ジャンル:アイドルマスターsideM お題:安い孤島 制限時間:1時間 読者:30 人 文字数:1301字 お気に入り:0人

【P雨】ベッドの上の始まらない僕ら

男の一人暮らしには十分すぎるサイズのベッド。
不満に思うことなどない、これから先も思うことなどないだろうと考えていたベッド。
その上で、なんでこうなってしまったんだか、大の男二人が寝転がっている。
お互いそれなりに良い歳したおっさん二人が、狭いベッドで身を寄せ合っていた。
どんな状況なのだろう。当事者の俺も頭に疑問符を浮かべる。
さっきまでお互いに酒を酌み交わしていたと思うのだが、なんで今二人ともベッドの上にいるんだろうか。
雨彦が此処まで運んでくれたのだろうか。もしそうなら礼を言わねばならないだろう。
だがしかし、俺だけじゃなくなんで雨彦まで一緒に寝ているんだ。
来客用の布団なら別にあるというのに。何故。
いつまでたっても答えの出ない疑問の中、雨彦の声が落とされる。
その声は何処か無邪気で、楽しそうに聞こえた。

「なに難しい顔してるんだい」
「いや、この状況はなんだろうなって思って」
「なんだろうって、そりゃあお前さん」

据え膳って奴だろう、などと楽しげに雨彦が言う。
それは俺とお前のどっちが『据え膳』なんだ、雨彦。

「俺と一緒に寝るのは嫌かい?」
「嫌って言うか、絵面がきつくない? お互いの歳を足したら六十を優に超えるのに」
「…お前さんの冷静さは時々突飛な方向に働くな」

で、嫌なのかい?
俺の横で、雨彦が仏陀の涅槃みたいな恰好で俺に聞く。
流石に後光は射さないらしい。当たり前だが。

「…嫌じゃないです」
「っふ、そうかい」

俺の言葉に、雨彦は嬉しそうに眦を下げる。
最近気付いたことだが、彼が笑うと睫毛の長さがより際立って艶っぽく見えるのだ。
これ、今度の雑誌の撮影で何とか撮れないかな。撮りたいな。
などと、薄らと仕事モードに入ってしまいそうになる俺の頬に、何かが触れる。
何かといえば、まあ、平たく言えば雨彦の指なのだが。

「…雨彦さん?」
「なんだい、お前さん」
「この手はなんでしょうか」
「言ったろう?据え膳だって」
「ううん?答えになっていないような」

はて?と首を捻るが、目の前の雨彦はするりと俺の頬を撫でて唇に弧を描く。
ああ、これは、俺の話は聞いてないな、これ。

「あめひこ」
「なに、悪いようにはしないさ。ちょいとばかりイイコトをしようと思ってね」

ふふ、と笑った雨彦からはアルコールの甘い匂いがした。

「もしかしなくても酔ってるな、お前」
「さあて、どうだかね」

そう言って、俺のシャツのボタンを一つ一つ外していく。
ゆっくりと肌が外気に晒されて、肌が粟立った。
ううん、参った。どうにも、抵抗する気が起きない。酒のせいか。酒のせいだ、きっと。
俺は考えを放棄する。
目の前の雨彦があまりにも楽しそうで、抗う気力も沸いてこない。

「さあて、今夜は二人きりだ。夜も長い。十分に楽しもうや、お前さん?」
「うん、それはいいんだけどさ」
「ん?」

二人きりの長い夜。
小さなベッドのささやかな密事。
ワードだけ並べれば十分すぎるくらいに官能的なのだが。

「…電気だけは消して」

生娘のような俺の発言に、雨彦の笑い声が木霊した。

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