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【カルジュナ】転生なんて聞いてない5

「げせぬ」


それがこの度の人生で最初にカルナが発した意味のある言葉であった。両親が近くに居たのだが、まさかそんな言葉がカルナから発せられたとは思っても見ない二人は、あらまた何かお喋りしてるわウフフアハハくらいの状態だったのが幸いした。カルナとて憤怒にまみれた呟きを聞かれた挙句に精神を心配されるのは御免こうむりたい。

はてこの度の人生ではどう歩んでいくか。
中学校までは今までの人生経験からいって、特に大差はない。ここから誰と会い、自分がどう返答していくかでカルナの行先が決まるようだった。
しかし、今までアルジュナを探したのが一回、見つけてもらおうとしたのが三回。しかし最後のモデル人生は、カルナとしても反省点の多いものであった。

「……アルジュナに会う、というのが、確定事項のように考えていたが……」

それはカルナの驕りでもあった。
自分が居るのならばアルジュナが居る。アルジュナが居るからこそカルナは転生する。単純明快なループの原因。

だが、そのループの原因が、いつまでたっても現れない。聖杯戦争を幾度となく経験していた身としては、アルジュナが共に召喚されない確率も高いのだということも、頭では理解していた。
しかしこれはもう運命なのだ。必然なのだ。カルナは公園の滑り台の像の上で膝を抱える。制服である黒いスラックスに顔をうめると嗅ぎ慣れた太陽の匂いがする。アルジュナからは感じられない匂いだ。
アルジュナは雷神の血を引いていたため、いつも朝靄を連れ、小雨の香りを漂わせていた。空気の中に飽和していく湿度と共に立ち上る土の匂い。カルナの持たぬ、違う種の静寂の欠片がそこにあった。

「……お前はどこに居る」

カルナの問いに、答える人間は居ない。黄昏時の公園にはカルナしか居ない。だが、いつまでも膝を抱えているわけにはいかないのだ。カルナは立ち上がり、平凡にて至高の家へと足を向ける。
今回の家族も、カルナがどんな記憶を持っているかをしらず、無垢なにて無償の愛を注いでくれている。カルナが生前にて手に入れることのできなかった、生まれながらの社会的地位も持った両親である。愛情を注がれ、何一つ不自由なく暮らし、自分の未来を、心身を案じてくれる家族が何より近くにいる。

「それでもお前は居ないのか」

カルナは闇夜に問いかける。
どこまでも続く空の奥深くに質問を投げても、答えをよこす神は居ない。この世界に、神を感じることはできない。

「大いなる我が父。どうかオレを見ているのならば、どんなにか嘲笑っても構わない。ただ最後にオレがアイツに会ううことができるようにだけ、どうぞ願うことを許して欲しい。千の生を越え、万の人々を踏みにじっても、オレはアイツへの炎を失うことができないのだ」

カルナの懺悔を聞き届ける神が、果たしてここに居たのだろうか。人間になってしまったカルナにはとうてい分からない。
ただ、遠くで少しだけ何かが瞬くように感じた。

カルナはこの人生を、ひどく平凡な男として過ごした。
社会の歯車となり妻を娶り、子供を成した。そして、何の感慨もなく、ただアルジュナの姿を思い浮かべながら死んだ。

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