ジャンル:カルジュナ お題:ロシア式のドロドロ 制限時間:15分 読者:262 人 文字数:1441字 お気に入り:0人

【カルジュナ】小説家x小さい婚約者2

以前、アルジュナはカルナに一つ、聞いたことがある。

『好きってひとと好きってひとがいっしょにいるのに、どうしていけないんでしょう』

それは読み聞かせに持ってきた古い絵本だった。にんぎょひめ、と銘打たれたその中身をアルジュナは悲しそうに聞いていた。
いくつもいくつもを、お泊り用の鞄に入れてきた。アルジュナはカルナの家に泊まる時に、必ず絵本を持ってきた。絵本を読まれている間は、アルジュナは多忙な家族から置き去りにされている感覚を忘れることができたのだ。

『きつねさんも、たぬきさんもダメなのですか』

アルジュナが持ってきた『新訳:遠野物語』というところに些かのひっかかりを覚えたものの、カルナはアルジュナの形の整った頭を無言で撫でてやる。カルナはアルジュナの多感な感覚を衰えさせたくは無かった。
空を美しいと思うのも、花を愛でようと思うのも、それらを教えられたからではない。愛しいと思う心が育っていなければ、それらは視界認識の情報のみで流れていく。
言語情報で流れていくだけだったそれに、意味を持たせ、疑問にまで育てたのはアルジュナだ。カルナはそれを潰したくは無かった。清廉な水を与え、肥厚なほどの栄養の層を重ねて、アルジュナの心を守りたかった。
だからカルナはこう答えた。

『――お前が思えば、思うだけ』

カルナの言葉は、正しく実行された。






「――ですからぁ、このシリーズの続きですってばぁ!」
「そっちは先月も短編もらってたでしょーがっ! 今度はこっち!」

狐面出版社の編集者、玉藻と、新緑出版社の、同じく編集者であるロビン。その二人がカルナの前でいよいよ火花どころか流血沙汰を起こしそうに睨みあっている。

「どちらも書くが」
「いやいやムリでしょ! アンタ自分のスケジュール分かって言ってます!?」
「そうですよ! カルナっちさん、『謝罪探偵すまないさん』の一冊目も十五回目の重版かかってんですから!」
「ふむ」

現在、カルナは三つの出版社と契約をしている。それもこれも、来るもの拒まず仕事を受けていたからなのだが。
カルナはアルジュナの『次に勝ち取った話が、アルジュナが十六歳になるまで続いていたら結婚する』という言葉を信じて、今も小説を書き続けている。
初のシリーズものとなった謝罪探偵シリーズは、今や一年一回のペースで刊行され、時に番外編として文学雑誌に四千字程度のものを載せている。これでも十分、シリーズが続いていると言えるだろう。
それに加えて、玉藻とは『週末伊勢丹審問』、ロビンとは『あした花咲く薔薇園で』というシリーズを出している。

「……カルナ、あまり、困らせてはいけませんよ」

中学に上がったアルジュナが、はぁ、と溜め息をつきながら客間を横切り、自室へ戻る。
エスカレーター式である、名門パーンダヴァ校に通うアルジュナは、カルナの家の方が近いため、中学に上がったときからカルナと同居をしている。

「おかえり、アルジュナ」
「……ただいま帰りました」

以前のようにひっついてくるでもない。カルナが話しかけなければ事務的な会話しかしない。それでも挨拶だけはしっかり返してくれる。


「やはりもう一本書こう。内容は狸と狐の婚姻ものにしよう」
「過労で死にたいんですかぁ!?」
「好き同士ならば、障害はなにもないということを知らしめなければ」
「はぁ??」

カルナはまだ、アルジュナとの約束を覚えている。
全部、覚えている。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


見つかりませんでした。

梟光司の即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:戦争と悪人 制限時間:15分 読者:33 人 文字数:1468字 お気に入り:0人
従業員の顔が一瞬で青褪め、道を開けた。というよりも、脱兎のごとく逃げ出した。カルナとビリーは一気に走り出し、ピアノの乗るステージの横を通り抜けて二階への階段に足 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:もしかして凡人 制限時間:15分 読者:28 人 文字数:1258字 お気に入り:0人
ガゴンッ!と車体が揺れ、カルナが一瞬だけシートから浮く。咄嗟に庇ったベレッタをセットし直しながらフィンを見ると、どうやら運転席から何かを外へと投げているようだっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:愛のプレゼント 制限時間:15分 読者:41 人 文字数:1297字 お気に入り:0人
「大層なご登場なこって」「いつもはデスクワークばかりだからね。たまに現場に戻ると良い刺激になる」「まぁいいや、カルナが君と行くと申し出た」「そうか」フィンはウィ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:ロビジュナ お題:見憶えのある水 制限時間:15分 読者:33 人 文字数:1403字 お気に入り:0人
最初の感想は「誰だあれ」だった。俺はロビンフッドの中でも出来の悪い方だと自負しているが、その中でもまぁまぁ頑張ってきたとも思っている。魔力も電力も不足したカルデ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:ロビジュナ お題:小説家たちの唇 制限時間:15分 読者:40 人 文字数:1450字 お気に入り:0人
「あなたにとって、私なんて火遊びにもならないのでしょうね」どんなことが原因だったのか、もう覚えていない。けれども売り言葉に買い言葉。それが私を躍起にさせて、言わ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:私の儀式 制限時間:15分 読者:43 人 文字数:1786字 お気に入り:0人
「言い訳はあるかね」「………無い」カルナは両手を後ろ手に組み、足を肩幅に開いて質問の主を見ていた。ジェロニモは他のメンバーと同じく、カルナへの「勉強」の先生であ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:没カルジュナ お題:初めての宿命 制限時間:15分 読者:40 人 文字数:980字 お気に入り:0人
バタンッ!と大きくドアが閉まる音が響いた。マリーとアルジュナは肩で息をしながらドアに背をつけ、顔を見合わせる。どちらともなく瞳が弧を描き、笑みとなった。「先程の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:限りなく透明に近い命日 制限時間:15分 読者:62 人 文字数:1539字 お気に入り:0人
さて防犯ブザーで呼ばれるのは、何もむくけき男だけではない。カルナはアルジュナの元にはせ参じた三人を見やってチベットスナギツネの形相となった。「うちの子に何か御用 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:かたいオチ 制限時間:15分 読者:62 人 文字数:1572字 お気に入り:0人
「ニューーーーヨーーークヘ、行きたいか~~~~!」「「「ウォォオオオオ!!!」」」赤白青の三色帽子をかぶり、ギターをマイクに見立てて叫んでいるのは信長。その隣で 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:少女の家 制限時間:15分 読者:179 人 文字数:1329字 お気に入り:0人
困ったことになった。カルナはポーカーフェイスを司る一方で、背中に滝のような冷や汗をかきながら正座をしていた。「カルナ、この本はなんですか?」アルジュナがカルナに 〈続きを読む〉