ジャンル:東方Project お題:昔の職業 制限時間:30分 読者:166 人 文字数:924字 お気に入り:0人
[削除]

【マリアリ】彼女の残り香

 「アリスはさ」

 昼下がりだった。森の重い緑を抜けて窓に差し込む柔らかい光。それを浴びて光る金髪。紅茶のカップを半ば傾けたまま、ぼんやりした視線が目の前のテーブルを通り過ぎて揺蕩った。

 「なんで、魔法使いになったんだ?」
 「……なによ、その質問」

 確か、その前の話題は冬の寒さについてだった筈だ。あの子が自縛じみたマフラーのくるまり方をして私の家に飛び込んできて、家に入ってからたっぷり3分は寒いしか言わなかった。それで私は呆れて紅茶を淹れて、あの子のお気に入りの窓際、ぽかぽかした陽だまりの当たる席に毛布を添えて座らせてやったのだ。
 まさか寒さに勝つために魔法使いになろうかと思った、なんて言うんじゃないわよね。そう瞳で問うてみたけれど、彼女は呆けたような眼差しを明後日へ向けたままだった。

 「──私、」

 開きかけた唇は何度か小さく震えた。ふっと目を伏せた表情は、いままで見たことのないものだった。血の気のない頬を日差しが滑り落ちていった。
 綺麗、そんな感想を人間なんて生物に抱いたのはあれがはじめてで、きっと最後だった。

 「私、……」
 「いいじゃない、別に。急がなくたって」

 だけど、私の人形以外に綺麗なものの取り扱い方なんてわからなくて、私はあのとき途方に暮れたのだ。

 「なりたいならなればいい。迷ってるならまだ迷う時間はあるでしょう?人間なんてすぐ死ぬものだけど、それでも、まだ」

 微かにでも揺らせば零れそうな中身を、いつもの魔理沙で覆い隠してほしかった。
 触れることに怯えて、それでも触れたいだなんて、そんなふうに思うようになりたくなかった。
 だってそんなの、まるで恋のようだ。

