ジャンル:FGO お題:早すぎたパラダイス 制限時間:30分 読者:111 人 文字数:2433字 お気に入り:0人

【ジュナごはん】ノッブといっしょ

「お?」

信長が、アルジュナを見かけたのは、本当に偶然だった。
エミヤやタマモキャットが未召喚のこのカルデアでは、食堂には簡素な非常食が山積みになっており、それらをかいつまんで生を繋いでいる職員が殆どである。腹に溜まればいい、という身もふたもない言葉を、心の盾にしているようでもあり、信長にはそれらの意識をわざと避けていた。

基本的にサーヴァントたちにとって食事は不要である。カルデアから送られてくる電力を魔力に変換しており、供給が途切れることはない。空腹感を感じるため、というよりも嗜好品としての食事を摂りたくて非常食に残念がるサーヴァントはいたが、なにせ人手も材料も足りない。
信長は食堂というよりも、そこから続く食糧庫の中から水のみを取り出してきたアルジュナに声をかけた。

「アルジュナ、ちょうどよいところにおったな、お主は幸運じゃぞ!」
「はい、私は幸運であることを自負しておりますが」
「パラメーター的なものを言及するのはつまらん。そこではない」
「そうですか」
「お主はスーパーカーを手に入れたら、どう走るべきか考えるタイプじゃのう」
「はい?」
「型にはまるばかりでは世の享楽のうち半分も得られんぞ」
「……私には不要のものと思います」
「まぁ良いわ、ちょっとこっちに来い」

自分よりも頭一つ分は小さいところにある旋毛は、今は帽子で隠れている。アルジュナは先導する信長についていき、食堂の片隅のテーブルへ腰を下ろした。
アルジュナは自他共に認める強者であったが、その彼がくるまでのカルデアでアーチャーを言えば信長だった。拳銃という武器を使うものの、それが現代に近しい歴史での飛び道具――ひいては弓に近しいものである――ということを聞いてから、アルジュナも信長には表立った不義理をすることはない。自分が召喚された直後は、数少ないアーチャーとしてアレコレと世話を焼いてくれた記憶を持っているからでもある。

四角いテーブルに向かい合わせになった状態で、信長は一つの袋を取り出した。

「ババーーーン! どうじゃ、どうじゃ~! ポテチじゃぞ~!」

四角い袋を、効果音つきで見せびらかされたのだが、アルジュナはそれが何か分からずに首を傾げた。

「ぽてち…?」
「なぬ!? これを知らぬか!? 天下のポテトチップスじゃぞ!? うぅむ、まぁ、お主は職員と仲良くなって菓子をちょろまかすなどということはせんだろうな」
「そんなことをしているのですか、あなたは…」
「ちょちょいーっとこの間のレイシフトの時の話をしてやっただけじゃぞ? それはともかく、ここで会ったのも何かの縁じゃ。特別に相伴に預からせてやろう」
「いえ、私は良いのでご自身で召し上がっては?」
「それじゃワシが心が狭くてみみっちい奴のようではないか! お主は黙って食っておれば良いのだ」

ぱん!と袋を開けた信長は、テーブルの中央で袋を広げる。アルジュナが中身をまじまじと見ると、薄くて、円形がへにゃりへにゃりと曲がりくねった形だと分かる。それらに規則性はなく、たまに割れたもの同士なのかが近くにあり、酷くもろいものであることも見て取れた。

「……食べ物、なのですよね?」
「そうじゃそうじゃ。ほれ、食わんか」

信長はぽいぽいと手袋を脱ぎ捨て、一番おおきなポテトチップスを摘まみ上げる。
大口を開けて、前歯に軽く力を入れれば、パキッ、という軽やかな音と共に軽々と砕かれる。半分ほどが一気に口の中に消え、咀嚼するたびに軽快な音が響く。
最初の一口はいつも、舌先をぴりりと痺れさせる。信長の食べ方を見て、アルジュナもそうっと手を伸ばした。が、手袋をつけたままであったため、信長に止められた。

「汚れるぞ~外せ~」
「はぁ」

その通りに手袋を外し、そうっと一枚を摘まみ上げる。信長が食べているものの、四分の一ほどの大きさのそれを、おずおずと噛んでみる。
カリッという音と共に円形の端が齧り取られる。唇の裏に感じた塩気に、唾液がどっと溢れてくる。舌の上で転がせば、すぐに唾液を吸って柔らかくなる破片は、それでも揚げた直後の香ばしさを残していた。もう一度、アルジュナは指先のそれを齧った。今度は半分ほどを。唾液に絡め取られるよりも早く、奥歯でシャグシャグと噛めば、先程よりも強い香ばしさがすっと鼻腔へ抜けていく。塩気といい、香ばしさといい、そして何よりリズミカルな噛み心地は今までに無いものだった。

初めてのジャンクフードに、アルジュナが思わずもう一枚、もう一枚、と手を伸ばす。できるだけ小さいものを無意識に選び、リスのように端から齧る。しばらくしたところではっとして、そろりと信長の方を見ると、どこから取り出したのかもう一袋、同じようなものを持っていた。

「あの、それは?」
「フッフーン。今食べているのがコンソメ味でな。そしてこちらはのりしお味じゃ!」
「のり…しお…?」
「説明するより食べた方が早いぞ」

バリーンと再び袋を破き、テーブルにもう一つ袋が増える。アルジュナは油でぬるつく指先を持て余しながら、信長とポテトチップスを見比べる。

「ほれほれ、早く食べんか! こんなとこ、他の奴らに見つかったら横取りされてしまう」

ニッ、と白い歯を見せて笑う信長に急かされ、アルジュナは新しく登場したのりしお味も一枚手に取る。やはりそれを微かに齧り、磯の香りがすることに目を瞠った。

「せーっかく人の身を持ったんじゃ。少しくらい気を抜いてもバチは当たらんと思うぞ」

信長が、笑いながら指先を舐める。
アルジュナは何度か、ポテトチップスと自分の指先を交互に見ると、こっそりと舌を伸ばして指先を舐めた。それは大英雄が、一介の王子がするような動作ではなかった。けれど、舌先に感じた塩気は、やはりアルジュナの味蕾を刺激し、次の一枚に手を伸ばさせた。


※王道ジャンクフードとアルジュナ

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