ジャンル:忍たま乱太郎 お題:箱の中のコンサルタント 制限時間:2時間 読者:111 人 文字数:1703字 お気に入り:0人

【白出茂】溜息の行方



 私の中にも夢はたくさんあったはずである。今でももちろんないわけではない。
 しかし日々流れる時間がそれを押し流す。夢を思い描くのは感傷に浸りたい一瞬だけだ。

「鹿之介さん、どうしたんですか? 疲れてます?」
「どうしてそう思う」
 白南風丸の肩口に背中を向け頭を乗せていると相当に気が緩んだのかもしれない。落ちてくる低めの落ち着いた声もそれを増幅する。

「ため息が三回目です」
 私の後ろで獲物の修補を黙々とこなしていると思っていたが、溜息の回数は数えているのか。

「どうだろうな……疲れているのかもしれん」

「仕事、大変なんですか?」

「楽な仕事ではないからな」
 だから未だに楽な仕事を求めて奔走しているが、それ自体も楽ではないから結局そういうことなのだろう。

「そうですね……」
 白南風丸はそう言うと手を止めて身体の向きを変えた。そうすると当然私の頭は肩口からずり落ち白南風丸の太腿で止まることになる。

「なんだ?」
 もちろん腹筋を使い体勢を維持することもできたが、白南風丸と私はもうそんな緊張感のある関係ではないので、落ちてくる目線に「動くなら動くと言え」という多少の不満を乗せた顔を返す。

「俺、今日、仕事で一度もヘマをしなかったんですよ」

「まぁ仕事でヘマをしないのは当たり前のことだがな」
 そんな私の軽口などそもそも気にしない白南風丸ではあるが、最近は特にそれすら好意的に受け止めるのでますます遠慮のない物言いになってしまう。

「そうなんですけど、それでも俺、自分の仕事に満足できるようになってきてるって感じるんです」

「よかったじゃないか」
 水軍の仕事とて全てが全て後ろ暗くないわけではない。それでも私の仕事に比べれば随分とお天道さまに照らされている仕事だろう。そして自己評価が決して高くはない白南風丸がそういうのだ。
 もうこういう関係になってしまっては認めざるをえないが白南風丸の笑顔は人を素直にさせる力がある。

「鹿之介さんはどうですか?」

 この仕事は仕事自体に満足を感じるものだろうか。達成感という意味では他の仕事にはない醍醐味があるだろう。しかし結局は権力の手先であり使い走りだ。もちろんそれでいいのだろうし、手先がなければ体《権力》は動けない。歯車になれる人間は優秀な証だ。歪な歯車ではそもそも仕事にならない。
 しかし、白南風丸のように満面の笑みを浮かべるような仕事ではない。時には人を陥れ、時には人を殺めることもある。別にそれを後悔することもないがそれは常に危険と隣り合わせだ。それに快感を覚える者もいるだろうが私はそうではない。

「自分の満足のためにこの仕事をしているわけじゃないからわからん」
 そう答える。

「鹿之介さんの仕事って秘密が多いから俺にはよくわかりませんけど、そう思えるのって相当な満足じゃないかと思うんですけど」

「……そうかもしれんな」
 そしてこの男は核心を突くのだ。こいつが周りに好かれるのもわからないでもない。

「でも疲れてるんだったら寝てください。寝ると疲れが取れます。俺、腕枕しましょうか?」
 そして最近は調子に乗っている。いや実際はそんなことはないのだろう。初めからそうなのだろう。しかしこんなことを言われて私が内心平気でいられると思っているのだろうか。こいつの中の私はどんな想像をされているのだ。

「白南風丸。お前はそれをわかって言ってるのか?」

「え? 何がですか?」

「何がですか? じゃないな。そういう台詞を誘い文句以外で使うなと何度か言った記憶があるが?」

「あ、そうでしたっけ? あ、でも、そういうことならそういうことでもいいですよ!」

「……わかった。そうさせてもらおう」


 溜息をつくような夜があっても、それが一息になること、疲れを取る清涼にすらなるということがある。本人にそんなつもりは毛頭ないだろうが白南風丸は助言者だ。
 感傷を押し流すほどの力で熱を与えてくれる。だから以前ほどは夢を思い描くこともなくなった。だから、少しつづ取り出していくのだ。


