ジャンル:東方Project お題:昔の職業 制限時間:30分 読者:131 人 文字数:924字 お気に入り:0人
[削除]

【マリアリ】彼女の残り香

 「アリスはさ」

 昼下がりだった。森の重い緑を抜けて窓に差し込む柔らかい光。それを浴びて光る金髪。紅茶のカップを半ば傾けたまま、ぼんやりした視線が目の前のテーブルを通り過ぎて揺蕩った。

 「なんで、魔法使いになったんだ?」
 「……なによ、その質問」

 確か、その前の話題は冬の寒さについてだった筈だ。あの子が自縛じみたマフラーのくるまり方をして私の家に飛び込んできて、家に入ってからたっぷり3分は寒いしか言わなかった。それで私は呆れて紅茶を淹れて、あの子のお気に入りの窓際、ぽかぽかした陽だまりの当たる席に毛布を添えて座らせてやったのだ。
 まさか寒さに勝つために魔法使いになろうかと思った、なんて言うんじゃないわよね。そう瞳で問うてみたけれど、彼女は呆けたような眼差しを明後日へ向けたままだった。

 「──私、」

 開きかけた唇は何度か小さく震えた。ふっと目を伏せた表情は、いままで見たことのないものだった。血の気のない頬を日差しが滑り落ちていった。
 綺麗、そんな感想を人間なんて生物に抱いたのはあれがはじめてで、きっと最後だった。

 「私、……」
 「いいじゃない、別に。急がなくたって」

 だけど、私の人形以外に綺麗なものの取り扱い方なんてわからなくて、私はあのとき途方に暮れたのだ。

 「なりたいならなればいい。迷ってるならまだ迷う時間はあるでしょう?人間なんてすぐ死ぬものだけど、それでも、まだ」

 微かにでも揺らせば零れそうな中身を、いつもの魔理沙で覆い隠してほしかった。
 触れることに怯えて、それでも触れたいだなんて、そんなふうに思うようになりたくなかった。
 だってそんなの、まるで恋のようだ。