 「……、……そう、だよな」

 魔理沙は笑った。いつもどおりに。私の心臓が甘く痛んだ。
 昔の話だ。
 なにもかも。
 魔法使いにならない彼女は、人間のままの彼女は、恋の魔法は、少女がおとなになるにつれて衰えていく他ないのに。
 人間のまま隣にいてくれるなんて予測は、あまりにも拙くて甘かった。
 昔の話だ。おとなの彼女が人里へ帰ってもう何年と経つ。
 職業魔法使いのあの子はもう、この家に来ることはない。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:あどそ ジャンル:東方Project お題:昨日の内側 制限時間:30分 読者:75 人 文字数:2249字 お気に入り:0人
昨日内側外側なんの内と外なんだ?三途の川・・・とか?境界があるもの。内訳。外側の人から見て。なんの?昨日の話になってくる。伝聞?語り口調か?「昨日は”内側”はど 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:苔地蔵 ジャンル:東方Project お題:疲れた宴 制限時間:30分 読者:214 人 文字数:1025字 お気に入り:0人
「はあ…なんであいつら好き放題やって片付けやら何やらは全部私一人にやらせるのかしら」私、博麗霊夢は辟易していた月に一回、何故か博麗神社で人妖問わずの大宴会が行わ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:かぼちゃ ジャンル:東方Project お題:計算ずくめの天才 制限時間:30分 読者:187 人 文字数:1287字 お気に入り:0人
夏の匂いというべきなのだろうか、それとも、東京の匂いなのだろうか? それか、私にしか感じられない匂いなのだろうか?さあ? 少なくとも、京都に住むみんなにはわかっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:苔地蔵 ジャンル:東方Project お題:弱いギャグ 制限時間:30分 読者:228 人 文字数:397字 お気に入り:0人
「文さ〜ん!また早苗がいじめるんですよー!」椛が私の家の扉を開けて泣きついてくる「もう、仕方ないですねえ椛は…はい、刀と盾です。これ持って頑張ってきて下さい」ボ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
霊夢と早苗 ※未完
作者:苔地蔵 ジャンル:東方Project お題:綺麗な怒り 制限時間:30分 読者:221 人 文字数:185字 お気に入り:0人
「何か、言う事は?」お祓い棒を携えた霊夢さんが歩いてくる「妖怪退治は…必要な事なんです」まだズキズキと痛む身体を無理やり起こして答える「この状況を見てもまだ必要 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:苔地蔵 ジャンル:東方Project お題:幸福な失踪 制限時間:30分 読者:257 人 文字数:738字 お気に入り:0人
「ねえ妖夢。満開になった西行妖は綺麗ね」それだけ言い残して、私の主人は…幽々子様は消えてしまった。西行妖を見ながら、嬉しさの中にひとかけらの寂しさを交えた笑顔で 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:かぼちゃ ジャンル:東方Project お題:狡猾な警察官 制限時間:30分 読者:338 人 文字数:1574字 お気に入り:0人
響子は激怒した。イルでドープなリリシストを目指していたのだ。ギャングスターでFxxk Tha Policeの精神だったのだ。「いや……仕事もないし犯罪もないし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:どんだけー ジャンル:東方Project お題:破天荒なヒーロー 制限時間:30分 読者:226 人 文字数:660字 お気に入り:0人
東風谷早苗は暇を持て余していた。 朝から二神はどこかへ出かけ、守矢神社に一人きりでお留守番状態だったのだ。夕方からは用事があるからそれまで神社にいてねとのこと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:かぼちゃ ジャンル:東方Project お題:せつない猫 制限時間:30分 読者:395 人 文字数:1972字 お気に入り:0人
恨みがましい気分を抱いたのは確かだった。だが、それよりも寂しいと思う気分の方が強かった。 雨は強かった。雨自体は、さほど気にならない。全く気にならないわけでは 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:沈船4 ジャンル:東方Project お題:ゆるふわな小説新人賞 制限時間:30分 読者:361 人 文字数:914字 お気に入り:0人
「ねえ小鈴、何を読んでるの?」 いつも通りに鈴奈庵を訪れた阿求は、真剣な表情で本を読む小鈴に声をかけた。 声に反応した小鈴は、阿求の姿を確認すると、さっとしおり 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:Fate/Grand Order お題:僕の好きな消しゴム 制限時間:30分 読者:28 人 文字数:1515字 お気に入り:0人
王子!と呼び止める者のあるのを、分かっていて、聞こえていてヘクトールは走った。急いでいたからだった。手には熟れた実を一つ握りしめている。呼ぼうとして名前をうま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:千銃士 お題:汚い土地 必須要素:右肩 制限時間:1時間 読者:8 人 文字数:438字 お気に入り:0人
世界帝による圧政が続く中 自由、尊厳を求め立ち上がったレジスタンスしかし武力の差は大きく レジスタンスを掃討すべく放たれた新型兵器により土地は穢れ レジスタンス 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:少女☆歌劇レヴュースタァライト お題:どす黒い犬 必須要素:武田鉄矢 制限時間:1時間 読者:10 人 文字数:1886字 お気に入り:0人
リビングのテレビをつけると随分と懐かしいドラマを放送していた。今後の参考にでもと思い、そのままソファに居座ると、どこからともなく甘い香りを漂わせたルームメイトが 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:テニスの王子様 お題:3月のサッカー 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:636字 お気に入り:0人
「おかしいくないっすか」 四月を目前にして、まだ冬の名残のある風に自分で暖を取ろうと肩を竦めて自分を抱きしめる。どちらかというと暑さよりは寒いほうに強いが、それ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:咲-Saki- お題:めっちゃ木 必須要素:甘栗 制限時間:30分 読者:31 人 文字数:801字 お気に入り:0人
「甘栗食べたくない?」「食べたいけど何?山から栗拾ってきたの?」秋のしずは毎日のように山へ行く。栗拾いにキノコ狩り、紅葉狩りetc..秋の山には食材がたっぷりあ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:咲-Saki- お題:めっちゃ木 必須要素:甘栗 制限時間:30分 読者:35 人 文字数:934字 お気に入り:0人
「ねえねえすこやん。すこやんの高校時代の文学祭の映像見たんだけどさ」「…は?」正直こーこちゃんが言ってることが理解できなかった。どうして彼女が私の高校時代の映像 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:咲-Saki- お題:大人の魚 必須要素: 制限時間:30分 読者:32 人 文字数:1140字 お気に入り:0人
「小鍛冶プロは出世魚ってご存知ですか?」隣で一緒に水槽を眺めている赤土さんがそう呟いた。今日は対局や解説もない普通の休日でこーこちゃんもお仕事だしお家でノンビリ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:主役は我々だ! お題:振り向けばそこに出会い 必須要素:1000字以上 制限時間:4時間 読者:25 人 文字数:2613字 お気に入り:0人
「ブゥゥゥン!」無邪気な声が聞こえる。それはお気に入りの飛行機を持って庭をかけるような幼い子供の声……などでは決してなく、背にエリトラをつけて屋上から滑空してき 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:昼間の体験 制限時間:1時間 読者:14 人 文字数:984字 お気に入り:0人
これは、あるところの子孫とその守り刀の話である。最近主の様子がどうにもおかしいと話しているもの達がいた。その人らの名は、薬研藤四郎、後藤藤四郎、厚藤四郎、信濃藤 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
【腐】無題。 ※未完
作者:匿名さん ジャンル:growth。【腐】 お題:鈍い木 必須要素: 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:805字 お気に入り:0人
まもちゃん、誕生日おめでとう!涼→?衛****『空が渋滞してる。』現場は違えど、偶々二人での帰り道だった。綺麗な臙脂色の髪で目元を隠してポツリと呟いた一言に、不 〈続きを読む〉