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【しますぐ】君を晒さないで

見開きSS 大人しますぐ(付き合ってる)の結構なシリアス

 何にでも生真面目な勝呂が、無資格でボランティアをしていることを志摩は知っている。看取りの仕事である。明蛇衆も黙認している。本来は、勝呂には介護の資格や研修の上、看取り士になる必要がなる。だが、勝呂はただ一個人として、一人で死期を迎えた人のところに赴く。
下町のドヤ街に赴くことが多い。木賃宿にぎりぎり宿泊できる程度のホームレスを相手にする。することといえば、当人の話を聞き、病状が末期になれば死の床を静かに見守る。きっかけは、ある独居老人が「一人で死にたくない」と寺に駆け込んできたからである。それ以来、どういう口コミが広がったのか、絶え間なく勝呂に依頼が舞い込む。
 デリヘルと同じようなものではないか。などと勝呂に本当にいったら、取り返しがつかないくらい傷つけるだろう、だが時々志摩は叩きつけてやりたくなる。
「達磨和尚の代のときとは別の意味で、サボりがちな和尚やて言われとりますえ」
「言いたいもんには言わしとけばええ。ていう境地やったんやろな、おとんも」
 寺の境内を掃き清める勝呂を、志摩は箒も持たすに傍で見守っている。
「坊、皆の意見とか関係なく言いますけど、やっぱりやめはったらどうですか」
 勝呂は箒を止めずに、「そう言ってくれるのも、何度目だったかいな」と生返事をする。
 志摩は勝呂の箒の柄を握る。
「表の仏教界の付き合いが生臭すぎて、嫌気がさしたんやろ」
 志摩は、抵抗しない勝呂から箒を奪う。
「生臭坊主たちに顎で使われたり時々色目で見られたり、それが嫌になって清そうな世界が恋しくなっただけやろ。偽善や。仏さんのためでなく、坊は自分のためにやっとるだけやろ。見てて胸糞悪いで」
 箒を取られて所在無く立ちすくむ勝呂は、せやな、とだけ返事する。
「せやったら、志摩、俺はお前の本音も聞きたい」
 なんですかそれ、と志摩は鼻を鳴らす。勝呂の草履がズッと石の道を滑る。志摩に近づく。
「俺はお前の言うとおり、胸糞悪い人間や。寺の付き合いに疲れて偽善もしとる。その上、どこかでお前との時間を減らしたことを後悔もしとる。でも、お前の本音を聞いて嫌われるのも怖いとも思うてる」
 もうぐちゃぐちゃや、と勝呂は諦観したような弱い顔で笑う。
 何故、そんなに簡単に弱さを晒すのだろう、面倒くさい方向に考えるのだろうと志摩は苦く感じる。自分は勝呂のように、そんな述懐は絶対に晒したくないし、晒さない。それに、志摩が言いたいこと考えていることはごくシンプルである。
 志摩は腕を伸ばし、ただ勝呂を抱きしめる。
「死にかけのホームレスに頼まれると、こうやって抱きしめてやったりしはるんですか」
「おん」
「俺は、それが嫌なだけです」
 たとえ、死に面した人間にすら、勝呂を一片も譲りたくない。
 志摩の手から箒が落ちる。竹がカランと参道の石に跳ねた。



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