同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:yano ジャンル:忍たま乱太郎 お題:犬のあいつ 制限時間:2時間 読者:616 人 文字数:1418字 お気に入り:0人
(犬猿と鉢屋)学級委員長委員会の五年は狐と狸と呼ばれている。確かに人を飄々と化かす鉢屋は狐で、同じようでもどこか能天気さを感じさせる尾浜は狸だ。しかし、俺には鉢 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:忍たま乱太郎 お題:小説の中の道のり 制限時間:2時間 読者:1009 人 文字数:3577字 お気に入り:0人
あな、おそろしの道ゆきや紅(あか)ひといろの波寄せて、足袋の滑れば、鬼谷(きこく)なる「袖の水瀬(みなせ)の増すは、ただ、二つのみなる影を泣く、おぼつかなしと、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:忍たま乱太郎 お題:夜と大地 制限時間:2時間 読者:714 人 文字数:674字 お気に入り:0人
(久々知と鉢屋)「兵助、忘れ物。」「…忘れてるんじゃない、置いていくの。火縄銃って嫌いなんだよ。」「なに言ってんの。その優秀な火縄の腕でこの任務頼まれてんだろ。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:みさく ジャンル:忍たま乱太郎 お題:うわ・・・私の年収、兄弟 制限時間:2時間 読者:622 人 文字数:1671字 お気に入り:0人
僕は不破雷蔵。現代では小さな病院で町医者をやっている。おじいさんおばあさんの笑顔が毎日の励みだ。なんて嘘くさいことを言いながら、毎日消毒液の匂いのする職場で安っ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:柳真壱/10月からツイ減するよ ジャンル:忍たま乱太郎 お題:去年のガール 制限時間:2時間 読者:830 人 文字数:781字 お気に入り:0人
「こんばんは」「なんでそんな他人行儀なんだよ」時刻は午後九時を少し回った頃で、青白いディスプレイには二人の青年の顔が映し出されている。インターネットの無料通話サ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:香@難波十色で久々知! ジャンル:忍たま乱太郎 お題:栄光の病気 制限時間:2時間 読者:946 人 文字数:1789字 お気に入り:0人
フォロワーさんを忍たま化!※フォロワーさんの名前をお借りして勝手に私が考えたオリジナルキャラになりますので、苦手な方はご注意下さい。以前あげた【戦いの終わりに】 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:香@難波十色で久々知! ジャンル:忍たま乱太郎 お題:俺のぬくもり 制限時間:2時間 読者:766 人 文字数:2013字 お気に入り:0人
「あっちー……」こんな暑い日に集まろうと言い出したのは、確か勘右衛門だったな。後で文句の一つでも言ってやろう。それからアイスでも奢らせてやるか。俺が集合場所に着 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:忍たま乱太郎 お題:信用のないキス 制限時間:30分 読者:92 人 文字数:1340字 お気に入り:0人
その日は珍しく作法室にすでに喜八郎がいて、なんと掃除もしていた。いつもならば最後にきて好き勝手やって帰っていくというのにまだ部活も始まっていない。さらに今日の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:忍たま乱太郎 お題:朝の多数派 制限時間:30分 読者:167 人 文字数:1523字 お気に入り:0人
まだ外が暗く冷たい空気が部屋を支配している中、伊作はゆっくりと目を開けた。春とはいえ、冬の空気がまだ消えきっていないこの季節は朝に冷え込む。隣で寝ている同室を 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:古白(こはく) ジャンル:忍たま乱太郎 お題:希望の、と彼女は言った 制限時間:30分 読者:198 人 文字数:1065字 お気に入り:0人
海に言葉にならぬ異変を感じ、一人小船を漕ぎ出したはいいが鬼蜘蛛丸は自分でもどうすればいいのかよくわからなくなった。「少し見回りでもするか…」艪を漕ぎ、波をかき分 〈続きを読む〉

