【ロビジュナ】あみだくじの恋人
「あみだくじで恋人を決めたんです」
へぇ、と笑ってやれる時間はあっちこっちに飛び去って、目の前で笑う宇宙人はやっぱり極上の笑みを浮かべていた。
ふわりと揺れるあみだくじ。確かにそこには五人の候補者。あなたはかぐや姫ですかね。聞いてみたかったけれど、やめておいた。まだ、死に近付くには早い気がしたのだ。
「名誉ある恋人に、こんな一般人を入れちまったアンタに同情しますよ」
「そうでしょうか。私、きちんと昨日、雷に祈りましたよ」
「へぇ?」
「『私を一番愛してくれる人にしてください』と」
柔和な笑みは輝きを増し、背後に背負う太陽の光とあいまって、まったくひとつの宗教画みたいな強さを誇っている。
目の前の美丈夫は、ゆくゆくはこの学校の生徒会長になるだろうというもっぱらの噂の一年生で、そのチョコレートのような肌とブラックダイアモンドのような瞳は女子学生の視線を集めて止まない。良くも悪くも完璧な、ロビンとは真逆の孤高を貫く彼は、遠くから見る観賞用の造花に似ていた。
「それこそ、隣の学校の生徒会長候補とかどうよ」
「あれはライバルのようなものであって、私の恋人にはなれなさそうです」
「いつもつるんでる青い髪の槍投げ部」
「ちょっと癇癪もちの子供みたいなものです。弟という感じがしませんか?」
「うーん、現生徒会長」
「金ぴかすぎて、色が好きじゃないです」
いくつか、彼を取り巻く名前を挙げてみるもぴんとこないらしい。ならば、そのあみだくじは最初から八百長だったのではないか? とも思うのだが、そうするとアルジュナが必ずロビンを選ぶべきという矛盾にたどり着いてしまう。くじなのだから、最初から答えが決まっているわけではない。
「ちなみにこれは誰が用意したんですか」
「私の友人が」
りつかというのです。そう言うアルジュナの表情は穏やかな海の凪ぎのようであった。そのりつかも、はたして友人と言えるのか。こんなくじ一つで、他人の運命を決めるのだと、アルジュナのこれからを決めるのだと、分かってやっているのだろうか。
考えれば考えるだけ、ロビンの眉間にしわが寄っていく。
「ロビンフッド」
アルジュナの呼びかけに、はっと視線を寄越せば微笑まれる。ロビンは、アルジュナが自分の名前を知っていたということに驚愕してしまい、次の言葉がなかなか出てこなくなる。
「私、言いましたでしょう。昨日、きちんと祈りましたと」
「は……はぁ、まぁ」
「ですから大丈夫です。きっと、あなたが私を愛してくれると信じています」
完敗だ。君の完勝。
そんな、太陽を打ち落としてきたみたいな、LEDを何百の単位で集めたってとうてい敵わない笑みを浮かべるなんて。
ロビンはしばらく口を無意味に開閉させたあと、「はぁ」と、返事になるのかならないのか不明な声だけを落とした。
アルジュナはロビンの目の前でなおも微笑み続けている。それが、あみだくじによるものである、という点を除けば、ロビンにはもう、手を伸ばさない理由は無かった。
届かないところにあった星が落ちてきて、太陽みたいに輝いている。ロビンを中心にした衛星となり、宇宙に歌を散らばせながら、今日の幸福を歌い続ける。
「よろしくお願いします。私、あなたの名前以外知らないんですから」
こうして不可思議なあみだくじの恋人ができたのだった。
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