 「……、……そう、だよな」

 魔理沙は笑った。いつもどおりに。私の心臓が甘く痛んだ。
 昔の話だ。
 なにもかも。
 魔法使いにならない彼女は、人間のままの彼女は、恋の魔法は、少女がおとなになるにつれて衰えていく他ないのに。
 人間のまま隣にいてくれるなんて予測は、あまりにも拙くて甘かった。
 昔の話だ。おとなの彼女が人里へ帰ってもう何年と経つ。
 職業魔法使いのあの子はもう、この家に来ることはない。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:あどそ ジャンル:東方Project お題:昨日の内側 制限時間:30分 読者:45 人 文字数:2249字 お気に入り:0人
昨日内側外側なんの内と外なんだ?三途の川・・・とか?境界があるもの。内訳。外側の人から見て。なんの?昨日の話になってくる。伝聞?語り口調か?「昨日は”内側”はど 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:苔地蔵 ジャンル:東方Project お題:疲れた宴 制限時間:30分 読者:185 人 文字数:1025字 お気に入り:0人
「はあ…なんであいつら好き放題やって片付けやら何やらは全部私一人にやらせるのかしら」私、博麗霊夢は辟易していた月に一回、何故か博麗神社で人妖問わずの大宴会が行わ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:かぼちゃ ジャンル:東方Project お題:計算ずくめの天才 制限時間:30分 読者:157 人 文字数:1287字 お気に入り:0人
夏の匂いというべきなのだろうか、それとも、東京の匂いなのだろうか? それか、私にしか感じられない匂いなのだろうか?さあ? 少なくとも、京都に住むみんなにはわかっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:苔地蔵 ジャンル:東方Project お題:弱いギャグ 制限時間:30分 読者:195 人 文字数:397字 お気に入り:0人
「文さ〜ん!また早苗がいじめるんですよー!」椛が私の家の扉を開けて泣きついてくる「もう、仕方ないですねえ椛は…はい、刀と盾です。これ持って頑張ってきて下さい」ボ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
霊夢と早苗 ※未完
作者:苔地蔵 ジャンル:東方Project お題:綺麗な怒り 制限時間:30分 読者:196 人 文字数:185字 お気に入り:0人
「何か、言う事は?」お祓い棒を携えた霊夢さんが歩いてくる「妖怪退治は…必要な事なんです」まだズキズキと痛む身体を無理やり起こして答える「この状況を見てもまだ必要 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:苔地蔵 ジャンル:東方Project お題:幸福な失踪 制限時間:30分 読者:225 人 文字数:738字 お気に入り:0人
「ねえ妖夢。満開になった西行妖は綺麗ね」それだけ言い残して、私の主人は…幽々子様は消えてしまった。西行妖を見ながら、嬉しさの中にひとかけらの寂しさを交えた笑顔で 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:かぼちゃ ジャンル:東方Project お題:狡猾な警察官 制限時間:30分 読者:307 人 文字数:1574字 お気に入り:0人
響子は激怒した。イルでドープなリリシストを目指していたのだ。ギャングスターでFxxk Tha Policeの精神だったのだ。「いや……仕事もないし犯罪もないし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:どんだけー ジャンル:東方Project お題:破天荒なヒーロー 制限時間:30分 読者:199 人 文字数:660字 お気に入り:0人
東風谷早苗は暇を持て余していた。 朝から二神はどこかへ出かけ、守矢神社に一人きりでお留守番状態だったのだ。夕方からは用事があるからそれまで神社にいてねとのこと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:かぼちゃ ジャンル:東方Project お題:せつない猫 制限時間:30分 読者:381 人 文字数:1972字 お気に入り:0人
恨みがましい気分を抱いたのは確かだった。だが、それよりも寂しいと思う気分の方が強かった。 雨は強かった。雨自体は、さほど気にならない。全く気にならないわけでは 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:沈船4 ジャンル:東方Project お題:ゆるふわな小説新人賞 制限時間:30分 読者:345 人 文字数:914字 お気に入り:0人
「ねえ小鈴、何を読んでるの?」 いつも通りに鈴奈庵を訪れた阿求は、真剣な表情で本を読む小鈴に声をかけた。 声に反応した小鈴は、阿求の姿を確認すると、さっとしおり 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル: お題:意外!それは沈黙 制限時間:30分 読者:1 人 文字数:1474字 お気に入り:0人
意外!それは沈黙雲雀×夢ヒロインテーブルの上には今朝郵便受けに入れられていた手紙が並べられている。私はその中で、一際可愛らしい装飾がなされたハガキを手にとって、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:文豪ストレイドッグス お題:小説の魔法使い 制限時間:30分 読者:2 人 文字数:1117字 お気に入り:0人
青ざめた指先の向こう。あまりにも頼りなく薄い刃物。今にも折れそうな不銹鋼だが、僅かに引くだけで的確に肉を削ぐ。寸分の狂いもない腕前。苦痛に喘いでいた大男から鉛玉 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:バンドリ!ガールズバンドパーティ!ー お題:鳥の雨 制限時間:30分 読者:4 人 文字数:1424字 お気に入り:0人
雨がちな日に生まれたんだなあって思ってた。私は、子供の頃から、あの《キラキラドキドキ》を見つけた日から、星空を見るのが大好きで。大好きなお友達。お父さん。お母さ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:呪術廻戦 お題:ちっちゃな大地 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:428字 お気に入り:0人
眼下の光景は、何もかもがミニチュアで出来たおもちゃの街のようで、ビルや人に埋め尽くされて地面なんて米粒くらいの大きさだ。そんな巨人の視点は、地面を這う人間たち 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:文豪ストレイドッグス お題:許されざる猫 制限時間:1時間 読者:7 人 文字数:2537字 お気に入り:0人
もしも私が本当の人間だったら、貴方の歯止めとなるのだろうか。私は私であって、私でない。存在しているというのは間違いなく、姿かたちがいわゆる人間であることも間違い 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:文豪ストレイドッグス お題:穢された交わり 必須要素:浦島太郎のストーリーを自分流にアレンジ 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:660字 お気に入り:0人
たもし、時から逃げられる玉手箱を手に入れられるのなら、哀れな亀さえ助けただろうか。まだ若い時分、世の中には嫌になるくらいの悪意と不条理に包まれていた。戦が終わっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:Fate/Grand Order お題:意外!それは汁 制限時間:30分 読者:33 人 文字数:1360字 お気に入り:0人
足の指は五本ある。両足を合わせると十本ある。いち、に、さん、しい、ご。指を折って数える。「ちょっと、部屋あったまらないから送風口あけて」 セーター伸びちゃうで 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:Free! お題:輝く寒空 必須要素: 制限時間:1時間 読者:8 人 文字数:775字 お気に入り:0人
寒い、寒いと連呼したところでこの手がかじかむほどの寒さをどうにかできるわけもない。 だけれど、意味もなく、やっぱり「さみぃ…」と言ってしまうのだ。「凛。」ん? 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:おそ松さん【腐向け】 お題:黒尽くめの転職 必須要素:駄菓子 制限時間:30分 読者:12 人 文字数:997字 お気に入り:0人
暗闇と光は正反対だけれど、どちらかがなければどちらも存在できない、2つで1つのようなもの。俺達も、光と闇のようなものなのだ。たぶん、人間の大半は光を好むのだろう 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:黒子のバスケ お題:ぐふふ、帰り道 制限時間:30分 読者:15 人 文字数:1171字 お気に入り:0人
ぐふふ 何処かから聞こえた声に肩が跳ねた。 すっかり暗くなった帰り道。薄情な幼馴染はとっとと先に帰ってしまい、他の部活仲間も共にいない。 まだ夜と言える時間で 〈続きを読む〉