ジャンル:FGO お題:早すぎたパラダイス 制限時間:30分 読者:217 人 文字数:2433字 お気に入り:0人

【ジュナごはん】ノッブといっしょ

「お?」

信長が、アルジュナを見かけたのは、本当に偶然だった。
エミヤやタマモキャットが未召喚のこのカルデアでは、食堂には簡素な非常食が山積みになっており、それらをかいつまんで生を繋いでいる職員が殆どである。腹に溜まればいい、という身もふたもない言葉を、心の盾にしているようでもあり、信長にはそれらの意識をわざと避けていた。

基本的にサーヴァントたちにとって食事は不要である。カルデアから送られてくる電力を魔力に変換しており、供給が途切れることはない。空腹感を感じるため、というよりも嗜好品としての食事を摂りたくて非常食に残念がるサーヴァントはいたが、なにせ人手も材料も足りない。
信長は食堂というよりも、そこから続く食糧庫の中から水のみを取り出してきたアルジュナに声をかけた。

「アルジュナ、ちょうどよいところにおったな、お主は幸運じゃぞ!」
「はい、私は幸運であることを自負しておりますが」
「パラメーター的なものを言及するのはつまらん。そこではない」
「そうですか」
「お主はスーパーカーを手に入れたら、どう走るべきか考えるタイプじゃのう」
「はい?」
「型にはまるばかりでは世の享楽のうち半分も得られんぞ」
「……私には不要のものと思います」
「まぁ良いわ、ちょっとこっちに来い」

自分よりも頭一つ分は小さいところにある旋毛は、今は帽子で隠れている。アルジュナは先導する信長についていき、食堂の片隅のテーブルへ腰を下ろした。
アルジュナは自他共に認める強者であったが、その彼がくるまでのカルデアでアーチャーを言えば信長だった。拳銃という武器を使うものの、それが現代に近しい歴史での飛び道具――ひいては弓に近しいものである――ということを聞いてから、アルジュナも信長には表立った不義理をすることはない。自分が召喚された直後は、数少ないアーチャーとしてアレコレと世話を焼いてくれた記憶を持っているからでもある。

四角いテーブルに向かい合わせになった状態で、信長は一つの袋を取り出した。

「ババーーーン! どうじゃ、どうじゃ~! ポテチじゃぞ~!」

四角い袋を、効果音つきで見せびらかされたのだが、アルジュナはそれが何か分からずに首を傾げた。

「ぽてち…?」
「なぬ!? これを知らぬか!? 天下のポテトチップスじゃぞ!? うぅむ、まぁ、お主は職員と仲良くなって菓子をちょろまかすなどということはせんだろうな」
「そんなことをしているのですか、あなたは…」
「ちょちょいーっとこの間のレイシフトの時の話をしてやっただけじゃぞ? それはともかく、ここで会ったのも何かの縁じゃ。特別に相伴に預からせてやろう」
「いえ、私は良いのでご自身で召し上がっては?」
「それじゃワシが心が狭くてみみっちい奴のようではないか! お主は黙って食っておれば良いのだ」

ぱん!と袋を開けた信長は、テーブルの中央で袋を広げる。アルジュナが中身をまじまじと見ると、薄くて、円形がへにゃりへにゃりと曲がりくねった形だと分かる。それらに規則性はなく、たまに割れたもの同士なのかが近くにあり、酷くもろいものであることも見て取れた。

「……食べ物、なのですよね?」
「そうじゃそうじゃ。ほれ、食わんか」

信長はぽいぽいと手袋を脱ぎ捨て、一番おおきなポテトチップスを摘まみ上げる。
大口を開けて、前歯に軽く力を入れれば、パキッ、という軽やかな音と共に軽々と砕かれる。半分ほどが一気に口の中に消え、咀嚼するたびに軽快な音が響く。
最初の一口はいつも、舌先をぴりりと痺れさせる。信長の食べ方を見て、アルジュナもそうっと手を伸ばした。が、手袋をつけたままであったため、信長に止められた。

「汚れるぞ~外せ~」
「はぁ」

その通りに手袋を外し、そうっと一枚を摘まみ上げる。信長が食べているものの、四分の一ほどの大きさのそれを、おずおずと噛んでみる。
カリッという音と共に円形の端が齧り取られる。唇の裏に感じた塩気に、唾液がどっと溢れてくる。舌の上で転がせば、すぐに唾液を吸って柔らかくなる破片は、それでも揚げた直後の香ばしさを残していた。もう一度、アルジュナは指先のそれを齧った。今度は半分ほどを。唾液に絡め取られるよりも早く、奥歯でシャグシャグと噛めば、先程よりも強い香ばしさがすっと鼻腔へ抜けていく。塩気といい、香ばしさといい、そして何よりリズミカルな噛み心地は今までに無いものだった。

初めてのジャンクフードに、アルジュナが思わずもう一枚、もう一枚、と手を伸ばす。できるだけ小さいものを無意識に選び、リスのように端から齧る。しばらくしたところではっとして、そろりと信長の方を見ると、どこから取り出したのかもう一袋、同じようなものを持っていた。

