説家デビューについてだが、就職するよりもよほど自分に合っている、とカルナは思っている。旧友たちがノルマだ残業だと走り回っている中、自らの中枢へダイブしていくような行為は他にたとえようもない。
しかし、全てをつぎ込む情熱があるかどうか、と問われると、カルナはやや首を傾げることとなる。

「今は…あまり、書きたいものもないな」
「なんてぜいたくな!」
「贅沢か。そうかもしれん」

どうしても、俯瞰した目で見てしまうのだ。恋愛小説を依頼されたこともあったが、恋愛面よりも作中のミステリーのリード部分に気を割いてしまったし、実刑判決を受ける犯罪者とそれを庇う被害者の小説を書いたときは担当にも苦い顔をされた。

「まぁ、売れなければ…次が、最後になるかもな」

何の未練もないかのような声色のカルナに、アルジュナの心がとうとう噴火する。

「なんですかっ!そのやる気のなさは!」

年相応の、導火線の短さはもしや兄にも似たのだろうか。カルナはアルジュナの上に居る、二人の兄の顔を思い浮かべる。長兄はともかく、次男はかなりの健啖家であり豪胆な青年であったと記憶している。
カルナはそれが少しばかり面白くて、つい言葉を滑らせてしまう。

「では褒美をくれ」
「ほうび」
「あぁ、お前が望むものでいい」

ふむ、と似合わぬ溜め息一つ。

「いいでしょう! 次のお話が、わたしがじゅうろくさいになるまで続いていたら――カルナのおよめさんになってあげます!」

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