ジャンル:アルスマグナ 紫赤 お題:大きな光 制限時間:1時間 読者:310 人 文字数:1938字 お気に入り:0人
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ただの人間

「アキラ~♪」


『先生、なんすか?』


「いつになったら付き合ってくれんの?」


『いつになっても付き合いませんよ』


「えー!!冷たいなぁアキラは」


こんな風に、今日も先生からの告白をさらっと流す。


一番初めはすごくびっくりしたし、正直嬉しくてしょうがなかった。


でもやっぱり、現実的に考えてダメなんだ。


生徒と教師の恋愛


男同士の恋愛


年の差……


何をとっても、普通でないことばかりだから。


もしばれたときに、俺より先生の方が処罰は大きいだろう。


そう考えると


はい、いいです付き合いましょなんて言えたものではない。


ただ…俺も先生のことが好きで


本当は付き合いたいし、気持ちを伝えたい。


こうしてる間にも、先生の気持ちが薄れていってしまっているんじゃないかって恐くなる。


せめて、せめて俺が高校を卒業したら…


言っても、いいのかな。







俺がそんなことを考えてるとも知らず、先生はまたいつものようにふざけたような口調で告白をしてくる。


「アキラ~、もう観念して付き合ってくれよ~」


『無理です。ってか勝手に人の部屋入んないでくださいよ』


「いいじゃん、家庭訪問家庭訪問」


『はぁ…』


本当に、人の気も知らないで…


俺は何かしようと雑誌を手に取り読み初めた。


まぁ、内容は全然入ってこないんだけど。


数秒間の沈黙のあと、先生が俺に話しかけてきた。


「アキラ」


『なんすか?』


「…緊張してる?」


『え?』


すごく近くで声が聞こえ、振り向くとすぐ目の前に先生が前屈みになって立っていた。


「震えてるよ、手」


雑誌を持つ手に、先生の手が重なる。


それだけなのに、体が強ばって


胸の鼓動が速くなる。


「どうして?」


『……』


しばらく先生と見つめあっていたけど、我慢できなくて自分からそらした。


「ダーメ」


『んっ…』


重ねていた手で雑誌を取られ、反対の手を俺の頬に添える。


自然とまた目があって、今度はそらしたいのにそらせない。


あまりにも、真っ直ぐすぎて……


先生の紫の目に吸い込まれそうな感覚に、さらに体が強ばっていく。


「…キス、していい?」


『…………


ダメ……です…』


「なんで?」


『…生徒と教師は、そんなことしないから』


「生徒と教師じゃなきゃ、いいんだ?」


『え、』


「俺が教師じゃなくて、お前も俺の生徒じゃなかったら


お前は今、俺とキスしてくれてたんだ?」


『!』


「なぁ…アキラ…理由はそれだけなんだよな?


お前…本当は俺のことどう思ってんの?」


いつもふざけてるくせに、急に真面目になったりするから


いつもみたいに、冷静に答えを返せない。


『だ、だって俺、男だし、まだ高校生だし


先生とキスとかすんの、普通じゃないよ』


「…だから!!」


先生は俺を挟むように、机に手をついて


さっきよりも近い位置で、見つめてくる。


「男とか、年とか、普通とか!


そう言うの抜きにしたら、お前は俺とキスできんのかって聞いてんの!


付き合ってないからとか、自分は俺のこと好きじゃないからとか、そういう


お前の気持ちは!どうなんだよ!」


『……』


そんなの、思い付くわけない。


だって、実際そうだから。


世間の事情とか、普通とか、全部なくなったら


俺はここで……


「………アキラ。


今、さっき言った理由全部無しにして


ただの“九瓏ケント”が、ただの“神生アキラ”にキスしたいっていったら、どうする?」


『…………もし、


もしそんなことができんなら


俺は…



俺は…






“九瓏ケント”が好きだから、いいですよって、言います』


俺達がただの人間っていう概念だけの存在だったなら


愛し合うなんて自然の摂理にしか過ぎなくて


もっともっと簡単に、上手く物事は進んでいくのに。


そんなこと出来ないから


出来るわけ、ないから


今、この空間だけ


この時間だけでも


ただの人間として、この人と愛し合ってたい。


重ねた唇の感触も


頬に触れた手の体温も


自分の気持ちを伝えられたことも


決して、忘れたくない。


ずっと俺達


ただの人間でいれたらいいのに。


でも叶わないから


今の居心地のいい空間、時間があって


まるで世界から隔離されてしまったような


そんな、素晴らしい気分なんだ。


エンド

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