「あの、それは?」
「フッフーン。今食べているのがコンソメ味でな。そしてこちらはのりしお味じゃ!」
「のり…しお…?」
「説明するより食べた方が早いぞ」

バリーンと再び袋を破き、テーブルにもう一つ袋が増える。アルジュナは油でぬるつく指先を持て余しながら、信長とポテトチップスを見比べる。

「ほれほれ、早く食べんか! こんなとこ、他の奴らに見つかったら横取りされてしまう」

ニッ、と白い歯を見せて笑う信長に急かされ、アルジュナは新しく登場したのりしお味も一枚手に取る。やはりそれを微かに齧り、磯の香りがすることに目を瞠った。

「せーっかく人の身を持ったんじゃ。少しくらい気を抜いてもバチは当たらんと思うぞ」

信長が、笑いながら指先を舐める。
アルジュナは何度か、ポテトチップスと自分の指先を交互に見ると、こっそりと舌を伸ばして指先を舐めた。それは大英雄が、一介の王子がするような動作ではなかった。けれど、舌先に感じた塩気は、やはりアルジュナの味蕾を刺激し、次の一枚に手を伸ばさせた。


※王道ジャンクフードとアルジュナ

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:藤下東5ふ26a ジャンル:FGO お題:去年の風 制限時間:30分 読者:182 人 文字数:1340字 お気に入り:0人
宝蔵院胤舜の着物の裾からは、いつも白檀の、よいにおいがする。俺が彼をこのカルデアに喚びだしてから、何日も経過したというのに、その甘くて爽やかな線香のにおいは彼 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ボンゴレーノ麹 ジャンル:FGO お題:どこかの情事 制限時間:15分 読者:140 人 文字数:1394字 お気に入り:0人
「あれ?」小西はふと足を止めた。視線の先、開けた人工中庭には二人の女性が隣同士に腰をかけ、手元の本に目を落としている様子だった。「ますたー?」「あ、あぁ、悪い」 〈続きを読む〉

梟光司の即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:恥ずかしい彼女 制限時間:15分 読者:35 人 文字数:1433字 お気に入り:0人
「ッッ――ラァッ!」来る、と思ったのは、決してカルナの思い違いではなかった。鮮烈な赤。血よりももっと明度の高い、林檎や苺のような緋色。それが眼前に迫り、カルナは 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:戦争と悪人 制限時間:15分 読者:43 人 文字数:1468字 お気に入り:0人
従業員の顔が一瞬で青褪め、道を開けた。というよりも、脱兎のごとく逃げ出した。カルナとビリーは一気に走り出し、ピアノの乗るステージの横を通り抜けて二階への階段に足 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:もしかして凡人 制限時間:15分 読者:32 人 文字数:1258字 お気に入り:0人
ガゴンッ!と車体が揺れ、カルナが一瞬だけシートから浮く。咄嗟に庇ったベレッタをセットし直しながらフィンを見ると、どうやら運転席から何かを外へと投げているようだっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:愛のプレゼント 制限時間:15分 読者:44 人 文字数:1297字 お気に入り:0人
「大層なご登場なこって」「いつもはデスクワークばかりだからね。たまに現場に戻ると良い刺激になる」「まぁいいや、カルナが君と行くと申し出た」「そうか」フィンはウィ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:ロビジュナ お題:見憶えのある水 制限時間:15分 読者:33 人 文字数:1403字 お気に入り:0人
最初の感想は「誰だあれ」だった。俺はロビンフッドの中でも出来の悪い方だと自負しているが、その中でもまぁまぁ頑張ってきたとも思っている。魔力も電力も不足したカルデ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:ロビジュナ お題:小説家たちの唇 制限時間:15分 読者:40 人 文字数:1450字 お気に入り:0人
「あなたにとって、私なんて火遊びにもならないのでしょうね」どんなことが原因だったのか、もう覚えていない。けれども売り言葉に買い言葉。それが私を躍起にさせて、言わ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:私の儀式 制限時間:15分 読者:45 人 文字数:1786字 お気に入り:0人
「言い訳はあるかね」「………無い」カルナは両手を後ろ手に組み、足を肩幅に開いて質問の主を見ていた。ジェロニモは他のメンバーと同じく、カルナへの「勉強」の先生であ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:没カルジュナ お題:初めての宿命 制限時間:15分 読者:40 人 文字数:980字 お気に入り:0人
バタンッ!と大きくドアが閉まる音が響いた。マリーとアルジュナは肩で息をしながらドアに背をつけ、顔を見合わせる。どちらともなく瞳が弧を描き、笑みとなった。「先程の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:限りなく透明に近い命日 制限時間:15分 読者:62 人 文字数:1539字 お気に入り:0人
さて防犯ブザーで呼ばれるのは、何もむくけき男だけではない。カルナはアルジュナの元にはせ参じた三人を見やってチベットスナギツネの形相となった。「うちの子に何か御用 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:かたいオチ 制限時間:15分 読者:65 人 文字数:1572字 お気に入り:0人
「ニューーーーヨーーークヘ、行きたいか~~~~!」「「「ウォォオオオオ!!!」」」赤白青の三色帽子をかぶり、ギターをマイクに見立てて叫んでいるのは信長。その隣で 〈続きを読む〉