志木の即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:志木 ジャンル:忍たま乱太郎 お題:箱の中のコンサルタント 制限時間:2時間 読者:111 人 文字数:1703字 お気に入り:0人
私の中にも夢はたくさんあったはずである。今でももちろんないわけではない。 しかし日々流れる時間がそれを押し流す。夢を思い描くのは感傷に浸りたい一瞬だけだ。「鹿 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:志木 ジャンル:忍たま乱太郎 お題:ナウい恋 制限時間:30分 読者:371 人 文字数:705字 お気に入り:0人
出茂鹿さんに言わせると、俺は匂いに拘りがあるらしい。それは出茂鹿さんにだけですよと言うけど、「それはそれで気○いだ」と言われる。 好いている人の匂いが好きにな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:志木 ジャンル:忍たま乱太郎 お題:ロシア式の罪人 制限時間:1時間 読者:471 人 文字数:1184字 お気に入り:0人
広い広いこの海の向こうには何があるのだろうか。「この海の向こうに何があるか知っているか?」 京の都は知っている、琵琶湖も知っているが、まだその先に話でしか聞い 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:志木 ジャンル:忍たま乱太郎 お題:悔しいドロドロ 制限時間:30分 読者:495 人 文字数:647字 お気に入り:0人
情念が体中を支配する。 こんな気持ちがあるなんて考えもしなかった。 もし、出茂鹿さんが俺以外の人を好いていたら……なんて考えたら真っ黒な波が体中を巡り渡る。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:志木 ジャンル:忍たま乱太郎 お題:臆病な交わり 制限時間:1時間 読者:735 人 文字数:1140字 お気に入り:0人
「出茂鹿さんを見ているとムラムラするんです」「ふん……。ヘタレな君がそんな直截なことを言うとはな」 それが事の発端。「君のその気持ちが何処から来るのか確かめるか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:志木 ジャンル:忍たま乱太郎 お題:死にぞこないの酒 制限時間:1時間 読者:514 人 文字数:1515字 お気に入り:0人
波音で目が覚める。朝だとわかる波音が体に染み付いている。 隣に温もりに気付いて顔を向けると出茂鹿さんがくっつくようにして眠っていた。 昨夜は出茂鹿さんを勢い余 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:志木 ジャンル:忍たま乱太郎 お題:東京人 制限時間:1時間 読者:819 人 文字数:1652字 お気に入り:0人
京にある扇子屋「小松田屋」に手伝いに行くようになった切欠はもちろんへっぽこ事務員の小松田秀作のお陰だが、それは一度きりでよかった筈で、それ以降も度々手伝いに行 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:志木 ジャンル:忍たま乱太郎 お題:小説家のパラダイス 制限時間:1時間 読者:576 人 文字数:1351字 お気に入り:0人
白南風丸が私に好意を抱いているのはわかっている。そしてそれが色を含んでいることも。 しかし「泊まって行きませんか?」と言い出した本人がこの有り様とはどういうこ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:志木 ジャンル:忍たま乱太郎 お題:馬鹿なエデン 制限時間:1時間 読者:571 人 文字数:887字 お気に入り:0人
理想などというものは理想に留めておくべきものだ。 平穏というものは常に身近に置いておきたいものだ。 そしてどちらも何処にでもあって何処にでもないものには違いな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:志木 ジャンル:忍たま乱太郎 お題:1000の妄想 制限時間:1時間 読者:470 人 文字数:1169字 お気に入り:0人
出茂鹿さんへの便りを書くのは何通目だろうか。 俺は肝心なときにヘタレで、その度に周りの人達に助けてもらってなんとか乗り越えてきた。 そんなヘタレな俺だから、出 〈続きを読む〉